からくりローゼン
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1181998751/
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1182047398/
http://wwwww.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1182168126/
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 21:59:11.34 ID:qGkKknxy0
- 雑誌とかでよく見るタイプ別診断てあるだろ。
「あなたはハナをほじりますか?」
【YES よくほじるです。】
【NO 一度も無いのだわ。】
そこで僕、桜田ジュンから質問だ。
心当たりの無い手紙が届いて そこに…
【まきますか】 【まきませんか】
…ってあったら あなたならどうする?
→【まきます】
→【まきません】
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 21:59:47.92 ID:1ifBLvcC0
- まきませんのだわ
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:00:09.07 ID:GVycvvex0
- →【まかれます】
- 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:06:35.28 ID:qGkKknxy0
- ただ あなたはその時、それどころじゃなかった。
『開幕ベルは華やかに』
僕は病気だ。発作は突然来る。
吐き気と目眩がする。そして吐く。
胃の中が空になっても胃液を、反吐を吐き続ける。
薬では止められない。
………
ジュン「オロロロロロロロロロ!! オロロロロロロロロ!!」
パパ「息子は 息子は大丈夫なんですか!? 先生!!」
医者「息子さんの病気は、嘔吐から体力低下を伴い、
死に至る病気で、もっとも稀有な症例を持つものです。
嘔吐で喋ることもままならないことから
声無(コエム)病と言われています。」
ママ「死… そ、そんな!!」
パパ「な、治す方法はないんですか!?」 - 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:09:57.27 ID:GNF6fvS6O
- やっぱりからくりサーカススレかwwwww
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:14:15.80 ID:qGkKknxy0
- 医者「残念ながら完全な治療法は見つかっておりません。
ですが…この病気は心的要因に依存しています。
対処法として今分かっているのは
吐瀉物にまみれて消えかけている
息子さんの自尊心を保たせること
―――すなわち…「褒める」と言うことです。
不幸中の幸いにしてお宅の息子さんは
亜・声無病と言われる初期症状でして
褒める人がそばにいる限り、命に別状はありません。
発作さえ出なければ、
(通学は無理でしょうが)日常生活には支障は出ません。」
………
こうして僕は人から褒められないと
ゲロが止まらなくなる発作を抱え込むようになった。
家に引き篭もり、両親と姉から気持ち悪いほどに褒められる暮らし。
しかし、それどころじゃないと言ったのは、この病気のことじゃない。 - 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:22:55.41 ID:qGkKknxy0
- ノリ「ジュン君… パパと…ママが死んだって。」
ある日、姉のノリがいつも以上に呆けた顔でそう言った。
ジュン「…え?」
ノリが訃報の電話を取ったのは
その日両親が家を出て2時間も経たない内だった。
ドイツにこの病気を治せるお医者さんがいるらしいので探してくる。
そう言って二人は空港へと車を走らせていたはずだった。
高速の交通事故で即死。
タンクローリーが何か「人形みたいなもの」を
タイヤに巻き込んでハンドルを取られたらしく
対向車線に突っ込み、僕の両親の車と正面衝突した。
タンクローリーは液化天然ガスを積んでいたので爆発、炎上。大事故だ。
向こうの運転手も、僕の両親も…消し炭になったそうだ。 - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:30:01.06 ID:qGkKknxy0
- そして葬式も終わり、1週間ほど過ぎた時にその手紙はやってきた。
【まきますか】 【まきませんか】
ノリに聞いても心当たりはないという…
ノリはずっと自分の部屋で泣いている。
僕も本当は泣きたい。
だが、なぜか親が死んだと聞いたときから涙が一滴も出ない。
コエム病の発作で苦しむ僕を、必死に褒める両親、姉。
だが、その眼には疲れと呆れが同居していたことに僕は気づいていた。
それもそうだろう。
父親は貿易関係に勤める、いわゆるエリートだが
長男の僕は優等生ではなかった。
親とは言え、褒めるところを探しあぐねているのではないか?
そう考え始めていた矢先の両親の死、そしてこの手紙だった。 - 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:38:02.50 ID:qGkKknxy0
- 真紅「人間、誓いなさい。この真紅のマスターになると。
でなければ、あなたはここで死ぬわ。」
………
僕は【まきます】に○をつけた。
ふと目を離した隙に手紙は消え、かわりに大きな鞄が僕の部屋に出現した。
中に入っていたのは、赤いドレスの高さ80cmほどの女の子の人形。
―――タンクローリーが人形のようなものを巻き込んで―――
とっさに事故を思い出し背筋が凍った。
だが僕はその人形の螺子を見つけると
好奇心に負け巻いてしまった。
人形は一瞬光を放つと動き出し
僕が巻かなければ良かったと後悔する暇も与えず
矢継ぎ早に喋りだした。
真紅「私はローゼンメイデン第5ドール真紅。人間…名前は?」
ジュン「ジュン… 桜田ジュン。」
真紅「そう。美しくない名ね。」
ジュン「な…」 - 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:46:02.57 ID:qGkKknxy0
- 真紅「ジュン、貴方はこれより私のマスターとなる。
さあ その左手の指輪にキスをしなさい。」
ジュン「指… なっ何コレ! いつの間に!? 抜けない?」
真紅「無理に抜くと肉が削げるわよ。」
僕が指輪と格闘していると
真紅と名乗った人形は突然動きを止めた。
ゼンマイが切れたわけじゃない。何かに気づいたようだ。
真紅「もう来たのね。」
ガシャンとダイアーさんのように僕の部屋の窓が割れ、
新たな人形が僕と真紅の前に立ちはだかる。∩___∩
| ノ ヽ
/ ● ● | かかったなアホが!!
| ( _●_) ミ
彡、 |∪| 、`\
/ __ ヽノ /´> )
(___) / (_/
| /
| /\ \
| / ) )
∪ ( \
\_)
人形というか、クマのぬいぐるみだった。 - 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:52:57.42 ID:Gap8O4X+0
- クマかよwwwwwwwwwwwww
- 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:53:29.42 ID:qGkKknxy0
- ジュン「な 何? なんっ…」
クマー「ベアクロー!!」
切られた。
ジュン「ギャアアアアアアアアア!」
真紅「大袈裟ね 服が切れただけで。」
ジュン「アアアアッ!! アッー! ウォエ!! オオオオロロロロロロロ!!」
しまった、興奮しすぎた。発作だ。
ジュン「オロロロロロロ!! ウォロロロロロ!!」
真紅「…コエム病ね。」
知っているのか真紅 なら…早く僕を…
真紅「残念だけど、このままじゃ褒めることはできないわ。
私の言ったことを聞いてくれないと。」 - 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 22:59:09.72 ID:qGkKknxy0
- 僕は指輪にキスをした。
真紅「いい子ね ジュン。」
その言葉を聞いたとたん、発作は止まった。
不思議なことに、今まで親にも姉にも言われ続けたどんな褒め言葉よりも
その人形の言葉は僕の発作を柔らかく、おさめてくれた。
ジュン「ハー… 助かった(人形に言われても効果あるんだ…)。」
真紅「それじゃ、少し下がってて頂戴。この子を片付けるわ。」
真紅が手をかざすと、どこからともなく薔薇の花弁が舞い上がり
クマーをバラバラに切り刻んでしまった。 - 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:05:05.30 ID:qGkKknxy0
- メメタァと再び窓ガラスの割れる音がした。
僕の部屋じゃない。ノリの部屋の方だ。
ジュン「姉ちゃん!?」
まさかノリの部屋にも?急いで音のした姉の部屋に向かう。
真紅「ちょっとジュン! 私を置いてくつもり?」
真紅が後ろで叫んだが、かまっている暇はない。
姉の部屋の扉を開けると、そこには信じがたい光景があった。
真紅「全く、今度からは私を抱っこして移動すること。いいわね。
それにあなたのお姉さん、ノリは大丈夫よ。彼女のところにもローゼン…」
ジュン「どこが…大丈夫だって?」
部屋はもぬけの殻。窓ガラスが飛び散り、カーテンが風に揺れている。
真紅「そんな…!?」
ジュン「姉ちゃん… 姉ちゃん…」
ベッドの上にキャッツカードが置かれていた。
【………桜田ジュン様へ。
お姉様は一足先に薔薇屋敷に向かわれました。
あなたも早く来てくれることを願っています。………】
真紅「ノリが連れ去られてしまった… どうして? 翠星石は一体どこ…」 - 24 :ザザンのドリヴィア:2007/06/16(土) 23:06:30.02 ID:WibkCFop0
- ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー
- 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:11:39.40 ID:qGkKknxy0
- その人と初めて会ったのは、両親の葬式の時。
僕の両親はどちらも天涯孤独で、親戚はいないはずだった。
父の遠い親戚だと名乗るその人を除いて。
槐「初めまして、僕は槐。」
ノリ&ジュン「は…初めまして。」
槐「挨拶はいい。ジュン君、動かないで。」
ジュン「?」
そういうと槐さんは僕を値踏みするかのようにじろじろと見つめて来た。
槐「…合格。ただ髪はもう少し短めのほうがいい。」
ジュン「は…はあ…」
ノリ「あ…あの…」
槐「ああ、大変だったね。二人とも。でも、もう心配しなくていい。
二人は僕の養子になることが決まった。」 - 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:18:15.28 ID:qGkKknxy0
- ………
夜の寝台特急。コンパートメント席で僕は真紅とお茶をしていた。
真紅「不味い紅茶ね。」
ジュン「しょうがないだろ。備え付けの物しかないんだし。
折角淹れてやったのに、文句言うなら飲むなよ。」
真紅「あら、(あなたは私のマスターだけれども) 私の言うことを聞いて
褒めておいてもらわないと、そのうち大変なことになるのではなくて?」
ジュン「…く。」
真紅「ま、今はそんなことはどうでもいいわ。で、薔薇屋敷ってのは、
その槐(エンジュ)という男が住むところなのね。」
ジュン「ああ、家を整理したらすぐにでもそこへ移り住む予定だったんだ。
けど、気乗りしないんで
なんだかんだと理由をつけては引き伸ばしに…
少し、嫌な感じのする人だとは思っていたけど
あのクマがあいつの仕業なら、もしかしたら…親父とお袋を…」
真紅「…」
ジュン「僕の方の説明はこれで終わり。次はそっちの番。」 - 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:27:05.07 ID:qGkKknxy0
- 真紅「分かったわ。どこから話そうかしら… そうね…
最初に名乗った通り、私はローゼンメイデン第5ドール真紅…」
ジュン「そこだ。まず、そこから意味が分からない。ローゼンメイデンて何だ?
第5ドールってことは他にも仲間がいるのか?」
真紅「ローゼンメイデンとは意思を持つ人形。全部で………7体いるわ。
みんなお父様に作られた。私はそのうちの5番目というわけ。」
ジュン「お父様って誰だ?」
真紅「お父様はお父様よ。ただ、人間たちにはローゼンと呼ばれているわ。」
ジュン「ふぅん、それでローゼンメイデンか。
それじゃどうして、その真紅が僕のところへ来たんだ。」 - 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:33:01.21 ID:qGkKknxy0
- 真紅「お父様の言いつけなの、あなたを守りなさいと。
いつもは鞄の中で眠ったりしている私だけれども
時々、お父様からの手紙が来るの。
私の場合、それはいつも決まって子供を守ること。」
ジュン「今までも戦ったことがあるのか?」
真紅「今回みたいに実際に敵が現れたのは初めてよ。
今までは、しばらくマスターの傍にいれば
お父様から『終了』との手紙がきたわ。」
ジュン「なんでローゼンはそんなことするんだ?」
真紅「知らないわ。」
ジュン「知らないって… 気にならないのかよ!?」
真紅「ならないわね。私達は… 私はそういう風に造られたのだもの。でも…」
ジュン「でも?」 - 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:39:07.81 ID:qGkKknxy0
- 真紅「第3ドールの翠星石は来なかった。
彼女にも、お役目の手紙は届いたはず。
彼女の仕事はあなたの姉、ノリを守ること。
お父様の命令は絶対……なのに。」
ジュン「命令ね…
理由も知らず、ただ親の命令に従うか。なんか悲しいな。」
真紅「悲しい?私達が?」
ジュン「そうだよ。でも操り人形のお前には分からないか。」
さっきから高飛車な態度をとり続けるこの人形を
少しへこませてやろうかと僕が意地悪に言うと
真紅はムッとした様子で言い返した。
真紅「それぐらい分かるわよ。言ったでしょ。
私はローゼンメイデン、意思を持つ人形。
人間の感情はすべて持たされているのだわ。
私達は…… 私は自分達をかわいそうだとは思わない。
ただ、できないことも確かにあるけど…」
ジュン「できないこと?」 - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:43:33.26 ID:qGkKknxy0
- 真紅「……あら、もうこんな時間?
眠りの時間よ、ジュン。明日は早いのでしょう?
あなたには英気を養ってもらわないと…
汽車を降りたら私はあなたに(鞄で)運んでもらわないといけないのだわ。」
ジュン「え?あ、ああ…この列車が朝イチで駅に着いたら
薔薇屋敷までは少し歩く。
それよりできないことって…?」
真紅「それじゃあ、おやすみなさい。ジュン。」
僕の質問には答えずに
真紅はさっさと鞄に潜り込み、閉めてしまった。
ジュン「……おやすみ。真紅。」 - 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:49:36.46 ID:qGkKknxy0
- ノリ「素敵な庭園迷路(メイズ)ですね、薔薇がたくさん咲いていて。」
槐「君が望むなら、ここは好きにしてもらってかまわない。」
ノリ「本当ですか、ジュン君にも早く見せてあげたいわ。」
槐「彼もすぐ戻って来るよ。寂しい思いをさせてすまない。」
ノリ「いいえ、ジュン君が言い出したことなんでしょ?
もう少しだけあの家にいたい、パパとママのことを一人で考えたいって。」
槐「やはり止めるべきだった。コエム病の人間を一人にするなど。」
ノリ「泣くところを見られたくないのじゃないかしら。
あの子、お葬式の時もずっと泣かなかった。
私が泣いてばかりだったから我慢していたのかもしれない。」
二人が庭園迷路の出口を抜けると
紫色のドレス、水晶の髪留め、左目に眼帯の人形が
生垣の薔薇の手入れをしていた。
槐「おはよう薔薇水晶。今日もありがとう。」
ノリ「おはよう薔薇水晶ちゃん。」 - 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:56:05.04 ID:qGkKknxy0
- 薔薇水晶「おはようございます… お父様 ノリさん。」
槐「ちょうどいい、ノリさんに薔薇の手入れを教えてあげてくれないか。」
薔薇水晶「…分かりました。」
ノリ「ありがとう、薔薇水晶ちゃん。それじゃあ、お願いね。」
薔薇水晶「では…こちらへ…」
一人と一体は薔薇の庭の奥へと進んでいく。
彼女達の姿が見えなくなった時、
槐は何かを確かめるかのようにつぶやいた。
槐「薔薇の手入れに夢中にさせておけば余計なことを思い出すこともあるまい。」
………
薔薇水晶「こちらの花壇の薔薇へは… この如雨露で水をやります。
幼い薔薇ですので、あまりやりすぎないように…」
ノリ「そう、分かったわ。ありがとう、この如雨露で… 如雨露?」
薔薇水晶「なにか…?」
ノリ「な、なんでもないわ。(どうしたのかしら如雨露が…
とても気になる、何か大切なことを忘れている気がする…)」 - 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/16(土) 23:59:52.53 ID:qGkKknxy0
- 薔薇屋敷へはすんなりと侵入できた。
あのクマーのようなやつらが大量に警護しているとばかり思っていたが
庭にも…屋敷の中にも人の気配は感じられない。
ジュン「姉ちゃん!!どこにいるの!!返事をしてよ!ねえ!!」
真紅「ジュン…あそこ…」
真紅の指差した廊下の先に人影が見えた。
ジュン「姉ちゃん!? そこにいるの!?」
真紅「ちょっと、急ぐ時は私を抱えなさいと…!!」
人影に駆け寄る。だが近づくにつれて気が付いた。人間にしては小さすぎる。
真紅と同じぐらいの大きさ…人形だ。 - 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:01:31.51 ID:FahYCZ1X0
- 真紅「あなたは…!?」
ジュン「知っているのか? 真紅!」
真紅「翠星石!やっぱりあなたもここへ来ていたのね!?」
翠星石、ローゼンメイデン第3ドール。
緑色のドレス。地に届きそうな豊かな2つのカールの髪の人形は
瞬きひとつせずにこちらを見据えていた。
そのお陰で彼女の瞳が、右が赤、左が緑の
オッドアイであることが一目で見てとれた。
翠星石「真紅…」
真紅「翠星石?」 - 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:05:45.51 ID:FahYCZ1X0
- 翠星石「まだ分からないですか?真紅?」
真紅&ジュン「!?」
翠星石が手のひらを上へとかざす。
すると中空から光とともに金の装飾が施された如雨露が現れた。
真紅「庭師の如雨露…
それを出したということは本気のようね。
あなた…まさかお父様の命令に背くつもり?」
翠星石「それはどだい無理な話ですぅ。お父様は絶対。
それがローゼンメイデンにとっての黄金律。」
如雨露から勢いよくレーザーのように水が噴射される。
真紅はそれをひらりとかわしながらも問答を続ける。
真紅「なら何故!?」
翠星石「真紅にしては頭の回転が遅いですね。
翠星石は今も忠実にお父様に従っているですよ。
桜田ノリを賊から守るという命令を。」
真紅「そんな馬鹿な!」 - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:10:56.03 ID:FahYCZ1X0
- 真紅が薔薇の花弁で攻撃を仕掛ける。
だがクマーの時よりもその花の数は少ない、あくまで牽制だ。
翠星石「少し考えれば分かることです。ノリも、そこの人間も槐とやらの養子。
親無き子をそのままにしておくより
この大きなお屋敷で何不自由なく生活させるほうが幸せってやつです。」
真紅「本当にそれはあなたの考え?
あなたは槐という人間を信用できるというの?」
翠星石「…槐は人形師ですよ。人形師に悪い人間はいないです。」
真紅「槐は人形にジュンを、人を襲わせたのよ!」
翠星石「目的のためなら手段は選んでいられないです。
最初から真紅がこの考えに至っていれば
クマーも無駄死にせずにすんだはずですぅ。」 - 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:15:39.31 ID:FahYCZ1X0
- ジュン「嘘だっ! 親父やお袋の死にも人形がかかわっている可能性があるんだぞ!
それなのに遠い親戚の人形師の養子になれだぁ?
どう考えてもおかしいだろ!!」
翠星石「人間はそんなこと心配しなくてもいいです。
あの姉のようにすぐ忘れさせてやるですよ。この庭師の如雨露で。」
ジュン「あの姉のように…? ノリのことか!!」
真紅「まさかノリの記憶を…」
翠星石「そうです。お陰でノリは幸せそうですよ。早く弟が来ないか待ち侘びてるです。」
ジュン「何をしたんだ?」 - 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:19:50.25 ID:FahYCZ1X0
- 真紅「翠星石の如雨露には人に偽りの記憶を植え付ける力があるの。
でも大丈夫よ、記憶を刈り取られたわけではないから、
ジュンがノリに会えばきっと…」
ジュン「姉ちゃん…!!」
翠星石「おっと、そうはさせないためにここに翠星石がいるです。
いわゆる、ここから先へは通さねぇぜってヤツですぅ。」
真紅「そう、とりあえずノリのいる方向は
あなたの先で間違いないのね。」
翠星石「しまった…です。」
ジュン「人形のくせに迂闊なヤツだな。」 - 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:24:27.71 ID:FahYCZ1X0
- 翠星石「と、とにかくここは通さんです。
さっきから伊達に水を撒いていたわけじゃないですよ。
グリーンスネークカモ〜ンですぅ!!」
床を突き破り樹木が伸びだした。そのツルは僕と真紅を締め上げる。
真紅「くっ 大丈夫!?ジュン?」
ジュン「ああ、こんなツルぐらい…」
ブチブチとツルを切りほどく、だが切れていくのはツルだけではない。
僕の皮膚もまたツルによって切り刻まれていた。
翠星石「やめといた方がいいですよ人間。もがけばもがくほど肉に食い込むです。」
ジュン「ううう… おああっ…」
翠星石「ほらほら、血が出てるです。翠星石は知ってるですよ。
人間は血がたくさん出ると動けなくなるですよね。
なのにどうしてもがくのを止めないです?
お前の頭の中には脳ミソの代わりに堆肥でも詰まってるのですか?」 - 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:29:26.15 ID:FahYCZ1X0
- ジュン「人形のお前なんかに言っても分からないだろうけどな…
ノリは僕のお姉ちゃんだよ。泣き虫で、ボケボケで、
おまけに僕よりも背が小さい。それでも…姉ちゃんなんだ。」
真紅「ジュン…」
翠星石「…」
ジュン「パパとママもいなくなった僕にとって最後の家族だ。
その姉ちゃんがさらわれたんだ。
弟が…姉を助けに行くのに理由なんかいるかよ!!」
翠星石「!!! 弟が… 姉を…」
樹木のツルが緩んだ。 - 48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:35:07.82 ID:FahYCZ1X0
- 全力疾走なんていつ以来だろう。
最後に体育の授業を受けたのはどれぐらい前だっけ?
いや、授業でも本気で走ったことなんてあったか?
本気になるなんてかっこ悪い、そんな風に考えていたな、あの時は。
足がもつれ、受け身も取れず廊下に転ぶ。体中が痛む。起き上がる。
ツルに切られて血みどろで、呼吸も整わず涎をたらしながら僕は走る。
………
ジュン「ツルが急に緩んだ!? どうして…」
翠星石「弟… 姉… 守る… 姉妹…」
翠星石はうずくまり、さっきの僕の啖呵をぶつぶつと繰り返している。
真紅「良くやったわ。ジュン…言葉のはずみだったけど、
あなたは翠星石の最も精神的に弱い部分をついたの。
…ローゼンメイデンはみな姉妹。中でも翠星石には双子の妹がいる。
とても仲の良かった双子の妹。でも、もう何年も、何十年も会えてない。」
ジュン「何故?」
真紅「お父様がそれをお許しにならない。翠星石の双子の妹には全く別の使命がある。」
ジュン「そんな…」
真紅「さぁ、早く行ってジュン。翠星石が正気を取り戻す前に。
今は、ノリを…お姉ちゃんを助けるのでしょう?」
ジュン「…!」 - 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:41:42.12 ID:FahYCZ1X0
- ??「マスターを先に行かせるとは、殊勝なことですね。真紅。」
真紅「あなたは…誰?」
薔薇水晶「私は薔薇水晶。この薔薇屋敷でお父様と薔薇の世話をしています。」
真紅「そう。槐とやらはクマーぐらいの玩具しか作れないのかと思っていたら、
随分とよくできた紛い物をも作れるようね。」
薔薇水晶「ドレスの色同様、随分と威嚇的。プライドも高そう…
でも思い上がるのはそれぐらいにしたほうがいい。
人形はみな人間の紛い物なのだから。」
真紅「思い上がりかどうか…確かめてみたらいいじゃない。」
薔薇水晶「ええ、もちろんそのつもり。 でも…その前に…」 - 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:46:25.87 ID:FahYCZ1X0
- 薔薇水晶「翠星石… いつまでへばっているの…?
ジュンがノリの部屋に向かってます。
あなたのお父様の命令を忘れたので?
それではいつまでも双子の妹には会えませんよ?
あなたの鞄を持ってきました。コレを使って…」
翠星石「…そうです。 お父様 …使命 …守るです。」
翠星石がふらつきながらも鞄に乗りこむと、
鞄は宙に浮きジュンの走っていった方向へと飛んでいった。
真紅「薔薇水晶… あなた…!!」 - 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:51:27.25 ID:FahYCZ1X0
- ………
翠星石「ひどい姿ですね。どこのボロ雑巾かと思ったですよ?」
ジュン「翠…星石。追いつかれてしまったのか…」
翠星石「ここまでたどり着くとは思わなかったです。この扉の奥にノリは居るです。」
ジュン「!」
翠星石「だ・け・ど〜、ここまでです! …と言いたいところですが、
翠星石の質問に答えてくれるのなら
ノリに会わせてやることを考えてあげなくないこともないですぅ。」
ジュン「質問?」
翠星石「さっきの弟が姉を助けるのに理由なんか無いという言葉です。
あれは本当ですか?
人間ならお前みたいなチビでも、みんなそう思うのですか?」
ジュン「チビって…お前のほうがよっぽどチビだろ!
て言うか、そんなこと僕言ったっけ?」 - 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 00:56:33.91 ID:FahYCZ1X0
- 翠星石「キーッ!!自分の言った台詞すら覚えていないとは
どれだけプチサイズの脳ミソですか!
やっぱ堆肥が詰まってるんじゃないのですか?このチビ人間は。」
ジュン「ご、ごめん。思い出したよ。でも、当たり前のことだろ?
人間なら家族を大切に思うのは。
僕だって…いつも姉ちゃんと仲良しこよしじゃない。
両親に至っては…ただ面倒くさいから反抗しないってだけで
一応はいい子のフリをしていただけだけどさ。
でも、いなくなって、なんとなくだけど気付いたんだ。独りは…嫌だな…て。
姉ちゃんを独りにするのも、僕が独りになるのも。」
翠星石「…蒼星石もそう思ってるですかね?」
ジュン「蒼星石…っていうのか、お前の双子の妹は。
そうだな…きっと同じ気持ちじゃないかな。お前は違うのか?」
翠星石「ば…馬鹿言うなです。翠星石だって、本当は…本当は!!」 - 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:01:54.00 ID:FahYCZ1X0
- もじもじする翠星石の背後の扉が開いた。
出てきたのは会いたいと願った姉だった。
たった数日会わなかっただけなのに
あれほど見たいと願った顔だった。
翠星石「ゲ…! 騒ぎすぎたです!」
ノリ「なぁに?翠星石ちゃん、そこにいる…の…」
ジュン「姉ちゃん…」
ノリ「ジュン君!! 待ってたのよ… いえ違う… どうして待つなんて…
違うわよね。迎えに来てくれたのよね。ありがとう!ジュン君!!」
ジュン「姉ちゃん!!」
翠星石「ヤバ… 記憶が完全に戻りやがったです。
でも…ノリ、幸せそうです。
翠星石は…間違っていたですか?」 - 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:07:48.81 ID:FahYCZ1X0
- ノリ「ジュン君、ジュン君! ふえぇぇっぇぇぇ…」
ジュン君「本当、泣き虫だな」
大粒の涙をボロボロとこぼすノリ。それをしげしげと眺めていた翠星石が口を開いた。
翠星石「人間の涙ってのは枯れないもんですかね?
翠星石が初めてノリの部屋にお邪魔した時も泣いていたですよ。」
ノリ「フフ、そうね、不思議ね。私は、動くお人形さんが不思議で仕方ないけど
翠星石ちゃんからも私達は不思議に見えるのね。」
翠星石「そうです。人間は嬉しくても、悲しくても、
可笑しくても、怒っても、泣くです。不思議です。」
ジュン「なんだよ今更、ローゼンメイデンだって感情はあると真紅は言ってたぞ。」
翠星石「そりゃ、翠星石達だって喜怒哀楽はありますし、表現できるです。
でも泣く事、涙を流すことだけはできないです。」
僕はその翠星石の言葉に、少しドキリとした。
ジュン「涙が…出ない?」
翠星石「人形は老廃物なんか出ないです。」
刹那、轟音とともに床に水晶が奔り天井は抜け床が割れた。 - 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:13:55.07 ID:FahYCZ1X0
- 少し遅れて真紅の叫び声がこだまする。
真紅「ジュン!ノリ!翠星石!避けて!!」
翠星石「これは…!」
薔薇水晶「感動の再会もコレまで。 …翠星石あなたには失望しました。
真紅もろとも壊してあげる…」
翠星石「真紅、大丈夫ですか?」
真紅「想像以上に、この薔薇水晶が…強い。」
薔薇水晶「私を紛い物風情扱いしてくれましたが、所詮ローゼンメイデンこそ
マスターがいなければフル稼働できない旧式。
その肝心のマスターもズタボロ。翠星石に至ってはマスターすらいない。
完全な自動人形(オートマータ)である私のほうが性能は上…」
薔薇水晶が睨みを利かせると、再び床を水晶が奔った。
先ほどよりも、大きな亀裂が床に入る。亀裂の底には尖った水晶がびっしりと…
真紅「ああっ!!」
翠星石「わわっ!落ちるです!!」
ジュン「危ない!!」 - 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:17:03.24 ID:iJ21teZ4O
- 薔薇水晶はそんなこと言わないお(´;ω;`)
- 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:18:43.52 ID:FahYCZ1X0
- 真紅「ジュン、手を離して。このままじゃあなたも落ちるわ!」
翠星石「そうです! 離すですぅ!!」
僕は右手で真紅の右腕をつかみ、左手で翠星石の左腕をつかみ必死に支えていた。
薔薇水晶「そう…手を離しなさい。貴方にまで死なれては困る。」
真紅「私達を同時に引き上げるのは無理よ。せめて私だけでも手を離して!!」
翠星石「何言ってるですか真紅!ジュン、手を離すなら翠星石を!」
ノリと僕の間にも亀裂が空いている。
ノリにこの穴は飛び越えられそうも無い。
彼女達を助けられるのは僕だけだ。
あなたなら…どちらを助けますか。
【真紅】 【翠星石】 - 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:24:51.04 ID:FahYCZ1X0
- 翠星石「チビ人間は真紅のマスターですよ。何故早く真紅を選ばないですか!」
真紅「落ちても私なら大丈夫。ジュン!私のほうの手を離して!」
ジュン「何が大丈夫なもんか、真紅、君は薔薇水晶にやられてボロボロだ。」
翠星石「ボロボロなのはジュンの方です。それに…その傷は…翠星石が!!
なのになんで翠星石まで助けようとするですか!」
ジュン「間違いなんて誰だってするさ…
それに翠星石、君は、君は蒼星石に会うんだろ?」
翠星石「!」
真紅「ジュン…」
ジュン「う… ウェップ! グ…」
翠星石「ジュン!?」
真紅「発作が!」 - 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:29:46.57 ID:FahYCZ1X0
- ジュン「ウォロロロ(こ…こんな時に…)」
翠星石「発作?何かの病気ですか、ジュンは?」
ジュン「ギニ…ズルナ… グェップ… ウォエア(駄目だ…声が…)」
翠星石「…ジュン。翠星石の眼を見てほしいです。」
ジュン「?」
僕が翠星石の顔を見つめると
彼女は力強く左目を閉じてウィンクをした。
ジュン「ブベン!!(ごめん、翠星石!!)」
助ける→【真紅】 - 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:33:38.40 ID:FahYCZ1X0
- 翠星石「そう、それでいいんですよ。」
僕は翠星石を掴んでいた左手を離した。
亀裂の闇に落ちていく翠星石を見続けることはできなかった。
ジュン「ウォロロァ!!(大丈夫か真紅!? しん…)」
真紅の右腕を両手で掴み。力一杯引き上げた…筈だった。
引き上げられたのは真紅の右腕だけ。
穴の向こう側で薔薇水晶がアメジストの剣を片手に微笑んでいた。
ジュン「!!!」 - 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:38:43.70 ID:FahYCZ1X0
- 人生っていうものが道であったなら…
僕の道に二つの分かれ道があった………
あの時。手紙に丸をつけた時――
【まきますか】 【まきませんか】
そしてぼくは大切なものに気付き―――
【パパ】 【ママ】 【ノリ】
【真紅】 【翠星石】 【涙】
そして… 失った………
今、僕の開幕ベルが…どこかで鳴り始める………
からくりローゼン ジュンの幕 『開幕ベルは華やかに』 終わり - 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 01:45:07.37 ID:FahYCZ1X0
- / /// / //
′ /// / //
| r'/:::::\/ ィ /
| |'ヘ::::/ /
∠! へ\</´
/ \ ヾ 如何でしたでしょうか?第一幕は?
/ ヽ |!| 二兎を追うものは一兎をも得ずと言いますが
/ }ヽ 〉 さてはかくも残酷な幕切れ。
{ ̄ ̄ ‐- `′ i しかし、拾うは捨てる、捨てるは拾うもまた真なれば
ヾ- ――- 〉 先の劇にも希望はあるでしょう。
\ (__,.. ソ では今のところは観客の皆様も幕間のご休憩を。
_r― ー;.,.,. '´ 狐の巣穴にご用心。疾風のレスを釣られぬよう…
_/マ==|ヽ{、
-‐ .:::.:::.::\::\└勺! ,. ---,
//.:::.:ヽヽ:::.:::.:ヽ:::.\ ゞヽ、 / ∠二/ノ_
|l:::.:::.:::.:i i:::.:::.:::.:i l:::.:ヽ ヾヽト、 / ´ ̄ _∠二ニ'
|l:::.:::.:::.:j l:::.:::.:::.::|ヽ:::.::ヘ `i! l:::ヽ ヘヽ ,. ´
亅L. イ /.:::.:::.:::.\\:::.:Y i! l::.::| /:::.:::.:::i丿
f―::: /:::.::l:.:::.:::.:::.:::.\`:::Yi! |:V| /::.::.::.::.:/
ヾ ∠:::.:::.:::j.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.∧i!|/::ト /.::.::.:::/
| /:::.:::.:/:.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.\il!|::;ハ /::.::.//
| i:::.:::.::∧:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::レ/!:\ヽ /::/ /
| l:::.:::.∧ ヽ:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::/:::.:::.ヽ了/:/ /- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 11:32:56.31 ID:VEsNXDC00
- 『背中合わせの一線違い』
針の山の上には…二体の人形を肩に乗せて歩く僕…
落とさぬよう、転ばぬよう…ゆっくり歩く僕…
わかっている… これは、夢なんだ…
いつも僕が見る 僕の夢…
左肩の緑の人形がいつの間にか消えている。
落としたのかと振り向いた瞬間、
右肩に残っていた赤い人形がバランスを崩し、落ちる。
とっさにその右腕を掴む。だけどもう赤い人形もどこにもいない。
僕に残されたのは右腕だけ――― - 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 11:39:42.36 ID:VEsNXDC00
- ジュン「朝か…」
病室のベッドで眼を覚ます。
見知らぬ天井にももう慣れた。
ここはコエム病患者専用の病院。
よくは知らないが100年以上昔から
コエム病患者を収容し続けてきた由緒ある病院らしい。
どのような経緯であの薔薇屋敷からここへと
僕が運ばれたのかは分からない。
翠星石「ジュン?もう起きてるですかぁ?
元気な朝は翠星石のスコーンからですよ〜。」
病室の窓からこっそり…いや大胆に翠星石が忍び込む。
唯一分かっていることは、彼女が僕を助けてくれたらしいこと。 - 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 11:44:55.57 ID:VEsNXDC00
- ………
薔薇水晶「折角、真紅を選んだのに残念…
彼女はもう…ここにはいない。
あなたが捨てた翠星石と仲良く水晶に串刺し…」
ジュン「おあああおおお…」
僕は真紅の右腕だけを握り締めて叫ぶしかできなかった。
コエム病の発作もあいまって喋ることはままならない。
??「健やかにぃ伸びやかにぃ」
その時、亀裂の中から誰かの声とともに樹木が伸びて来た。
薔薇水晶「翠星石!?」
翠星石「穴の途中に翠星石の鞄が引っかかっていたですよ。
途中で鞄に取り付けたので、こうして復帰してきたです。
あれ? 真紅は?」
ジュン「おおおうぉろろが!」
翠星石は僕が握っている真紅の右腕を見て悟ったらしい。
翠星石「…! 許さないですよ薔薇水晶!!」
僕が覚えているのはここまでだ。
発作が激しくなって気を失ってしまった。
次に気がついたときは、既に病院のベッドの上だった。 - 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 11:50:16.85 ID:VEsNXDC00
- 看護士「素晴らしい才能です!」
ジュン「いいよ、今日は。発作も出ないみたいだしさ。」
看護士「その心遣い!素晴らしい才能です!では!」
朗らかにそう叫ぶと看護士は僕の病室から出て行った。
半ばマニュアル化されたこの褒め言葉を…
隣の病室でも同様に叫ぶのだろう。
医者達を責める気はない。大変なのは彼らも一緒だ。
亜・声無病の僕はまだいい。
症状が進んだ病人は体力低下、免疫不全で次々死んでいく。
その地獄のような中で彼らは人を褒め続けている。
翠星石「あのうるさい野郎はもう行ったですか?」
ベッドの下に隠れていた翠星石が小声でたずねる。
ジュン「ああ、出てきて大丈夫だよ。」
翠星石「チビ人間、本当に発作も出なくなってきてよかったですね。
ここに放り込んだときはもう駄目かと思ったですよ。」
ジュン「ありがとう。」 - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 11:57:08.66 ID:VEsNXDC00
- 翠星石「そ…それじゃあ、ちょっと今までは聞き辛かったんですけど
一度確かめておきたいことがあるんです。聞いてもいいですか?」
ジュン「いいよ。」
翠星石「あの水晶の穴の時、ジュンは翠星石の手を放したですよね?
もちろん恨んでいるわけないですよ。
鞄につかまれる自信があったから、手を離してと合図したんです。
でも、どうして翠星石の合図があんなに早く分かったですか?」
そう言って、翠星石はあの時と同じように左目を閉じてウィンクした。
ジュン「簡単だよ。今みたいに翠星石が左…緑色の方の目を閉じれば
残る赤い右目が何を伝えたいかはすぐ分かるよ。
あそこまで強く睨まれちゃ…その思いに従うしかない。」
翠星石「睨まれちゃ…て、そこは見つめられちゃと言って欲しいですねぃ。
しかし、パーフェクトな答えです。
チビ人間にしては察しがいいです。」 - 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:03:59.89 ID:VEsNXDC00
- ジュン「でも、翠星石がくれたチャンスを僕は…」
翠星石「だ、大丈夫ですよ!何回も言ったですよね?
チビ人間の指にはまだ指輪が残っているです。
それがつまり何を意味するのか…」
ジュン「指輪か… 真紅とさ、初めて契約した時、僕は発作で苦しかった。
でも真紅が『いい子ね』て褒めてくれたんだ。
あの言葉が何故か今までで一番発作に利いたんだよ。」
翠星石「…」
ジュン「それでさ…もう一度褒めてもらおうと思って
真紅の言うことは何でも聞いていたんだ。
いやらしい考えだとは思うかもしれないけど
発作に関係なく真紅に褒められたいと思った。
あんな気持ち初めてだった。
なのにそれっきり、肝心な時に何もできなかった。
悔しいし、悲しい、胸にぽっかりと穴が開いた気分なんだ。
泣きたい、でも…何故か涙が出ないんだよ。」
翠星石「ジュン!!」 - 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:11:33.74 ID:VEsNXDC00
- ??「いいじゃなぁい。涙なんか出なくたって。かわいい顔が汚れるだけよ。」
ジュン「誰だ!?」
いつの間にか病室の窓に一体の人形が佇んでいた。
黒い翼を背に生やし、黒いドレス、流れるような銀の長髪。
翠星石「水銀燈!何故ここに!ジュンの前には姿を現さない約束…!」
水銀燈「あぁら、約束を破ったのはそっちが先。
今、あなた、そこのジュン君と契約しようとしたでしょ?」
翠星石「…う。」
ジュン「約束?」
水銀燈「教えてあげるわ。あの時、薔薇屋敷で何が起きていたのかを。
何故、槐があなたをあそこまで強引な方法で捕まえようとしたのかを。
そして私達ローゼンメイデンがどうして生まれたのかを。」 - 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:18:00.98 ID:VEsNXDC00
- ………
針の山の上には…私を抱いて歩くあなた…
落とさぬよう、転ばぬよう…ゆっくり歩くあなた…
小さな私、大きなあなた。
わかっている… これは、夢…
いつも私が見る 私の夢…
突如あなたは振り返る。私ではない何かを探して。
そして私は腕の中からこぼれ落ちる。
とっさに私の右腕を掴むあなた。
私も離されないようその腕にすがりつく。
だけど、あなたの顔はもう見えない。
私の右腕だけをあなたの元に残したまま
私は落ちる。落ちる。 - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:21:58.06 ID:VEsNXDC00
- 真紅「朝ね…」
雛苺「おはようなの〜真紅。」
蒼星石「おはよう。真紅。」
真紅「おはよう、雛苺、蒼星石。」
ローゼンメイデン第4ドール蒼星石。青い男装のドール。
翠星石の双子の妹。左目が赤で右目が緑、姉とは逆のオッドアイ。
ローゼンメイデン第6ドール雛苺。ピンクのリボンのドール。
真紅たちよりも一回り小さく、見た目も幼い。
3体のドールが目指しているのは、某所の廃墟。
真紅「いよいよね。本当にそこに…」
蒼星石「間違いない。これで僕達の長い旅も終わる。」 - 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:26:52.42 ID:VEsNXDC00
- 雛苺「雛ね、このお仕事が終わったらトモエと遊ぶの。たくさん遊ぶの。」
真紅「トモエ?雛苺の今のマスターのことね。そうね。きっとたくさん遊べるわ。」
蒼星石「真紅、君もマスターに早く会いたいだろうに…」
真紅「大丈夫…ジュンは…」
新しい右腕を見つめながら真紅は言葉を続ける。
真紅「ジュンは…強い子だもの…」
雛苺「蒼星石だってマスターに… そうだ、翠星石にも会いたいよね!」
蒼星石「これが終われば会えるさ…」 - 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:34:05.41 ID:VEsNXDC00
- ………
水銀燈はオルゴールの旋律のように話し始めた―――
昔々、250年ほど前、錬金術師の兄弟がいました。
兄は名をローゼン、弟はソフォラと言いました。
百塔の町、プラハで二人は懸命に研究を続けていました。
ところがある日、二人は一人の少女に出会います。
その娘の名はアリス。
どんな花よりも気高くて、どんな宝石よりも無垢で一点の穢れも無い少女。
二人はたちまちその娘に夢中になってしまいました。
しかし、恋の時間は長くは続きません。
二人が彼女に思いを打ち明けることなく、アリスは病気で夭逝してしまいます。 - 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:39:23.51 ID:VEsNXDC00
- 兄も弟も、天が裂け地も割れんばかりに嘆き、悲しみました。
それから二人はそれぞれある分野に特化して錬金術の研究を始めます。
兄のローゼンはアリスに生き写しの人形を作り始めました。何体も何体も。
そしてアリスと…人間と同じに動かすべく
自動人形への研究へと進みました。
弟のソフォラは若くして逝ったアリスを悼み、不老不死の研究を始めます。
成果を先に挙げたのは弟よりも天賦の才に恵まれたローゼンの方でした。
と言っても、アリスが死んでから既に何十年と言う月日が経っていました。
ローザミスティカという無機物に生命を与える万能の霊薬を完成させ
アリス人形に与えたのでした。人形は完成です。そう、完璧すぎるほどに。
ローゼン『おお、アリス。私の娘、私の恋人、私の命よ。』
アリス『はい、あなた。』
この時のローゼンは満ち足りていました。 - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:42:55.27 ID:VEsNXDC00
- しかし、10年と経たないうちに
ローゼンはアリス人形に魅力を感じなくなっていました。
アリス人形は決まった時間に目覚め
決まった挨拶をローゼンにし
決まったおしゃべりでローゼンに笑いかけ
決まった曲で決まったフレーズだけ歌を歌います。
そして決まった時間に眠ります。
それがたまらなくローゼンを不快にさせ始めていたのでした。
やがてローゼンは気付いたのです。
自分はアリスの美しさに惚れていたのではなかったと
少女の持つ成長の可能性に惚れていたのだと。
その時には彼はもう、老い過ぎていました。
傍らには、アリス人形が今日も笑い、歌います。
ローゼンの若い時の記憶そのままの姿で。 - 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:49:50.08 ID:VEsNXDC00
- ローゼンはそこで思い出します。
弟のソフォラはどうしているか?
不老不死の研究はどうなったのか?
彼ならこのアリス人形を見てどう思うのだろうか?
それが気になりました。
ソフォラの家を探り当て、訪れたローゼンは驚きました。
兄弟がアリスの死によって
学問の袂を別ったあの時と変わらぬ姿で
ソフォラはそこに立っていたのです。
ソフォラもまた驚きました。醜く老いた兄に、
彼の連れてきたアリスのあの日のままの美しさに。
兄弟は再会を祝しました。
しかしそれは表面上のことだけです。
二人とも心の底では相手の成果が欲しくて欲しくて堪りませんでした。
兄のローゼンは不老不死が、
弟のソフォラは老いぬ我が身の永劫の孤独に連れ添う伴侶が。 - 16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:55:11.14 ID:VEsNXDC00
- そして二人とも
相手を殺すための算段をひそかに練ります。
ここでも先に成果を挙げたのはローゼンの方でした。
ソフォラは若さを保っていたとは言え
永久に生きられるという欺瞞から努力を怠っており
かつての才能の半分もありませんでした。
ローゼンは病気を作りました。
成長しないアリス人形への皮肉にもなり
外見だけは若く美しくも
内面は才を磨かず腐り始めていた
愚かな弟に罰を与える病気を。
それがコエム病。
才能を伸ばし、人に成長を認められ、褒められなければ
自分の中の腐れた物を吐き続け、死に至る病気。 - 17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 12:59:34.52 ID:VEsNXDC00
- ソフォラが発病したことを確認すると
ローゼンはソフォラを病院に押し込め
彼の研究記録を見ることに成功しました。
しかし、そこにあったのは残酷な事実。
不老不死の霊薬の生成には莫大な時間がかかります。
常識的に考えてローゼンの寿命の方が先に尽きてしまいます。
ソフォラが若いままの姿だったことと、その才能の衰え振りから
不老不死の薬はすぐにできるものだと勘違いしていたのでした。
実際、ソフォラが不老不死と若返りを得たのは
ローゼンとアリスが彼を訪ねる数年前のことでした。
兄弟はともに絶望の淵に立ちました。
アリスの死に遭った時よりも深い絶望の淵に。 - 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:05:00.45 ID:VEsNXDC00
- けれども、二人は諦めませんでした。
ローゼンは自分の研究室まで帰ると
自分の老いた肉体を
人形の部品と取り替えることで延命を図り
いずれ不老不死の薬を作ることを目指しました。
ソフォラも病院を抜け出し、ローゼンの研究室に向かいます。
しかし既にそこに兄の姿はありませんでした。
そこにいたのは
薬品付けにされた内臓に楽しそうに話しかけるアリス人形のみ。
それを見てソフォラはローゼンが何をしたのか全てを悟りました。
ソフォラはアリス人形を利用しようと考えました。
彼女に自分を褒めさせ続ければよいのです。
早速、彼女を改造しようとしましたが
ただでさえ兄に劣る才能を腐らせていたソフォラには上手くいきません。
そもそもローゼンの命令にのみ従うという
ブラックボックスの部分には手を出すことすらできませんでした。 - 19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:11:34.37 ID:VEsNXDC00
- ソフォラは自分で1から自動人形を作った方が早いと決断しました。
ローゼンの研究室に残された人形作りの資料は僅かでしたが
利用できそうなものは全て集めるとその場を立ち去りました。
残されたのはソフォラに半壊にされたアリス人形と、
ローザミスティカが入ってないだけで
既に完成されていた6体のアリス人形候補。
そして1体の未完成品。
ソフォラは焦っていたので完成品だと思い込んだのですが
その人形にはローゼンに従うという
ブラックボックスだけが抜けていました。
その未完成の人形はローゼンが最初に作ったアリス候補でしたが
自分の言うことのみを聞くようにする機巧が必要である、と
ローゼンはその第1ドールの製作途中に思いつきました。
そしてドールの設計を最初からやり直しました。
ブラックボックスを入れられなかったその人形を放置したまま。 - 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:16:19.96 ID:VEsNXDC00
- 半壊したアリス人形は天使の奇跡か、それとも地獄の機械の運命か、
そこで生まれて初めて自我が芽生えました。
いえ、正確に言うならば
自我はローゼンに作られたときから既にありました。
ただそれを表現する方法がインプットされていなかったのです。
それが、ソフォラがアリスを壊したことで
死にたくないとの強烈な意思が生まれ、
さらにローザミスティカによる有機的な本能が
彼女に行動をアウトプットしました。
つまり、子孫を、自分の分身を残すという生物の基本行動です。
アリスのローザミスティカは細胞のように3回分裂すると8個になりました。
それぞれ7体の人形に受け継がれ、
ここにローゼンとアリスの娘たち
ローゼンメイデンが生まれたのです。
アリス『嬉しいな、嬉しいわ。人形の私にも子供ができたのよ。
ねぇ、あなた? あなた? どこに行ったの?
可愛い娘たちの顔を見てくださいまし…』
アリス人形は娘たちとともに旅に出ました。
父親を探す長い長い旅に。 - 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:21:55.47 ID:VEsNXDC00
- 10年が経ち、100年が経った頃。
8体の人形のローザミスティカは光を失いつつありました。
寿命です。ローゼンから与えられていた動く力を
8分割してしまっていたのですから。
その時、懐中時計片手にスーツに身を包んだウサギが
8体の人形の前に現われました。
ウサギは「ラプラスの魔」と名乗りました。
ラプラスは、自分はローゼンからの使いだと言いました。
にわかには信じられない話ですが、
アリスがそのウサギから受け取った手紙の筆跡は
ローゼンのものに違いありませんでした。
それにはローゼンがこちらの現状を知り、
急いで手紙を出したことが、はじめに記されており
続いて今彼女たちが陥っている窮地を脱する手段が書かれていました。 - 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:25:30.02 ID:VEsNXDC00
- 分割されたローザミスティカには、かつての力は無い。
人間に螺子を巻いてもらい
その人と契約し力を分けてもらわなければ
いずれ動けなくなるという内容でした。
娘達は大慌てで契約主、マスターを探す準備に取り掛かりました。
ですがアリス人形はそういうわけには行きません。
彼女の半壊した体では満足に移動することもできません。
今まで7体の娘に支えられて動いてきたのです。
そこで娘達は相談しました。
マスターと契約できたものがアリス人形の元に立ち返り
ローザミスティカに溜め込んだエネルギーをアリスに分けようと。
ただ、アリスを独りにすることはできないので
末の妹がアリス人形の番をすることになりました。 - 24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:31:22.38 ID:VEsNXDC00
- 7番目の妹を残し、6体のローゼンメイデンは各地に散りました。
誰でもマスターになれるというわけではありません。
それぞれの人形たちと相性が合わないといけないのです。
マスター探しは難航しました。
遠い未開の国までマスターを探しに行ったドールもいました。
それでもなんとかマスターと契約した6体が、
かつてアリス人形と別れたところに戻ると
そこに待ち構えていたのはアリスではなく、ラプラスでした。
ラプラスによるとアリスと7番目の妹はドコへ行ったか分からないとのこと。
そして6姉妹それぞれにお父様から異なる命令が来ている事を伝えました。
真紅と翠星石には、ある少年を守ること。
以来この2体はことあるごとに
人間の子供を守るようにとの命令を受けるようになります。 - 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:37:39.70 ID:VEsNXDC00
- 残る4体にはアリス人形の捜索が命じられました。
しかし第1ドールだけは命令を聞きませんでした。
なぜなら彼女にはお父様の命令は絶対という黄金律を司る
ブラックボックスが無いからです。
第1ドールは独りでまた旅に出ます。
自分たちが何者でどこから来たのか?それを知るための旅に。
それまで彼女達はただアリス人形とお父様のことしか知りませんでした。
他の姉妹はそれを疑問には思いませんでした。
アリスとお父様だけが彼女達の動く目的と信じて疑わないのです。
第1ドールは世界中を飛び回りました。
お父様のこと、アリス人形のことを何十年もかかって調べあげ
錬金術のことを知り、そしてお父様、ローゼンには
今まで語ってきたようなソフォラという弟との確執があった事を知ったのでした。
全てを知ったときのその第1ドールの驚嘆振りはいかほどだったか。
あれほど恋焦がれたお父様が、
実に矮小な人間に思えて仕方が無いではありませんか。
けれども、この事実は他の姉妹にも知らせなければいけない。
そうしてやっとの思いで、探し当てた妹達、真紅と翠星石はこともあろうに
ソフォラ(Sophora・エンジュ・槐)と名乗る人間の屋敷にいましたとさ。 - 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:43:11.58 ID:VEsNXDC00
- ………
水銀燈「翠星石! こんなところで何をしているの!?」
薔薇水晶「新手…?」
翠星石「水銀燈!?お前こそ、どの面下げて今頃やってきたですか?
でも渡りに船です。あの紫の人形がちょっと強くて敵わんのですぅ!」
水銀燈「仕方ないわねぇ…」
………
翠星石「その後の水銀燈はすごかったです。
手当たり次第に自分の羽を燃やして飛ばして
屋敷中に火を放ったのです。」
ジュン「…」
水銀燈「しょうがないじゃない。そこのジュン君は発作でくたばりかけていたし
とにかく早くあの場所から逃げるには、あれしかなかったの。」
薔薇屋敷は半焼した。
薔薇水晶はノリを助け出すのに手一杯だったから
その隙に水銀燈と翠星石が僕をこの病院まで運んできたそうだ。 - 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:48:36.80 ID:VEsNXDC00
- ………
ジュン「ウォロ… オオロロ!」
翠星石「意識を失ってるはずなのに、発作が止まらないです。
このままじゃ、いずれゲロで窒息してしまうです!」
水銀燈「…コエム病ね。翠星石、あなた、なんか言ってこの子を褒めなさいよ。
そうすれば発作は止まるわ。そういう病気なの。」
翠星石「え、褒めろだなんて!そんなこと急に言われても
こ、心の準備ってやつがですねぇ!!」
水銀燈「何照れてんのよ、人形らしくも無い。あ、私に期待しても無駄よぉ。
今会ったばかりのこんな冴えないガキ、褒めるとこなんて見つからないわ。」
翠星石「ジュ、ジュンは冴えないことなんて無いですよ!!
そ、そうです!ジュン! あの…ノリの部屋の前で
翠星石、ジュンのことボロ雑巾だなんて言ったですけど
本当は… 少しだけ、カッコいいと思っていたですよ…」
ジュン「ロロ… ス……… ハ………」
水銀燈「発作、止まったようね。あとはコエム病の専門病院にでも放り込めば
大丈夫でしょ。さて、翠星石、話があるわ。」 - 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:52:34.60 ID:VEsNXDC00
- ………
水銀燈「そして私は今喋ったことと同じことを翠星石に話した。」
翠星石「にわかには信じられん話だったです。でも…」
………
翠星石「そんなこと信じられるかです。
大体お父様の命令も聞かないような奴の話…」
水銀燈「何よ、そんなことぐらいで。私だってお父様を愛しているわ。
だからこそ全てを調べてきたのよ!それを…!!」
ラプラス「おおっと姉妹喧嘩はそこまでですよ」
翠星石「ほあー!? ラ、ラプラス!? いつの間に!?」
水銀燈「……」
ラプラス「お久しぶりです3番目のお嬢さん。そして1番目のお嬢さん。」 - 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 13:56:30.70 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「ラプラス、何の用?」
ラプラス「私の役目は決まっています。お父様からのお手紙ですよ。
翠星石、あなたの判断は間違いだったかもしれないが
人間の幸せを考えての行動、責めは無いとのことです。
そして、これからのあなたの使命は真紅に代わり、ジュン少年を守ること。
ノリは人質の価値があるから、槐は丁重に扱うだろう、とのことです。」
翠星石「真紅!そうです!真紅は無事ですか!?」
ラプラス「勿論。彼女は私が助け出しました。
そうそう、新しい右腕もサービスで付けておきましたよ。
そして、真紅には別の命令が出されました。」
水銀燈「別の?」
ラプラス「アリス人形の居場所を2番目のお嬢さんがつきとめました。
そこで真紅には4番目、6番目のお嬢さんと合流して
アリス人形の破壊に向かってもらっています。」
水銀燈「なんですって!?」 - 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:01:05.37 ID:VEsNXDC00
- 翠星石「4番目… 蒼星石…」
ラプラス「2番目のお嬢さん、金糸雀の報告によると、
アリスと共にいるはずの7番目はどこかに消え、
そして既にアリス人形は自我が崩壊したジャンクと化していたそうです。
ここまで伝えて、金糸雀は私の前から消えました。
以降、なんとか金糸雀を探しているのですが見つかりません。
そこで、お父様が下した結論はこうです。
愛する妻を醜いジャンクのままで地に晒すよりは
元の…物言わぬ人形に還してやらないか…と。」
水銀燈「…」
ラプラス「水銀燈、一応貴女宛にも手紙がありますが…読みましょうか。」
水銀燈「けっこう。命令だなんてそんなもの私が欲しがると思って?」
ラプラス「いいえ。では私はこれで退散します。
あ、そうそう。翠星石、先ほどの水銀燈のお話は全部真実ですよ。
私が保証します。このウサギの尻尾にかけても…ね。」
翠星石「な…」 - 31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:06:30.07 ID:VEsNXDC00
- ………
ジュン「そう…だったのか…大変だったんだな」
僕はそれ以外に目の前の二体にかける言葉は見つからなかった。
水銀燈「別に慰めてもらう必要は無いわ。
それにあんたの病気の原因も元はと言えばお父様。
怒ってもいいくらいよ。」
ジュン「…」
水銀燈「ま、これからさらに話すことを聞けば
自分のほうが、より可哀相な存在だと思うはずよ。」
ジュン「?」
翠星石「やっぱり話すのですか?水銀燈?」
水銀燈「当たり前よ。じゃなきゃなんでここまで
私がわざわざ昔話したと思ってんの。
赤ん坊寝かしつけるのとはワケが違うのよ?」
翠星石「うう…」 - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:12:55.87 ID:VEsNXDC00
- ふぅと一息つくと、また水銀燈は語り始めた。
水銀燈「ソフォラ…槐は不老不死になったと言ったけどそれは発病前の話。
コエム病による体力低下、免疫不全で彼の体はもう限界。
槐にはかつてのお父様のように
自分の体を機械化する技術はまだ無い。
新しい体が必要になった。それもできるだけ彼に近い体が。
お父様と槐には人間の子供がいなかったけれども、
彼らの家系に連なる人間に子孫がいることを知ったとしたら…
もう、みなまで言う必要はないわね?」
ジュン「僕が…ローゼンの家系?」
水銀燈「人間の脳の働きというのは全て電気信号で表現できるそうよ。
転送(ダウンロード)。あなたの頭の中を槐のそれにしてしまう。」
ジュン「そんな…ことが。」 - 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:18:01.74 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「できるわ。庭師の如雨露の上位互換みたいなものよ。
庭師の如雨露はせいぜい偽りの記憶を
脳の空いた容量に植えつけるだけだけれども、
その記憶の植え付けを空いた所ではなく
もともと宿主の記憶のある容量に上書きすれば…
おそらくはお父様の研究室から得た資料で
庭師の如雨露のことを知って思いついた計画でしょうね。」
翠星石「…」
水銀燈「槐が自分の家系の子孫を狙ったのはこれが初めてではない。
百年近く前から、条件に該当する子供たちを手に入れようとしてきた。
でも、手が出せなかった。」
ジュン「どうして?」
翠星石「それは翠星石と真紅がいたからです。
水銀燈の話を聞いて、やっと分かったのです。
自分たちが何故子供を守るように命令されたのかを…」 - 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:22:06.86 ID:VEsNXDC00
- ジュン「そうか、そうだったのか…」
水銀燈「こうしてお父様と槐のイタチごっこは続いたわ。
今まではお父様の牽制、真紅や翠星石というボディガードに阻まれ
指をくわえて見ているしかなかった。だけど槐はついに動いた。
彼もついに自動人形(オートマータ)を完成させた。
作戦も練った。法的に自分がターゲットを養子にすることで
自分はターゲットの保護者だとガードのドールに誤認させようとした。
賢い真紅までは騙せなかったようだけど。」
翠星石「うう…反省しているですよ。」
そう言って、翠星石は僕のベッドに両手をつけて頭を下げた。
水銀燈「ま、お父様も最初から槐のことを教えて下されていれば
こんなことになりはしなかったのだけれども、
…言いたくはなかったのでしょうね。」 - 36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:30:59.81 ID:VEsNXDC00
- ジュン「それを、わざわざ僕にも教えてくれたのか…ありがとう…」
水銀燈「か、勘違いするんじゃないわよ。これは翠星石とした約束の一部。
彼女がこれから先、槐と戦うに当たって、あなたをマスターとするなら
一切の説明をすること。それまでは私は姿を見せず、翠星石の判断に任せる。
そういう約束をしただけなのよ!」
ジュン「なんで?僕が翠星石のマスターになると何かマズいのか?」
翠星石「今まで、ローゼンメイデン複数体と契約したマスターはいないです。
でも、ジュンにはその資格があるです。ドールにはそれが分かるです。
ですが、それは…それだけドールに命を吸われるということ…」
ジュン「命を…!?」
水銀燈「やっぱり真紅もそこまでは説明していなかったようね。
ローザミスティカは例えるなら、高性能で燃費の良いエンジンみたいなもの
だけどエンジンを動かすにはガソリンが必要。それがマスターの生命。」
翠星石「…」 - 37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:35:47.06 ID:VEsNXDC00
- ジュン「マスターがいないとお前達は死んじゃうんだろ?」
翠星石「ですけど…」
ジュン「何、遠慮してんだよ。僕をツルでズタズタにしたのは誰だよ?
それにもう真紅とも契約してるんだ。
もう一体や二体に呪われたところで、どうってことないさ。」
翠星石「ジュン…!」
水銀燈「馬鹿じゃなぁい? 折角忠告してあげたのに…」
ジュン「なんだ、やっぱり僕のことを心配してくれていたのか、水銀燈。」
水銀燈「ほ、本気で馬鹿じゃないの!?」
そう吐き捨てると、水銀燈は翼を翻して窓辺から飛び去った。
そして僕は翠星石と契約した。 - 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:40:25.00 ID:VEsNXDC00
- ………
翠星石「やっぱりここにいたですか。水銀燈。」
夜の病院の屋上。
闇から切り取られたかのように月明かりの影からシルエットが現われた。
水銀燈「…」
翠星石「その…ありがとうです。」
水銀燈「何よ…突然?」
翠星石「今日の昼のお礼です。ジュンに全部話してくれて…」
水銀燈「別に。あなたが約束を破ったから、私が勝手にしたことよ。」
翠星石「それです。翠星石は…ジュンと契約できるなら…
騙してでもいいかもと思ってしまっていたです。
馬鹿ですよね。また間違いを犯すところだったです。
でも、ジュンは水銀燈の話を聞いて全てを知っても
翠星石と契約してくれたです。ちょっと嬉しかったです。」 - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:44:59.08 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「人間を騙してまで
マスターの命を脅かしてまで生き延びる価値は私達には無い。
今回は、あの坊やを守る力が必要だから…少しお節介を焼いただけよ。」
翠星石「もう水銀燈はマスターを作るつもりはないですか?
悔しいですけど翠星石だけじゃ、あの薔薇水晶には…」
水銀燈「うるさいわね!私にはマスターなんかもういない!いらないの!!」
翠星石「やっぱり100年前の…」
水銀燈「うるさい!うるさい!うるさい!
翠星石あなた!お礼を言いに来たんじゃないの!?
それとも私に喧嘩を売りに来たの!?」
翠星石「す…すまんですぅ。それじゃ…おやすみです…」 - 40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:48:42.85 ID:VEsNXDC00
- 翠星石「はぁ…お礼を言うつもりが怒らせてしまったです。」
ジュン「あんまブツブツしゃべりながら戻ってくるなよ…
巡回の看護婦さんとかに見つかってないだろうな?
あっという間に呪いの人形の噂が立つぞ。」
翠星石「ヒ! まだ起きていたですか、ジュン。」
ジュン「ちょっと、話したいことが…いや、もう決めたことがあってさ。」
翠星石「?」
………
水銀燈「また来たの翠星石?
さっきと同じようなこと言ったら、いくら妹とはいえ…」
ジュン「僕だよ、水銀燈。」 - 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:52:28.07 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「何よ…今度はあんたぁ?何の用?ちっとも休めないじゃない。」
ジュン「疲れたのか?やっぱりマスターがいないから?」
水銀燈「ッ!?翠星石が話したのね!?」
ジュン「いや、翠星石は君のことは何も話していないよ。
今のは僕がカマをかけてみただけさ。
昼間の君の顔を見てから、ずっともしかしたら思っていた。
人形にこう言うの変かもしれないけど、
なんか顔色悪いって感じで…」
水銀燈「…!」
ジュン「君が何に負い目を感じてるかは知らない。
だからこれは僕の勝手なお願いだ。
僕と契約して、翠星石と一緒に僕を守ってくれないか?」 - 42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:56:23.65 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「………無理よ。私とあなたは相性最悪!契約の資格無し。才能ゼロ。」
ジュン「きついな。でもそこまで罵られたのって久しぶりだな。
いや、初めてかも。
この病気になってからさ…褒められてばかりだったから逆に新鮮だよ。」
???(天使さん、私、怒られたの生まれて初めて…)
水銀燈「…ぐ!?」
ジュン「どうした?」
水銀燈「な…なんでもないわよ…」
ジュン「あのさ、僕と翠星石は明日の朝…ここを抜け出す。
だから…まぁ、挨拶に来たんだ。あと翠星石が『ゴメン』ってさ。」
水銀燈「はぁ?馬鹿じゃないの!ここにいれば槐も迂闊に手を出せないし
あんたの病気も…。一体ドコへ行くって言うのよ!?」 - 43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 14:59:54.73 ID:VEsNXDC00
- ジュン「蒼星石のところ。」
水銀燈「!!?」
ジュン「翠星石を蒼星石に会わせてあげたいんだよ。
仲の良い双子なのに何十年と会ってないそうじゃないか。
彼女はローゼンの命令で僕から離れることができない。
だから僕が蒼星石のところまで行けばいいんじゃないかな…て。」
水銀燈「ちょっとぉ、今日の私の話聞いてなかったの?蒼星石は今…」
ジュン「聞いてたさ。真紅も一緒にいるんだろ?」
水銀燈「………なんでよ?」
ジュン「?」
水銀燈「なんでそこまでできるのよ?ここにいれば安全なのに、わざわざ…」 - 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 15:05:44.03 ID:VEsNXDC00
- ジュン「理由なんか無いよ。前に翠星石にも言ったんだけど
家族に会いたいって気持ちは理屈じゃないんだよな。
お前達だって100年以上お父様を探してたんじゃないか?
それに何か理由はあるのか?」
水銀燈「それは…それが私達の生きる意味だったからよ!
お父様に会うこと、お父様に私の動く姿を見ていただくこと
アリスに…お母様に、もう一度お父様に会って欲しかった!」
ジュン「じゃあ、僕が蒼星石に会いに行く理由もそれだ。
翠星石にもう一度、蒼星石に会ってもらいたい。それだけで十分じゃないか。」
水銀燈「でも、でも… アリスは! お父様が蒼星石達に…」
ジュン「…間に合うかどうか分からない
けど、できるならアリスは壊させたくない。」
水銀燈「!!」
ジュン「父親が…娘に母親を壊させるなんて間違っている。それだけは納得できない。」 - 45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 15:10:21.46 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「お父様に…刃向かうつもり?」
ジュン「君だってお父様の命令を受け付けないように出来てるんだろ?」
水銀燈「それは…私が…未完成品だから…」
ジュン「それでも君はローゼンを、父親を愛している。
昼間は矮小な人間だなんて蔑んでいたけどさ。あれは嘘だろ?
あの発言の時だけ、君の左翼がちょっと下にさがっていた。
嘘をつく時の君の癖なんだろうね。」
水銀燈「そっ…!」
ジュン「ほら… また引っ掛かった。」
水銀燈「ク… フ… フフフ… あなた、面白い子ね ウフフ…」
ジュン「笑ったね。人形なんだから…笑ったほうが綺麗だ。」
水銀燈「っ〜!!」
照れてしまったのか、水銀燈はそっぽを向いた。
だが耳はこちらに向けている。 - 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 15:14:54.58 ID:VEsNXDC00
- ジュン「親にさ…反抗するのも愛情の1つじゃないかな。
僕が今更こんなことを考えるのも変だけどさ。
今まで僕は親に逆らったことが無かった。
でもそれは愛情があったからじゃない。
めんどくさかっただけさ。
そして今、後悔している。
何であの人達ともっと本気でぶつからなかったのか…てね。
だから両親が死んだというのに僕は涙を一滴も流せない。
真紅をあの時助けられなかったというのに、涙が出ないのも同じだ。
褒められなくなるのが怖くて、本当の気持ちを言えてなかった。」
水銀燈「…」
水銀燈はまだそっぽを向いている。
ジュン「僕と翠星石は本気でぶつかってくるよ。お父様に。
それだけは伝えたかった。長話でごめんね、それじゃ…」
そう言って、僕は水銀燈に背を向け、屋上の扉に向かった。
言いたいことは全て言った。
言葉にすることで僕自身の心の中での決意も固まった。 - 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 15:20:35.30 ID:VEsNXDC00
- ジュン「あ、1つ言い忘れてたことがあった。」
屋上の扉に手をかけたまま、振り向かずに僕は喋った。
水銀燈「…?」
ジュン「さっき相性最悪で僕と契約は無理だって言った時さ…
水銀燈の左翼…下がってたよ。」
水銀燈「ば、馬鹿じゃなぁい!!もうその手には引っ掛からないわよぉ!」
ジュン「そういうことにしておくよ。おやすみ。」
振り向いて確かめる必要は無かった。
からくりローゼン ローゼンの幕 『背中合わせの一線違い』 終わり - 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 15:27:05.54 ID:VEsNXDC00
- / /// / //
′ /// / //
| r'/:::::\/ ィ /
| |'ヘ::::/ /
∠! へ\</´ これにて第2幕は閉幕とあいなります。
/ \ ヾ 親の心子知らず、子の心親知らず。
/ ヽ |!| 兄弟で憎しみあう者あれば、姉妹で慈しみあう物あり。
/ }ヽ 〉 一方、囚われの姉の弟が下した決断は
{ ̄ ̄ ‐- `′ i 海をも割くモーゼの奇跡となり得るか
ヾ- ――- 〉 それとも潮のごとく引いては返す涙に果てる運命か。
\ (__,.. ソ さて今のところは観客の皆様も幕間のご休憩を。
_r― ー;.,.,. '´ 狐の巣穴にご用心。疾風のレスを釣られぬよう…
_/マ==|ヽ{、
-‐ .:::.:::.::\::\└勺! ,. ---,
//.:::.:ヽヽ:::.:::.:ヽ:::.\ ゞヽ、 / ∠二/ノ_
|l:::.:::.:::.:i i:::.:::.:::.:i l:::.:ヽ ヾヽト、 / ´ ̄ _∠二ニ'
|l:::.:::.:::.:j l:::.:::.:::.::|ヽ:::.::ヘ `i! l:::ヽ ヘヽ ,. ´
亅L. イ /.:::.:::.:::.\\:::.:Y i! l::.::| /:::.:::.:::i丿
f―::: /:::.::l:.:::.:::.:::.:::.\`:::Yi! |:V| /::.::.::.::.:/
ヾ ∠:::.:::.:::j.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.∧i!|/::ト /.::.::.:::/
| /:::.:::.:/:.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.\il!|::;ハ /::.::.//
| i:::.:::.::∧:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::レ/!:\ヽ /::/ /
| l:::.:::.∧ ヽ:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::/:::.:::.ヽ了/:/ /
- 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:01:06.95 ID:VEsNXDC00
- 『私のお墓の前で泣かないで下さい』
廃墟の中からバイオリンの音色がする。
蒼星石「これは…」
雛苺「うゅ?ショパンなの〜」
真紅「モーツァルトよ。モーツァルトのレクイエム。」
蒼星石「やっぱり、金糸雀は…」
真紅「金糸雀に与えられていた、お父様の命令はアリスの確保。
きっと、(翠星石のように)命令を自己解釈して
私達の邪魔をするはずよ。」
雛苺「カナと戦うのは嫌っ…!アリスを壊すのも…」
蒼星石「雛苺、それ以上先を言ってはいけない。
僕達はローゼンメイデン。
お父様を否定しては生きてゆけない。」 - 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:09:06.26 ID:VEsNXDC00
- 雛苺「じゃあ、真紅と蒼星石は嫌じゃないの!?」
真紅&蒼星石「…」
真紅「雛苺…?あなた言ってたわよね。
このお仕事を終わらせてマスターと遊ぶんだ…て。」
雛苺「だけど。やっぱり、嫌なものは嫌なの…」
蒼星石「大丈夫、雛苺。君だけに辛い思いはさせないよ。
なんのために、ここに二人も姉がいると思っているんだい?」
雛苺「蒼星石…」 - 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:12:58.43 ID:VEsNXDC00
- ………
夜の寝台特急。コンパートメント席で僕は翠星石とお茶をしていた。
翠星石「まあまあですぅ。備え付けの紙パックでも
淹れ方次第で飲める味になるです。」
ジュン「そりゃ、どうも。真紅に鍛えられたからな。」
翠星石「ぐ…(このチビ人間は…二言目には真紅、真紅と。)」
ジュン「それより、本当にその廃墟であってるんだよな?目的地。」
翠星石「ラプラスは、そこにアリスがいると言っていたです。」
ジュン「信じるしかないか…そのウサギとやらを。」
翠星石「(むぅ…蒼星石には会いたいですけど、真紅とジュンが再会したら
翠星石に挽回のチャンスもなく、マジックが点灯するです。
どうにかして今のうちにゲーム差を縮めておくには…)」
ジュン「(いつに無く真剣な顔だな、翠星石…
蒼星石に会えるとは言っても、アリス人形やローゼンの件もある。
不安になるのは仕方が無いか。)」 - 57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:17:51.57 ID:VEsNXDC00
- 翠星石「そうだ、いいこと思いついたですぅ。お前、翠星石に本を読むです。」
ジュン「すごく…迷惑です。」
翠星石「明日には廃墟に着くというのに、蒼星石のことを思うと
なかなか眠れんです。だから夜伽をせよ!です。」
ジュン「本なんて…
あ、列車乗る前に100円ショップで僕に買わせたヤツか。
自分で読むつもりじゃなかったのかよ。」
翠星石「つべこべ言わずに読みやがれです。」
翠星石は本を僕に投げつけた。
ジュン「はいはい、それじゃ読むぞ…えーと、『7匹の子ヤギ』?」 - 58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:21:42.26 ID:VEsNXDC00
- レクイエムは止まらない。
アリスはいた。廃墟の奥の片隅に。
腕は折れ、足は砕け、胴部はがらんどう。
見るも無残な姿であったが、真紅達は動じない。
なぜなら、その姿自体は100年以上前から変わってはいないから。
彼女たちは半壊したその母とずっと一緒にいたのだから。
それ以上に娘たちの心を打ったのは彼女の声だった。
アリス「ファー…ブルスコ…ファー…ブルスコ…モルスァ…」
母の声の面影すらない、無機質な音。
更に無意味な奇声の繰り返しは娘たちの胸を突く。
かつて、あてどない旅の中で只一つの姉妹達の安らぎであった
一日の終わり、眠りの時間のアリスの子守唄はもう聴けないのだと。
真紅「お母様…いえ、アリス。お別れを言いに来たわ。」
蒼星石「許してくれとは言いません。あまりにも僕達が遅すぎた。」
雛苺「ごめんなさい…ごめんなさい…」
真紅「私達がもっと早くマスターを見つけていれば…」
蒼星石「僕達がもっと早く貴女を見つけていれば…」
雛苺「ごめんなさい…ごめんなさい…」
蒼星石が両手を開くと金の装飾の鋏が光とともに現われ、その手に収まった。
蒼星石「せめて、一瞬で…さようならお母様!!」 - 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:22:18.72 ID:Sdf86x8A0
- ちょww
- 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:25:22.81 ID:VEsNXDC00
- レクイエムは止まらない。
だが蒼星石が鋏を振りかぶった瞬間。
音楽が転調した。
???「第4曲 『奇しきラッパの響き』!」//
/ / 呼ばれて飛び出てクマー!
//⌒)∩__∩
/.| .| ノ ヽ
/ | | ● ● |
/ | 彡 ( _●_) ミ
/ | ヽ |∪| /_
// │ ヽノ \/
" ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(..ノ
なんか出てきた。 - 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:27:54.22 ID:VEsNXDC00
- ∩___∩
| ノ ヽ/⌒) あばばばばばば
/⌒) (゚) (゚) | .|
/ / ( _●_) ミ/ ∩―−、
.( ヽ |∪| / / (゚) 、_ `ヽ
\ ヽノ / / ( ● (゚) |つ
/ / | /(入__ノ ミ あばばっあびゃばびゃばば
| / 、 (_/ ノ
| /\ \ \___ ノ゙ ─ー
| / ) ) \ _
∪ ( \ \ \
\_)
ゾロゾロと廃墟の床下からクマー達が這いずり出てきた。 - 62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:28:25.70 ID:yz9Kpaf50
- ちょwwwwwww
- 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:29:25.14 ID:vtFjgj/V0
- おいwwwwwwwww
- 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:30:11.35 ID:VEsNXDC00
- 蒼星石「これは…!?」
真紅「槐の人形…! 何故ここに…」∩___∩ ∩___∩
|ノ ヽ |ノ ヽ
/ (゚) (゚) | / (゚) (゚) |
| ( _●_) ミ | ( _●_) ミ さ〜て
彡、 |∪| 、` ̄ ̄ヽ /彡、 |∪| ミ
/ __ ヽノ Y ̄) | ( (/ ヽノ_ | なんででしょ〜
(___) Y_ノ ヽ/ (___ノ
\ | | /
| /\ \ / /\ |
| / ) ) ( ( ヽ |
∪ ( \ / ) ∪
\_) (_/
気付けばおよそ30体のクマーに取り囲まれていた。 - 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:34:44.19 ID:EKKJ5vt+O
- なんだ>>1の偽物かよwwwww
と思ったら…あれ? - 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:35:54.99 ID:Sdf86x8A0
- なにこの別世界www
- 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:34:35.10 ID:VEsNXDC00
- ???「第5曲 『恐るべき御稜威の王』!」
また、曲調が変わると今度はずらりと並んだクマー達の群が割れ
紫色の人形が現われた。
薔薇水晶「さっさと運んでしまう手筈だったのに…
クマー達が無能だから…間に合わなかった。
でも、お陰でまた会えた… 真紅。」
真紅「薔薇水晶!!あなたまで!?
それにこの音楽は金糸雀のはず。
あなた金糸雀に何をしたの?
アリスに…私達のお母様に何をするつもり!」
薔薇水晶「アリスは…ローゼンに捨てられました。
ならば…私のお父様がそれを頂きます。
私のお父様なら…アリスを直せる。」
雛苺「ふえ!?本当なの!?」
真紅「嘘よ。騙されちゃダメ。こんな低級な人形しか作れない
人形師になにができるというの。アリスを弄ばないで。」
蒼星石「金糸雀をも、そういう風に騙したのか…」 - 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:39:23.01 ID:VEsNXDC00
- ジュン「お母さんヤギは言いました。
狼に騙されてはいけないよ。皆、食べられてしまうから。
大丈夫、お母さんはすぐに戻りますからね。」
翠星石「(なんだか…このお話を聞いてると、昔を思い出すです。)」
………
水銀燈「いいこと、私達はこれから
すぐにマスターを見つけて力を蓄えて戻ってくるわ。」
???「はい、黒薔薇のお姉様…」
金糸雀「だからあなたは、辛いだろうけどお母様を、
アリスを守っていて欲しいのかしら。」
翠星石「絶対に人間に見つかるじゃないですよ。人間に見つかったら
頭からムシャラムシャラと食われてしまうですぅ。」
蒼星石「ちょっと翠星石、脅かしちゃダメだよ。」
真紅「心配しないで…すぐに戻るわ。」
雛苺「あいと!あいとーなの。」
???「はい、お姉様がた。私はずっとお母様と一緒に…」
……… - 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:40:52.14 ID:pFI9fJhB0
- 千の風になったりファビったり ここまでくるの大変やったわww
- 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:44:31.95 ID:VEsNXDC00
- クマーB「真紅!お前にやられた太郎の仇!今こそ晴らしてくれる!」
クマーC「いや、次郎兄ちゃん、それだったら俺がやるよ!」
クマーD「いや、三郎兄ちゃん、じゃあ俺が!」
クマーB,C「どうぞ!どうぞ!!」
クマーD「クマー?」
真紅「…」
クマーD「ええい、もう破れかぶれクマー!!食らえ真紅!
ベアクローは1つじゃないぜ!両手にある!
100万クマー+100万クマーで200万クマー!!
いつもの2倍のジャンプが加わって 200万×2の400万クマーっ!!
そして いつもの3倍の回転を加えれば400万×3の・・・」
蒼星石「そこぉ!!」
スッパリとクマーDは庭師の鋏で両断された。
クマーB,C「りゅ…竜平ェェ!!!
ゆ、許さん!許さんぞ!虫けらども!!訴えてやる!」
薔薇水晶「(面白い…)」 - 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:45:26.71 ID:yz9Kpaf50
- 竜平wwwwwwwww
- 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:51:20.37 ID:VEsNXDC00
- 雛苺「わわわわっ!」
真紅「雛苺、慌てないで!!」
蒼星石「このクマー達は数が多いだけだ、力は大して強くない!」
クマーB「ちぃ!言いにくいことをはっきり言う!!」
その時、またレクイエムが転調し
未だ姿を見せない金糸雀の声がこだました。
金糸雀「第6曲 『思い出したまえ』!」
クマーC「やっべ、作戦を忘れかけていたぜ!」
クマーE「カナの姐さんの曲に合わせてのコンビネーション!
名づけて『瞬間、心、重ね…』」
蒼星石「迂闊なやつめ!」
スッパリとクマーEは庭師の鋏で両断された。
クマーB,C「あ、綾波ィィ!!!
よくも、よくも貴様ら!前歯全部へし折ってやる!!」
薔薇水晶「(面白い…)」 - 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 16:56:31.73 ID:VEsNXDC00
- ジュン「お母さんヤギが帰って来ると、なんと子ヤギ達は
みんな狼に食べられた後でした。いえ、ただ一匹、
末の子ヤギだけが柱時計の中に隠れて無事でした。」
………
水銀燈「なんてこと…折角マスターと契約して
みんな戻ってこれたのに
お母様は?あの子はドコ?」
翠星石「もう隠れていないでいいですから、出てくるです〜!」
母と妹を探す娘達。
しかし物陰から出てきたのは兎。
ラプラス「…残念ながら、アリスと7番目のお嬢さんは
もうここには居られませんよ。何があったのかは知りませんが
随分と以前に移動したようです。」
真紅「ラプラス!?その話…本当なの?
いい加減なことを言うと…」
ラプラス「もちろん、本当ですとも。この懐の時計にかけても…ね。」
蒼星石「…それで、三月兎が何の用だい?
まさか、そのことを教えるためだけに
わざわざここで僕達を待っていたわけじゃないんだろう?」 - 74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:03:31.84 ID:VEsNXDC00
- ラプラス「私の用は決まっています。お手紙ですよ…
あなた達にこれから、お父様からの命令を与えます。」
水銀燈「命令!?」
ラプラス「真紅と、翠星石はこの手紙に書かれている人間を守ってください。」
真紅「はい…」
翠星石「分かったです…」
ラプラス「水銀燈、金糸雀、蒼星石、雛苺はアリスと7番目を探してください。」
金&蒼&雛「はい…分かりました。」
水銀燈「ちょ、ちょっとあんた達…」
ラプラス「おや…?そうか、水銀燈、貴女はそうでしたね…」
……… - 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:10:03.16 ID:VEsNXDC00
- レクイエムは止まらない。
金糸雀「第11曲 『サンクトゥス』!」
薔薇水晶「クマー達もだらしの無い…
人形といえども所詮は獣…
私の手を煩わせるとは…」
クマーB「いやでも、ばらすぃーの姐御。あいつら強いの何の。」
クマーC「そうそう、そもそも俺ら量産型に手の負える相手じゃ…」
薔薇水晶「キュベレイは…量産型の方が強い…」
クマーF「またマニアックな。」 - 77 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:17:03.01 ID:iJ21teZ4O
- もう何がなんだかwwwwwwwww
- 76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:11:32.09 ID:VEsNXDC00
- クマー達を一蹴してきたドールズも薔薇水晶には苦戦を強いられた。
蒼星石「あの、薔薇水晶という人形だけ…飛びぬけてる。」
雛苺「うぅ〜、水銀燈と同じくらいかも。」
真紅「絶対に油断してはダメ。彼女は…強い。」
蒼星石「それより厄介なのは金糸雀のバイオリンだ…
さすがに直接僕らに攻撃してくるわけじゃないけど
こうも敵の統率がとられていると…」
真紅「私と蒼星石が薔薇水晶とクマー達を抑えるわ。
雛苺は金糸雀を探して、説得して頂戴。」
雛苺「うぃ!まかせてなの!!」 - 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:18:46.02 ID:VEsNXDC00
- 金糸雀「第12曲 『祝福されますように』!」
廃墟内での音の反響を利用し
自分が一所に留まってはいないように金糸雀は見せかけていた。
だが、雛苺はそれを苦もなく看破することができた。
雛苺「カナ〜、もうやめようよ〜。」
金糸雀「…! み、見つかってしまったのかしら。」
雛苺「金糸雀と一番かくれんぼして遊んだのは雛なの。
隠れそうなところぐらいすぐ分かるんだから。」
レクイエムは止まらない。
金糸雀「…やめるのはあなた達のほうかしら。
アリスを壊すなんて正気の沙汰じゃないわ。」
雛苺「でも…でも」
金糸雀「お父様があきらめても私はあきらめないかしら!
例え少しでも望みがあるなら、私はそれにかける!!」
雛苺「金糸雀の分からずや!アリスはもういないの。あれは抜け殻。
槐とかいう人が直せたとしても、それはもう別のアリス!
お母様じゃないの!!」
金糸雀「!! 第…13曲… 『神の子羊よ』……」 - 79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:25:03.11 ID:VEsNXDC00
- 真紅「レクイエムの音量が落ちた…」
薔薇水晶「?」
蒼星石「今だっ!」
一閃、庭師の鋏は薔薇水晶の右腕を断ち切った。
薔薇水晶「…!」
クマーB「姐御!?ここは逃げるしかありませんぜ!!」
薔薇水晶「私はまだ…戦える…」
クマーC「姐御にもしもの事があったら、俺らが旦那に殺されちまう。」
クマー達は薔薇水晶を抱えると、一目散に逃走した。 - 80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:28:43.88 ID:VEsNXDC00
- 真紅「引き際は見事ね。」
蒼星石「…真紅。それじゃ…アリスは僕がやらせてもらうよ。」
敵がいなくなったことを確認すると、
蒼星石はアリスのほうへ向きなおった。
真紅「貴女の鋏なら、お母様も苦しまないはず。
やって頂戴。見ていてあげるから。」
蒼星石「ありがとう…真紅。そしてさようなら、お母様!」
アリス「ファー…ブルスコ…ファー…ブルスコ…モルスァ!」
蒼星石「!?」
真紅「危ない!蒼星石!!」 - 81 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:33:41.34 ID:VEsNXDC00
- 真紅「危ない!蒼星石!!アリスの中に何かいる!!」
アリスはバラバラに砕け散った。中にいた何かが飛び出た衝撃で。
中にいた何かは高速で真紅と蒼星石の周りを飛び回っている。
蒼星石「い、一体何が?僕の鋏はまだアリスにも触れていなかった。」
真紅「アリスの中に…何かがいたわ。それが今…出てきた…」
薔薇水晶達が撤退したことに
まだ気付いていなかった雛苺と金糸雀もこの異変には気付いた。
雛苺「あれ?真紅達のほうの様子がおかしいの。」
金糸雀「ここからじゃよく分からないけど…
まさかアリスを…?」
飛び回っていた何かは、ゆるゆると速度を落とし
真紅と蒼星石の前に音も無く、着地した。
蒼星石「君は… 君がお母様の中にいたのか…?」
真紅「ああ…そんな…雪華綺晶!」 - 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:40:31.56 ID:VEsNXDC00
- 雪華綺晶「…! …?」
右目のぽっかりと空いたアイホールに白薔薇の人形。
アリスとともに残った筈の末の妹。
ローゼンメイデン第7ドール雪華綺晶。
真紅「雪華綺晶、あなたに…いえ、あなた達に何があったの?
どうしてアリスの…お母様の中にあなたが…」
雪華綺晶「………」
雪華綺晶は返事もせずにあたりをキョロキョロと見回すと
突然がたがたと震え始めた。そこへ雛苺と金糸雀も到着した。
雛苺「あれ?雪華綺晶がいるの。」
金糸雀「アリスを、お母様をどこへやったのかしら!
真紅、蒼星石!一体何をしたのかしら!!」
真紅「それは…私達にも分からないわ。
ただ、雪華綺晶…あなたなら分かる筈よね?」
壊れた玩具のようにその震えは止まることを知らなかったが
雪華綺晶はゆっくりと唇を開いた。
雪華綺晶「だって…だって…お姉さまがあまりにも遅いから
私は、私はお腹が空いてしまって……」
金&蒼&真&雛「!!!!」 - 83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:46:00.21 ID:VEsNXDC00
- ジュン「お母さんヤギが寝ているオオカミを見つけて
そのお腹をハサミで切ると、
食べられていた子ヤギたちが出てきました。」
………
アリス「雪華綺晶…このままでは水銀燈達が戻ってくる前に
私達はローザミスティカの力が消えて死んでしまいます。」
雪華綺晶「いえ…お姉様達はきっともうすぐ戻られます。
あと少しの辛抱です。お母様。」
アリス「聞きなさい。雪華綺晶。残り少ない力とは言え
あなたが私のローザミスティカを取り込めば
あなただけは助かることができる。」
雪華綺晶「できません、お母様。なら私のローザミスティカをお母様に。」
アリス「なりません。あなたの命はあなただけのもの。
ですが母の命は子のためのもの。
あなたは生きなければいけない。
あなたは再びこの母より生を受けるのです。」 - 84 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:51:04.87 ID:VEsNXDC00
- 雪華綺晶「私はお姉様達と、お母様を守ると約束したのです。
お母様がいなくなっては、私は!
私はお姉さま達の妹ではなくなってしまう!
私は私ではない誰かになってしまう。
私は誰に……」
アリス「あなたは私の可愛い娘、雪華綺晶。今まであなたは頑張った。
あなたは逃げださなかった。私は守られていた。
あなたは気高く咲き誇るローゼンメイデン第7ドール。
例え…お姉ちゃん達があなたを責めようとも
お母さんが…あなたを許します。
雪華綺晶。忘れてはいけませんよ…あなたは…私の誇り。
あなたを…立派な娘達を…… あの人…に… 見て欲し…か………」
雪華綺晶「お母様?どうしたのです、お母様?まだ眠りの時間では…」
………
ジュン「こうして悪いオオカミは湖の底に沈んでしまいましたとさ。」
翠星石「……」
ジュン「おい?終わったぞ、翠星石。おい?何だ、寝ちゃったのか。」 - 85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 17:59:26.56 ID:VEsNXDC00
- 金糸雀「そ、そんな…そんなことが。」
蒼星石「…」
雛苺「雪華綺晶…」
真紅「アリスのローザミスティカを食べてしまったのね…」
雪華綺晶「ごめんなさい。雪華綺晶は悪い妹です。
約束を1つも守れませんでした。」
真紅「でも…お母様はあなたを褒めたのでしょう?」
雪華綺晶「…」
金糸雀「アリスの中に入って、彷徨ったのも
ローザミスティカが抜けて崩壊が始まった
お母様の姿を保つためだったのかしら。
なのに…カナは…カナは…馬鹿かしら!」
蒼星石「謝るのは…僕達の方だ。
お母様を助けられなかった責任は僕達にこそある。
しかも僕は…何も知らずに君ごとアリスを斬ろうとした。」
もっと早く聞きたかったであろう疑問を雪華綺晶はやっと口にした。
雪華綺晶「あの…何故私を…いえ、お母様を斬ろうと?」
真紅「それは…お父様が…」 - 86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:00:51.67 ID:pFI9fJhB0
- 切ないぜ・・・。
世界観とか雰囲気はからくりサーカスだな。ギャグが無ければ間違いなく鬱になっていた。感謝。
からくりサーカスは先の展開が読めないのが怖い。あの作者は予定調和の物語なんて書かないからな。 - 87 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:03:19.43 ID:41KwIPPn0
- こいつはまさか死なんだろってキャラがあっさり死ぬからな。
- 88 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:06:18.87 ID:5lGlIk5R0
- >>87
だがそれがいい - 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:07:13.78 ID:VEsNXDC00
- 雪華綺晶「お父様が!お母様を!?そんな馬鹿な!」
蒼星石「…」
雪華綺晶「お母様は今際の際にもお父様のこと思っていた!
そのお母様を!お父様が!?そんな…そんなのって!!」
金糸雀「お、落ち着くのかしら雪華綺晶!」
雪華綺晶「そんなこと…お母様が、あまりにも… 酷い!酷すぎる!」
蒼星石「いけない!! それ以上先を言っては!」
雪華綺晶「そんな、そんな非道なお父様など…」
雛苺「駄目ぇ!」
雪華綺晶「この雪華綺晶の夢見たお父様じゃない!!」
雪華綺晶がそう叫んだ途端、彼女の右眼の白薔薇はボトリと枯れ落ちた。
空になったアイホールから彼女の顔面全体にひびが奔る。
真紅「!!」
雪華綺晶「…あ、ああ ああああああああっ!!」
悲鳴とも怒号とも知れぬ叫び声とともに雪華綺晶の崩壊が始まった。 - 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:09:17.91 ID:yz9Kpaf50
- きらきーがドットーレ?
- 91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:14:00.85 ID:VEsNXDC00
- アリスと雪華綺晶の残骸を前にして
ドールズは半日以上、立ち尽くしていた。
レクイエムは静かに奏でられる。
第14曲 『聖体拝領唱』
奏者は金糸雀。ローゼンメイデン第2ドール。
黄色いドレスのバイオリン弾き。
蒼星石「僕達は…お父様を否定しては生きていけない。
お父様を否定すると
ブラックボックスの自壊プログラムが働いてしまう。」
雛苺「雪華綺晶…可哀想なの。」
真紅「…」
その時、レクイエムを遮って廃墟の中に入り込んで来る者達がいた。
その数は2、―――いや、3。 - 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:20:26.71 ID:VEsNXDC00
- ジュン「おい、誰もいる気配なんかしないぞ?」
翠星石「人形なんだからそんなものするわけ無いです。
もっと、目ん玉かっぽじって探すです!」
場違いなほど暢気な声を響かせて、一人と一体は
お葬式ムードの4体の前に登場した。
翠星石「蒼星石…!」
蒼星石「翠…星石?」
真紅「どうしてあなたがここまで…?それにジュン!?」
ジュン「真紅!!」
雛苺「???」
金糸雀「な、何事かしら?」 - 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:25:36.78 ID:VEsNXDC00
- 実に数十年ぶりの再会を喜ぶ双子の人形。
双子だけではない、ローゼンメイデンがこれだけ揃うのはいつ以来か。
母と末の妹の死を悼んでいた4体にとって、これは嬉しい不意打ちだ。
だが、アリスと雪華綺晶の顛末については黙っているわけにはいかない。
翠星石「そう…ですか。アリスも雪華綺晶も。」
翠星石もまた、水銀燈から聞かされた
ローゼンとその弟ソフォラ(槐)の歴史を伝えた。
金糸雀「槐が、カナ達のお父様の弟…」 - 94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:30:36.60 ID:VEsNXDC00
- パン!パン!パン!
けたたましい拍手とともにラプラスの魔が現われた。
ラプラス「これはこれは…皆様お揃いのようで。」
真紅「また…あなたなの。」
ラプラス「はい。またお手紙を届けに参りました。
7番目のお嬢さんのことは本当に残念でした。
お父様も悲しんでおいでです。アリスのことも含めて
全ての責任はこの父にある。どうか…」
ジュン「じゃあ どうしてローゼンはここに姿を現さないんだよ!
こいつらは皆…皆、待ってるんだぞ。
お前から来る手紙には命令しか書いてない。
それでも いつかは父親に会えると信じているんだ。
見知らぬ人間を守らされても 母親を壊せと言われても
ローゼンがどういう人間で何をしてきたのかも
それを全部知っても、まだ父親を愛しているんだ。
どうして会ってやらないんだ!」
翠星石「ジュン…」 - 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:36:09.79 ID:VEsNXDC00
- ラプラス「…この兎風情にはそのことを説明できるすべはありません。
私はあくまで、お使い。ですがそれもこれが最後です。」
雛苺「最後?」
ラプラス「はい。少年、貴方はこの廃墟に入るところを
忘れ物のベアクローを取りに戻って来たクマーに見られています。
槐はいずれこの廃墟に総攻撃を仕掛けるでしょう。
彼に残された時間も、もうわずか。まさに必死です。」
ジュン「!」
ラプラス「そこでお父様より、ローゼンメイデン全員に同一の命令です。
『戦え、そして勝て』と。そうすればあなた達はもはや自由です。」
蒼星石「自由?」
ラプラス「そうです。槐に勝てば
あなた達のブラックボックスは消えるそうです。
お父様を愛するもよし、憎むもよし。
これを自由と呼ばずして何と呼びます?」
真紅「愛することも…憎むことも…」 - 96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:41:08.32 ID:VEsNXDC00
- ラプラス「お父様よりのお手紙の内容は以上…ですが
1つ耳寄りな情報をお知らせしましょう。
槐が薔薇水晶とクマーの軍勢を連れて
ここへ到着するのは、明後日の夕方ぐらいになります。
勿論、この使い魔の誇りにかけて嘘ではありません。
つまり、明日丸々一日猶予があります。
この時間をどう使うかは…貴女達次第です。」
真紅「どういう風の吹き回し?」
ラプラス「今まで、客席で傍観者だったものが
自分も一役買いたいと舞台に飛び出てしまった。
そう思って下さい。では、これにて失礼…」 - 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:46:18.58 ID:VEsNXDC00
- 再会の喜び、母と妹の死、敵への不安、父への思い。
その全てを噛み締めながら1人と6体は寝た
…はずだった。
翠星石「眠れんです。やい、ジュン。もう一度本を読みやがれです。」
ジュン「おま… 昨日読んだばかりだろ。」
翠星石「最後のほうは眠ってしまって覚えてないです。だからもう一度です。」
雛苺「あー、翠星石だけずるいのー!」
ジュン「おいおい…」
金糸雀「かしらかしら?何かしら?」
翠星石「こ、こら!お前達は大人しく寝てるです!」
蒼星石「面白い本なのかい。なら僕も聞きたいな。」
真紅「そうね。どうせならみんなに読んで頂戴。ジュン。」
翠星石「ぜ…全員起きてきやがったです…」
ジュン「しょうがないな。それじゃ、読むぞ。 『7匹の子ヤギ』
昔々ある所にお母さんヤギと7匹の子ヤギがいました…」 - 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 18:58:19.24 ID:VEsNXDC00
- 翌朝。
誰もが思い思いに廃墟の中で時間を過ごしていた。
暇というわけでも手持ち無沙汰というわけでもない。
できるだけリラックスして、明日に備えようというわけだ。
真紅「ジュン…あなた、何をしているの?」
ジュン「お墓を作ってるんだよ。こんな廃墟の隅で悪いけど。
外に作ったら明日クマー達に荒らされるかもしれないからな。」
真紅「お墓。誰の?」
ジュン「決まってるだろ。お前達のお母さんと妹のだよ。」
真紅「私達は人形よ。お墓なんて…」
ジュン「人形でもお墓を作るんだよ。」
真紅「ありがとう、ジュン。私はあなたに助けてもらってばかりね。」
ジュン「僕が…真紅を?」
真紅「あなたと離れていた間。あなたに言われたことを何度か思い出していたのだわ
そして昨日の雪華綺晶を見て、はっきりと分かった。
私達はあなたの言った通りお父様の操り人形だわ。
それを私は認めることができなかった。
でも、あなたが今その糸を少しづつ切ってくれている。」
ジュン「その… 明日もし、いや必ず勝つけどさ。自由になったら真紅は…
どうするんだ?やっぱりローゼンに会いに行くのか?」
真紅「私は……」 - 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:01:37.67 ID:VEsNXDC00
- ジュン「そっ…その… 真紅!」
真紅「何?ジュン。」
ジュン「え〜と、その。そ、そうだ右腕…き、綺麗に直ったんだな。」
真紅「ええ…ラプラスが新しいのを付けてくれたのだわ。」
ジュン「そうか…それじゃ、こっちの右腕は…どうしようか?」
僕は薔薇屋敷の時からずっと持っていた真紅の右腕を彼女に見せた。
真紅「まだ…持っていて…くれたの。
そうね…それはアリスや雪華綺晶と一緒に…
いえ、まだ持っていて頂戴。
ジュン、あなたにまだ…持っていて欲しい。」
ジュン「…分かった。」 - 100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:06:39.48 ID:VEsNXDC00
- ………
翠星石「キィィィィィ!! 何なんですか朝っぱらから!あいつらは!」
蒼星石「文句があるなら直接言えばいいじゃないか。
何でこんな離れたところから、こそこそと覗きなんか…」
翠星石「右腕一本ぐらいでジュンを釣ろうとはふてぇ人形です。
蒼星石!翠星石の両腕を切り落とすです。」
蒼星石「何馬鹿なこと言ってるんだ…君は。」
翠星石「だってもう、プレーオフに持ち込むしかないですぅ!
そのためなら腕の2本や3本くれてやるです。」
蒼星石「意味が分からないよ。でも…変わったね、翠星石。
以前よりもずっと、元気になった。」
翠星石「お、おかしいですか?」
蒼星石「おかしいと言うか…不思議だ。僕達人形は不変だからね。
変わらない…と思っていた。でも翠星石は変わった。
もしかしたら人間でいう成長ってやつかもしれない。」
翠星石「そうですか?別に背も伸びてないですよ。」
蒼星石「成長ってのは見た目のことだけじゃないよ。」 - 101 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:11:16.39 ID:VEsNXDC00
- ………
雛苺「ふーん、ふーん、ふふーん。丸くて白くて〜♪」
金糸雀「あら、雛苺何を楽しそうに描いているのかしら?」
雛苺「ヤギさんなの。」
自信たっぷりに雛苺はクレヨンで書き殴った画用紙を金糸雀に見せた。
金糸雀「ぶっ!相変わらずへったくそなのかしら!進歩がないわね。
それに何も今描かなくたって…」
雛苺「いいの。今じゃないと描けないの。
トモエはいつもね、このクレヨンと画用紙を渡してくれて
『なんでも描いていいよ』って言ってくれるんだけど
雛が何を描こうかな〜って考えているうちに
遊ぶ時間が終わっちゃうの。だから今描くの。」 - 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:14:04.07 ID:Sdf86x8A0
- イイハナシダナー
- 103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:15:58.53 ID:VEsNXDC00
- 金糸雀「あら、考え方は少しは進歩してるじゃないのかしら。」
雛苺「う〜、雛だってずっと、子供じゃないもん。なら…金糸雀の方はどうなの?」
金糸雀「カナはローゼンメイデン1の策士だし、努力家だから
日頃の研鑽を欠かさないのかしら。
曲目だって増えたし…歌も歌えるようになったのかしら。」
雛苺「凄いの!金糸雀の歌、聞きたい!」
金糸雀「明日…全部終わったら聞かせてあげるかしら。」
雛苺「なんでよ〜。お絵描きも歌も今じゃないとできないのよ。」
金糸雀「(…今更、歌詞をまだ考えてないなんて言えないのかしら)」 - 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:22:30.21 ID:VEsNXDC00
- ………
僕がお墓を作り終えたときはもう夜になっていた。
お世辞にも綺麗とはいえない墓標だが…
真紅「人間は…お墓の前で故人を偲んで泣くのよね。」
ジュン「…普通はね。」
そう言えば、姉ちゃんもずっと両親の墓の前で泣いていたっけ。
でも僕は…。
翠星石「お母様…雪華綺晶…」
ジュン「その…お墓は作ったけどさ…
もうここにはアリスも雪華綺晶はいないんだよ。」
雛苺「?」
金糸雀「どうしてそんな淋しいこと言うのかしら。」 - 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:26:25.04 ID:VEsNXDC00
- 真紅「違うわ、金糸雀。
ここにお母様と雪華綺晶が居ないのが淋しいのではない。
ここに彼女達が居ないと思うから淋しい…のでしょ。ジュン?」
ジュン「そう、だから何て言うのかな…お前達は…」
蒼星石「…お母様も、雪華綺晶も僕達の中に生きている。
だってみんな元は1つだったのだから。」
ジュン「蒼星石は賢いな…。
それにお前達は長生きなんだ
いつかお母さんや妹の生まれかわりにも会えるかもしれない。」
真紅「生まれ…かわり?」
ジュン「そう、生まれかわり。お前達人形だって…きっと…」 - 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:31:22.61 ID:VEsNXDC00
- ………
??「私ね、生まれかわったら水銀燈みたいな天使になるの。」
水銀燈「馬鹿じゃなぁい。私は天使なんかじゃないとあれほど。」
??「いいえ、あなたは天使。私だけの天使。私を迎えに来てくれた。」
水銀燈「…とんでもない娘をマスターにしてしまったわ。」
少女の名はメグ。水銀燈の最初にして唯一のマスター。
そして生まれた時からのコエム病。
勿論、この時代の水銀燈には
コエム病を作ったのがローゼンだとは知る由もない。
メグ「ふふ、水銀燈はいつも怒ってばかり。可愛いんだから笑わなくちゃダメ。」
水銀燈「誰のせいだと思ってんのよ。」
メグ「また…怒られちゃった。」 - 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:36:07.10 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「不思議な子ねアンタも。叱られてるってのにへらへら笑っちゃって…」
メグ「だって、私叱られたのなんて生まれて初めて。
ずっとこの病気でしょ。褒め言葉にももう飽きちゃった。」
水銀燈「(早くローザミスティカに力を貯めて
お母様の元に帰らなくてはいけないのに、
やっと見つけたマスターがこんな病人だなんて…)」
メグ「そう、飽きちゃったの…もう褒められても
なかなか私の発作は治まらなくなって来ている。
肺炎にも罹ってしまっているとお医者様は言ってたわ。
きっと…次の発作が来たら、もう。」
水銀燈「…滅多な事は言うもんじゃないわ。」
メグ「次の発作が来たら、水銀燈が私の命を奪って。
できるんでしょ?
病気なんかで死ぬのは嫌。天使さんに私の命を…」
水銀燈「!」
……… - 108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:39:44.75 ID:VEsNXDC00
- 水銀燈「…夢。」
時間的にはジュンから旅立ちの決意を聞かされた夜にあたる。
病院の屋上に鞄を置き、その中で水銀燈は眠っていた。
水銀燈「あのジュン君とかと話したせいかしら。
それとも久しぶりのこの病院が懐かしくて?」
百年以上の歴史を誇るコエム病患者の病院。
メグという少女も、かつてここに入院していた。
水銀燈は時々彼女を夢で見る。
その夜はもう決して鞄には戻らず
空が明けるまで飛び回るのが常だった。
だけど、今夜だけは――― - 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:44:16.25 ID:VEsNXDC00
- ………
メグ「ウェロロロ! カッ ハァッ! グルォロロ!! ブフ!」
医者「コエム病の発作?いや喀血した!これは…まずいぞ!」
メグ「ハッ… ハッ… ハッ……」
水銀燈には窓の外からメグの苦しむ様子を眺める他なかった。
水銀燈「メグ…」
意識も絶え絶えの発作の苦しみの中でも
メグの視線は水銀燈の両の眼を捕らえて離さない。
そのまなざしに秘められているのは病人の絶望ではない。
まぎれもなく彼女だけの天使への希望。
水銀燈「…ッ!!」 - 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 19:50:03.76 ID:VEsNXDC00
- その日、メグは死んだ。
だが表情は発作の苦しみの中で逝ったとは思えぬほど安らかであった。
メグは裕福な家の生まれだったので立派な墓が立てられた。
水銀燈はただその前に立っていた。
私は彼女に何かしてあげられただろうか。
ただ、命を奪っただけではないのだろうか。
答えは出ない。そんなことをいくら堂々巡りに考えてみても。
とどまっている時間がない。何故なら、アリスの元に帰らなくては。
流す涙もない。何故なら、彼女は人形だから。
からくりローゼン アリスの幕 『私のお墓の前で泣かないで下さい』 終わり - 115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/17(日) 20:00:42.92 ID:VEsNXDC00
- / /// / //
′ /// / //
| r'/:::::\/ ィ /
| |'ヘ::::/ / 高価な墓石を立てるより、
∠! へ\</´ 下手でも手造りの方が素晴らしい…
/ \ ヾ いや?何か間違えていますね。
/ ヽ |!| いけないいけない、この兎めの頭は賢くありませんから。
/ }ヽ 〉 兎も角、第3幕はこれにて終了です。
{ ̄ ̄ ‐- `′ i 最後のお父様の命令は 『戦え、そして勝て』
ヾ- ――- 〉 彼女達はその本当の意味に気が付くでしょうか?
\ (__,.. ソ 何と戦い、何を以って勝利とするか。それが大事。
_r― ー;.,.,. '´ 今一度、観客の皆様は次の幕まで御休憩を。
_/マ==|ヽ{、 狐の巣穴にご用心。疾風のレスを釣られぬよう…
-‐ .:::.:::.::\::\└勺! ,. ---,
//.:::.:ヽヽ:::.:::.:ヽ:::.\ ゞヽ、 / ∠二/ノ_
|l:::.:::.:::.:i i:::.:::.:::.:i l:::.:ヽ ヾヽト、 / ´ ̄ _∠二ニ'
|l:::.:::.:::.:j l:::.:::.:::.::|ヽ:::.::ヘ `i! l:::ヽ ヘヽ ,. ´
亅L. イ /.:::.:::.:::.\\:::.:Y i! l::.::| /:::.:::.:::i丿
f―::: /:::.::l:.:::.:::.:::.:::.\`:::Yi! |:V| /::.::.::.::.:/
ヾ ∠:::.:::.:::j.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.∧i!|/::ト /.::.::.:::/
| /:::.:::.:/:.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.\il!|::;ハ /::.::.//
| i:::.:::.::∧:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::レ/!:\ヽ /::/ /
| l:::.:::.∧ ヽ:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::/:::.:::.ヽ了/:/ /
- 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:04:03.83 ID:OYNZzZ3g0
- 『進め薔薇乙女』ll ll
l| -‐‐- |l
,イ」_ |ヽ_| l、
/└-.二| ヽ,ゝl
l ,.-ー\/. 、l
| /.__';_..ン、 ビ〜ィ〜ム かがーやーく♪
/ /<二> <二>!゙、
//--─'( _●_)`ーミヘ フラッシュバックに〜ぃ♪
<-''彡、 |∪| 、` ̄ ̄ヽ
/ __ ヽノ Y ̄) |
(___) Y_ノ
\ |
| /\ \
| / ) )
∪ ( \
\_) - 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:04:47.48 ID:OYNZzZ3g0
- ll ll
l| -‐‐- |l
,イ」_ |ヽ_| l、
/└-.二| ヽ,ゝl
l ,.-ー\/. 、l
| /.__';_..ン、 ヤツのかげーー♪
/ /<二> <二>!゙、
//--─'( _●_)`ーミヘ
<-''彡、 |∪| ミ __>
( (/ ヽノ_ |
ヽ/ (___ノ
| /
/ /\ |
( ( ヽ |
/ ) ∪
(_/ - 4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:06:42.87 ID:OYNZzZ3g0
- _人人人人人人人人人人人人人人人_
> シャア♪ シャア♪ シャア♪ <
 ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
ll ll ll ll ll ll
l| -‐‐- |l __ l| -‐‐- |l __ l| -‐‐- |l __
,イ」_ |ヽ_| l、〈〈〈〈 ヽ ,イ」_ |ヽ_| l、〈〈〈〈 ヽ ,イ」_ |ヽ_| l、〈〈〈〈 ヽ
/└-.二| ヽ,ゝl.〈⊃ } /└-.二| ヽ,ゝl.〈⊃ }./└-.二| ヽ,ゝl.〈⊃ }
l ,.-ー\/. 、l | |. l ,.-ー\/. 、l | | l ,.-ー\/. 、l | |
| /.__';_..ン、! ! | /.__';_..ン、! !| /.__';_..ン、! !
/ /<二> <二>!゙、 // /<二> <二>!゙、 // /<二> <二>!゙、 /
//--─'( _●_)`ーミ /.//--─'( _●_)`ーミ / //--─'( _●_)`ーミ /
<-''彡、 |∪| / <-''彡、 |∪| / <-''彡、 |∪| /
/ __ ヽノ / / __ ヽノ / / __ ヽノ /
(___) / (___) / (___) / - 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:13:27.43 ID:OYNZzZ3g0
- 薔薇水晶「クマー達…新しい体の調子はいいようですね。」
槐「ああ…通常の3倍のスピードが出るようになった。
だが、頼りになるのは薔薇水晶…君だけだ。」
薔薇水晶「分かっています…お父様。
直して頂いたこの右腕にかけても…
でも本当にここで待っていてはくれないのですか。」
槐「一緒に行く。もう本当に時間が無い。
ジュンを捕まえたらその場で転送(ダウンロード)をする。」
薔薇水晶「あの姉…ノリは使えないのですか?」
槐「弟をおびき出すのには有効かもしれないが…
ローゼンの人形達はローゼンの命令を優先する。
姉を見殺しにしないとも言い切れないし、
下手に肉親の情を刺激するのも得策ではない。」
薔薇水晶「…」
槐「彼女には今までどおり安全な場所で眠っていてもらおう。
(最悪…弟が手に入らなかった場合、姉にダウンロードするしかない。
だが…私の血統とは言え、男と女では頭のつくりが違い過ぎる…)」 - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:18:55.21 ID:OYNZzZ3g0
- バイオリンの緊張した高音が鳴り響いた。
真紅「正面口の金糸雀の合図!!ついに来たわね!」
ジュン「!」
雛苺「負けないんだから!」
………
薔薇水晶「見つかった…」
槐「もとより隠れる必要は無いし、そのつもりも無い。
行け!お前達。」
クマー達「御意!」
クマー達は彗星のように廃墟へと突撃する。
槐「それじゃあ僕達も行こうか、薔薇水晶。」
薔薇水晶「はい、お父様。」 - 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:22:49.06 ID:OYNZzZ3g0
- ………
バイオリンの音は高音で長音と短音を繰り返している。
金糸雀からの連絡だ。
真紅「敵の数…およそ300!?」
ジュン「さっ…さんびゃっ!?」
真紅「それに…やはり裏口のほうにも100体ほどが回り込むみたいだわ。」
雛苺「ここまでは金糸雀の作戦通りなの!」
突如、ズドンという衝撃音とともに廃墟を揺れた。
真紅「大変!廃墟の横っ腹に巨大水晶を打ち込まれたみたい!
進入口が増えてしまったわ!策士が聞いて呆れるわね…」 - 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:27:33.86 ID:OYNZzZ3g0
- ………
金糸雀「この廃墟に入るには正面口と裏口のどちらかしかないかしら。
槐達はおそらくは広い正面口から先ず入ろうとするはずだから
カナが斥候をかねて、待ち構えるかしら。
敵が来たら知らせることもできるし、音でなら遠く広く攻撃できる。」
雛苺「金糸雀独りなの?危ないよ。」
金糸雀「策士、危うきに近寄らずかしら。カナはあくまで牽制。
雑魚どもは適当に散らせるでしょうけど、
それでも全部は食い止めきれず廃墟に入ってくるかしら。
それを仕留めるのが真紅と雛苺、あなた達の役割。
ジュンを守りながら戦うのよ。」
真紅「金糸雀…無理はしないでよ。」
蒼星石「そして僕と翠星石は裏口を固めるというわけか。」
金糸雀「そう、正面を攻めあぐねた敵は、すぐに裏口も狙うはずかしら。
この金糸雀の眼に狂いは無いかしら!!」 - 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:33:56.73 ID:OYNZzZ3g0
- ………
金糸雀「…と大見得きったのに、いきなり想定外かしら〜
正面口、裏口、そして横穴まで作られて
同時に攻められるなんて…でもカナは戦うしかないかしら!
せめてここで敵の数を減らすしか…」
クマーB「カナの姐さんとは短い付き合いだったが、これも巡り合い。」
クマーC「姐さんのことは嫌いじゃなかったが…君のお父上がいけないのだよ!」
クマーF「次郎!三郎!ジェットストリームアタックをかけるぞ!」
B&C「クマー!!」
金糸雀「は、速い!!」 - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:40:03.70 ID:OYNZzZ3g0
- ………
雛苺「それじゃ…雛は行くね。」
真紅「待って、私が!」
雛苺「ダメ、真紅はジュンのそばを離れちゃダメなの。
だから雛が行くしかないの。」
ジュン「おい…横穴を開けたのはでかい水晶なんだろ!
…ということは、そこから来るヤツは!」
雛苺「大丈夫、雛だって強いんだから。」
ジュン「僕も一緒に行く!そうすれば真紅だって。」
雛苺「それもダメ。今までみんなばらばらだったローゼンメイデンが
今、ひとつの目的のために戦ってるの。
それはジュンのためなの。だから…」
真紅「雛苺…あなた、マスターに会うのでしょ?遊ぶのでしょう?」 - 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:44:57.25 ID:OYNZzZ3g0
- 雛苺「トモエには…ジュンが会って欲しいの。
トモエは静かな子だけど、きっと仲良くなれると思うの。」
ジュン「おい、そりゃどういう意味…」
雛苺「雪華綺晶だってお母様を最後まで守ったの。
雛苺だって…お姉ちゃんだから逃げないのよ。
それじゃあ行ってきま〜す!」
真紅とジュンの制止を振り切り、小走りに雛苺は駆けていった。
水晶で空けられた横穴から進入してくる敵を抑えるため。
ジュン「行ってきます…て、あいつ、お使いにでも行くみたいに」
………
薔薇水晶「誰がお出迎えかと思えば…これは可愛らしい赤ん坊。」
雛苺「赤ん坊じゃないの!ヒナはお姉ちゃんなの!!」 - 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:49:50.19 ID:OYNZzZ3g0
- ………
金糸雀「諧謔曲(スケルツォ)、『神をたたえよ(ベネディカムス・ドミノ)』!!」
クマーB「ちぃ、当たりどころが悪いとこんなものか!」
策が崩れたことで、一度は弱気になった金糸雀であったが
ベアクローという近接武器しか持たないクマー達相手には
バイオリンによる音響攻撃は有利であった。
金糸雀「(これはもしかしたら、いけるかもしれないかしら!)」
策士が勝利を予感し始めた時
地を割き巨大な水晶の柱が一面、タケノコのように生え始めた。
金糸雀「!?」
薔薇水晶「得意の音響も…水晶で散る…」 - 13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:53:49.83 ID:OYNZzZ3g0
- 金糸雀「薔薇水晶!?
横穴を空けて入って行ったはずじゃないかしら!?」
………
翠星石「これは一体どうしたことです?」
蒼星石「薔薇水晶が…2体?僕達の前に!?」
薔薇水晶A「キュベレイは…」
薔薇水晶B「量産型のほうが強い…」
………
雛苺「きゃうっ!!」
蹴り飛ばされた雛苺は、
二度三度床をもんどりうって壁にたたきつけられる。
薔薇水晶「意外と…丈夫に出来てる。
でも、お遊びの時間はこれまで。覚悟…」 - 14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月) 21:58:41.33 ID:OYNZzZ3g0
- アメジストの剣を突き出し、薔薇水晶は迫る。
雛苺「遊びの時間は…終わり?
違うの!ヒナはまだトモエと…!!」
壁を蹴ると雛苺はその反動で薔薇水晶にむしゃぶりつく。
薔薇水晶「何を…離れなさい!」
雛苺「もっと遊びたかった。でも、さよなら…トモエ…」
ローザミスティカに溜め込んだエネルギーを
全てを解き放つ。
雛苺と薔薇水晶は光に包まれた。
………
ドカンと鈍い音が僕の耳を突いた。
今までのように建物の外でしていた音ではない
間違いなく室内で起きた、くぐもった響き…
ジュン「な、なんだよ。今の…?」
真紅「…気をつけて、来るわよ。」 - 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/06/18(月