もしもローゼンメイデンがMTGの世界にいたら SHADOWMOOR
http://yutori.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1217764490/
- 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 20:54:50.54 ID:LhNa5nEM0
- かつて、光に満ちた世界がこの多元宇宙に存在した。
かつては世界には柔らかな陽光が降り注ぎ、
広大な草原には「キスキン」と呼ばれる小人族が、無邪気で気ままな暮らしを送っていた。
太陽の恵みを受けて育った木々の下には森の精たる「ツリーフォーク」が歌い、
海の無いこの世界を流れる水路には、「メロウ」と呼ばれる半魚人が戯れる。
しかし。
全ては変わり去った。
この世界に大いなるオーロラが降りてより、美しきもの、無垢なるものは拭い去られた。
代わってこの世界を覆い尽くしたのは、神話の過去より眠り続けていたはずの悪しき神と邪悪なる力。
キスキンの無邪気な心は懐疑に塗りつぶされた。
ツリーフォークは狂気に満ちた森の悪霊と化した。
メロウは今や、この世界の川をさまよう殺し屋に生まれ変わった。
この世界の光に満ちた麗しい過去の事を、今や誰も覚えてはいない。
闇のオーロラに心を蝕まれることなく、この薄暮の時代を迎えることが出来たごく一部の者を除いては。
この世界は、かつて在りし名を失い、その住人からはこう呼ばれている。
「シャドウムーア」。
ドミナリアの言葉では「影差す荒野」を意味するこの世界に、降り立つは年若き2人の大魔導師。
赤の衣をまとう少女と、漆黒の衣をまとう少女であった――。
Magic:the Gathering / SHADOWMOOR
Reiner Rubin VS Mercury Lampe - 2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 20:56:01.66 ID:t+ipqwpP0
- ガチ過ぎて吹いたwwwwwwwww
- 3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 20:56:35.00 ID:LhNa5nEM0
- Prologue
寂莫たる荒原の最中に、彼女は立っていた。
深い赤を基調とした衣。
頭につけたヘッドドレスからは、豊かな金の髪が零れ落ち、乾いた風に流れる。
強い意志をうかがわせる碧眼には、昼でありながら薄暮のごとき明度しか持たない、臙脂(えんじ)色の空を映す。
彼女の名は真紅。
このシャドウムーアに隣接するもう一つの世界、ドミナリアの魔法学府より来たりし魔導師である。
そして真紅の目の前に立つは、もう1人の少女。
真紅よりいくばくかの年を経たと思われる黒衣の少女は、ひどく不気味な笑みを浮かべ、たたずむ。
耳を澄ませば、その中に亡霊の悲痛な泣き声が聞こえてきそうな、冷たい風が彼女の銀髪を撫でた。
傍らに携えた白銀の長剣を弄びながら、黒衣の少女……水銀燈は言う。
「そこをどきなさぁい、真紅ぅ? その向こうに、『いいもの』を隠し持っているのは分かっているのよぉ?」
白銀の長剣を真横に薙ぎ払い、真紅にこの場を去れと通告する水銀燈。
しかし、彼女はその身に根でも生えているかのごとくに、微動だにしない。
真紅は、痛みすら感じるほどに乾ききった荒野の風に、その血色の良い頬を晒し、
水銀燈の歪んだ笑みに言葉をぶつける。
「水銀燈――その『いいもの』を、あなたが手にすることは許されないのだわ。
何故お父様が私達を、生まれ故郷のドミナリアからこの異世界シャドウムーアに派遣したのか、忘れたのかしら?
この世界を……かつて『ローウィン』と呼ばれていたこのシャドウムーアに、
こうして起きた変異の原因を調べること……『大オーロラ』の正体を確かめることが、私達の目的よ。
そうでしょう?」
対する水銀燈は、けれどもその嘲弄を浮かべる顔面から、笑みを取り去ることはない。
むしろ、この泣き叫ぶような悲痛な風の音に、伴奏を加えんとしてか、更なる悪意の声を孕ませる。 - 5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 20:57:30.99 ID:LhNa5nEM0
- 「あーら、こんなに大量に『黒』のマナに満ち溢れた、この世界を放っておけと私に言うわけぇ?
私達にとって『土地』が何を意味するか……今更長々と講釈でも垂れて欲しいのかしらぁ?」
水銀燈の髪が荒野の風になぶられ、彼女自身の顔に銀色の川のごとく流れる。
水銀燈の赤い瞳が湛える感情は、見る者が見ればそれとなく分かろう。
真紅は自らの背後に存在する土地を守るかのごとくに、立ちはだかる。
「私達がドミナリアを出立する際、お父様から許可していただいたのは、この二つよ。
必要最低限の『土地』の所有……そしてこの世界の『被造物(クリーチャー)』達との必要最低限の契約。
水銀燈、あなたがこの先の『土地』を所有するのは、その最低限を上回るわ。
それ以前に、あなたが今までやって来たような、森林に腐敗をもたらして、
それを腐った泥の沼に変えるような真似……もってのほかなのだわ」
「いきなり何の話をするのかと思えば……。私がそんな事をした証拠でもあるわけぇ?」
「ならば、説明しなさい。
何故最近、あなたが調査を担当するこの一帯で、土地が腐り果てて不浄の沼地と化すような現象が頻発しているのか。
この辺りで最近、シャドウムーアの被造物(クリーチャー)達に特段大きな動きもないなら、
これがシャドウムーアの摂理にのっとって起きた、ただの自然現象とは考えにくいのだわ」
水銀燈を詰問する真紅。
対する水銀燈は、真紅にただただ冷笑を返すのみ。
「……だとしたなら、何だって言うかしら? だからこの辺りの調査を引き受けた私1人に、全ての非があるとでも?
まあ仮に百歩譲って、私がその腐敗現象の犯人だったとしても、あなたには関係のない話ね。
あなたには、あなたの調査すべき場所があるはずよぉ」
「その結果、私はこの辺りから、異常な『黒』のマナの流出を知ったのだわ。
いくら太陽の昇ることがないこの薄暮の世界でも、異常すぎるほどの量の、ね」
真紅は、言いながらその両腕を、目の前に掲げる。 - 6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 20:59:02.99 ID:LhNa5nEM0
- 光が、集まり始める。
この世界に残されたかすかな光が、彼女の掲げた手の平の中間にある虚空に安息を見出し、
なだれ込むかのようにして。
やがてその光は実体を手にし、彼女の両腕に抱かれたまま顕現する。
本の表紙を思わせる、長方形をした黄土色の束。
その四隅には赤い鋲のような模様が描き込まれ、中央には縦に細長い楕円の紋様が存在する。
その楕円の中央、すなわち黄土色の束の中央には、五つの色の玉が正五角形の頂点を形どるように描かれている。
白。
青。
黒。
赤。
緑。
これぞ、万物の理を知り、次元を超え、定命の者には本来許されぬ強大な魔力を、『久遠の闇』より得た証。
すなわち、数万数億の命に一つと呼ばれるほどに少ない、『久遠の闇』の『灯』を得たしるし。
真紅は、その手の中の黄土色の束を握り締めながら、水銀燈に宣告。
水銀燈への最後通告が、真紅の口より放たれる。
「水銀燈。あなたがどうしても白(しら)を切り続けるというのなら、力ずくででもここをどいてもらうわ。
あなたがここに居座り続ければ、闇のオーロラで傷付いたこの世界を、更に傷付けることにもなりかねない。
あなたが調査担当をしているこの土地一帯を賭札(アンティ)として、私と決闘(デュエル)なさい。
私達にとって、この挑戦が何を意味するか……今更長々と講釈でも垂れて欲しいはずはないわね?」
水銀燈の言葉をそのまま返し、真紅は水銀燈への挑戦の表明とする。
水銀燈は鼻で二つ三つ笑い、その手の内の白銀の長剣を、腰の鞘へと収めた。 - 7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 20:59:34.06 ID:5ZSyjIB/0
- やったかしら!やったかしら!!やっ―-
- 8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:00:23.88 ID:LhNa5nEM0
- 「ええ、もちろんよぉ。私はどこかのおばかさんとは違うもの。
どうせ剣なんて、野良ボガートどもを相手にするならともかく、
あなたに対しては文字通り無用の長物……あなたが力ずくで来るならば、こちらも同じ手で応じてやるわぁ」
長剣を収めた水銀燈は、その右手を真紅が行ったのと同様に、虚空へと捧げる。
水銀燈の手の上で、光の渦。
実体化すれば、そこに現れたのはやはり黄土色の束。
水銀燈はそれをしっかと掴み、自らの胸元に引き寄せる。
「ただし、真紅。
あなたがこの決闘(デュエル)に敗れたのならば、とっととドミナリアのお父様の元に帰りなさぁい。
自分はこのシャドウムーアの調査を行うには不適切な人間でしたって、お父様に泣いて謝りながらねぇ。
それが私があなたに課す条件よぉ」
水銀燈が告げる。
荒野に吹き抜ける風は、未だ嘆きの声を止めない。
真紅は、自らの手にする黄土色の束を静かに開いた。
「お父様に泣いて謝らねばならないのはあなたよ、水銀燈。
本来ならば師を受け、師から学ぶことなどほとんどない、私達『プレインズウォーカー』が、
あえてお父様の魔法学府で教えを受け続け、そして今なお教わり続けている理由……思い出させてあげるのだわ!」
真紅の手にする黄土色の束がほぐれ去り、一枚一枚の札として宙を舞う。
この黄土色の束こそ、「彼女ら」の持つ力の証。
自ら編み上げた魔術で、次元の超越すら可能とした強大な魔導師にのみ、
所持することを許された「知識の書(ライブラリー)」。
「彼女ら」はそこに、自らの手に入れた魔術を、下僕を、地脈へ至る経路を、全てを記す。
水銀燈も、真紅がしたのと同様に己の知識の書(ライブラリー)を開く。
水銀燈の持つ幾多もの魔術の知識が、渦巻きながら乱舞する。 - 9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:01:57.13 ID:LhNa5nEM0
- 真紅と水銀燈は、彼女らの周囲で舞う札の嵐の中に、その右手を差し入れた。
互いの手の中に、嵐の中から飛び込んで来た札が次々に止まる。
一枚。
二枚。
三枚。
四枚。
右手にそれだけの札を握り込んだならば、今度は左手を札の嵐に差し入れる。
右手のものを合算すれば、これで五枚。
六枚目も飛び込む。
そして、七枚目。
受け止めた瞬間に、札の嵐は収まった。
今度はさながら、虚空で釘にでも打ちつけられたかのように、互いの札は宙に静止。
お互いの所持する札が、その裏側を相手に見せるようにして、静かにたたずむ。
真紅と水銀燈は、その七枚の札を己の左手に。
互いが互いを睨み合い、見えない火花をそこに散らせる。
「――『最取捨(マリガン)』はなくてもいいのかしら、水銀燈?」
「当然よぉ。私の知識の書(ライブラリー)が、私を裏切るとでもぉ?
そう言う真紅はどうなのかしらぁ?」
「もちろん、私もこのままよ。あなたを相手にする『手札(ハンド)』として、不足はないのだわ」 - 10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:03:35.75 ID:5ZSyjIB/0
- どうせお粗末な呪文だったのだわ――
- 11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:03:50.10 ID:LhNa5nEM0
- 荒野を駆ける風は、2人の決戦の予兆を感じ取ってか、突如として止み去る。
むしろ、これからこの場において起こることを感じ取ってか、泣き叫ぶ風は2人の元から逃げ去ろうと、
逆へ逆へと吹き行こうとする。
だが、それもまた当然の理か。
彼女らがその力をぶつけ合えば、この荒野は決して無事ではありえまい。
何故なら彼女らは、強大なる魔導師。
神にも匹敵せんばかりの強壮なる被造物(クリーチャー)をも使役する、召喚の術。
奇跡や天災としか思えぬほどの、強大な力を顕現せしめる魔術。
そして、次元の壁の超越さえも可能とする、次元渡りの術。
この多元世界ドミニアのいずこかの次元に生を受けた者は、彼女らほどの力を持つ大魔導師を、
敬意と畏怖と、時には嫌悪や恐怖を以って、こう呼び習わす。
すなわち、「プレインズウォーカー」と。
2人の宣誓のもと、その戦いは始まる。
「「決闘(デュエル)!!!」」
この多元世界における最強級の存在である、プレインズウォーカー。
その魔法合戦の火蓋は、今切って落とされる。
Reiner Rubin VS Mercury Lampe - 12 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:05:01.82 ID:LhNa5nEM0
- Turn 1
Active player : Reiner Rubin
真紅は左手に握られたカードを一枚取り出し、水銀燈に宣言する。
「『山』をセットするのだわ」
水銀燈に見せ付けたその札に描かれたのは、どことも知れぬ峻厳たる山脈の絵。
それは、真紅が高々と掲げるや否や、光と化してほどけ去り、虚空に消える。
その光は真紅の背後に回り込み、「それ」を形成。
虚空に開いた、異次元へのゲートを。
「ふうん――あなたの大好きなシヴの山のどこかかしらねぇ」
水銀燈は、ゲートの向こうに移る山を見やりながら、そう判断。
プレインズウォーカー達は、主にその強大な魔術を行使するための元手――すなわち「マナ」と呼ばれる力を、
自らが所有する土地から引き出すことで、魔術に必要な魔力をあてがう。
この「マナ」の色は、総計で五色。すなわち、白、青、黒、赤、緑。
真紅が所有する土地は、すなわち山。
その内に灼熱の溶岩を秘めた山からは、破壊と炎を司る、赤のマナが生み出される。
真紅は開いた異次元のゲートに、視線を送ることなく手をかざした。 - 15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:06:28.15 ID:LhNa5nEM0
- 「この山よりマナを引き出すわ。そして――」
真紅は左手から、もう一枚の札を摘み上げる。
真紅は札を握り締めた右手を掲げ、その流れの中にカードを晒した。
すなわち、真紅の所有する山より流れる、純粋な赤の光の中に。
山へと通じるゲートから、赤い光の川が札へと流れ込む。
「汝、寂寥の荒野に生ける赫怒の子よ――。
汝を突き動かしたる焦熱の怒りもて、閃光の一打を我が敵にもたらせ――!
《怒り狂うゴブリン》!!」
真紅の掲げた札が、先ほどと同じく光と化してほぐれ去る。
それが虚空に編み上げたもの――それは先ほど生み出されたような、ゲートに他ならなかった。
だがそれは、その内に呼び起こされた存在をこの次元に呼び寄せるや、すぐさま閉じてしまったのだが。
その小柄な身の丈に見合わぬ巨大な斧を、軽々と振りかざしてみせる小鬼は、
見まごうことなきゴブリンと呼ばれる存在であった。
「《怒り狂うゴブリン》、召喚なのだわ」 - 18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:08:01.04 ID:LhNa5nEM0
- Raging Goblin / 怒り狂うゴブリン (赤)
クリーチャー ・ ゴブリン(Goblin) 狂戦士(Berserker)
速攻(このクリーチャーは、あなたのコントロール下で場に出てすぐに攻撃したり(T)したりできる。)
1/1
「さあ、《怒り狂うゴブリン》、水銀燈を攻撃なさい!」
《怒り狂うゴブリン》は、その名にそむく事のない、猛烈な怒気を帯びた奇声を上げながら、水銀燈へ突進。
これぞ、プレインズウォーカーならば使えぬ者はいないとされる、召喚の術。
自身と契約した、ドミニアに存在する生けとし生ける者……すなわち被造物(クリーチャー)を、
自らの所有する土地から引き出したマナを用い、次元を超越して呼び寄せるこの術は、
プレインズウォーカーが別の次元を旅する際に、自衛の手段としても使われるし、
何よりも大抵の場合、敵対する他のプレインズウォーカーを撃滅するための、基軸として機能する。
そして、《怒り狂うゴブリン》にはその被造物(クリーチャー)の中でも、
特別な能力を持ち召喚も容易であるがために、真紅ら赤のマナ使いにたいへんに好まれている。 - 20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:09:30.08 ID:LhNa5nEM0
- 「ッ!!」
斧が肉を叩き切る生々しい音と共に、水銀燈は《怒り狂うゴブリン》の一撃を受ける。
まともな人間が受ければ、頭蓋をかち割られてたちまち絶命するであろうこの一撃は、しかし
水銀燈の肩を浅く切り裂くのみで留まる。
水銀燈がよろめいた隙に、《怒り狂うゴブリン》はすかさず転進。真紅の元へと駆け寄る。
「……『速攻』持ちの被造物(クリーチャー)は、どうにも厄介ねぇ……!」
呻きながら、水銀燈は憎たらしい小鬼を睨みつける。
本来ならば、こうしてプレインズウォーカーによって召喚された被造物(クリーチャー)は、
召喚されて即座に攻撃を行うことは出来ない。
被造物(クリーチャー)自身が召喚された先の、その状況を把握するために、どうしても隙が生じるためである。
プレインズウォーカー達は、この隙を「召喚酔い」という俗言で時おり表現することもある。
だが、状況を判断する能力が優れているのか、はたまた何も考えずにしゃにむに突撃するしか出来ないのか、
理由はともかくとして、中には《怒り狂うゴブリン》のように、
召喚された瞬間に臨戦態勢を取れる被造物(クリーチャー)も、しばしば存在する。
プレインズウォーカーは、この能力を「速攻」と名付け、周知している。
「速攻」を持つ被造物(クリーチャー)を召喚されれば、
時には防御の態勢も整わないまま、攻撃を受ける危険性は高い。
水銀燈は、まさにそれゆえにこうして傷を負う羽目になったのだ。
「水銀燈、次はあなたの番なのだわ」
「言われずとも――分かっているわ!!」
Mercury Lampe's life: 20→19 - 21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:11:15.20 ID:LhNa5nEM0
- Turn 2
Active player : Mercury Lampe
水銀燈は、真紅に自らの手番を知らしめるかのごとく、右手を再び高く掲げる。
「ドロー!」
その言葉を放った水銀燈の手に、それと時を同じくして一枚の札が飛び込む。
水銀燈は左手にその新たな札を引き寄せ、水銀燈の手札(ハンド)はこれで八枚。
「うふふふ……本当に先攻を取ったのは、正解だったのかしらねぇ?」
水銀燈は、今引き寄せた新しい札を、その表を見せぬように誇示し、酷薄に笑う。
プレインズウォーカー達の決闘(デュエル)において、その手札(ハンド)は極めて重要となる。
プレインズウォーカーはこの手札(ハンド)に記された、召喚の術や大魔術、
そして自らが所有する土地への魔法的な経路を利用して、相手となるプレインズウォーカーを撃破する。
無論プレインズウォーカー同士の戦いでも、先手必勝は大抵の場合、成り立つ。
だが、後手に回ったプレインズウォーカーは、先の先を取りえない代償として、
先手のプレインズウォーカーに比べ、手札(ハンド)の枚数で一枚先行する事ができる。
水銀燈は、その優位を真紅に知らしめながら、手札(ハンド)から一枚の札を提示。 - 22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:12:16.55 ID:LhNa5nEM0
- 「『沼』をセット! ――私の大好きな、アーボーグの湿地帯よぉ」
水銀燈らの故郷の世界、ドミナリアに存在する湿地帯へ通じるゲートが、
たちまちのうちに水銀燈の背後に開かれる。
「それじゃあ……目には目を、歯には歯を、ゴブリンにはゴブリンを、ってところかしらねぇ?
私が召喚するのは、この子よぉ」
水銀燈の手札は、これで合計二枚使われ、残りは六枚。
水銀燈が右手に掲げた、ゴブリンの絵が描き込まれた札が、たちまち光と化してほどけ去り、消える。
「その皮膚は悪疫、その臓腑は疾病――。
汝の苦役、死してなお終わることなし! 来たれ!
《ただれたゴブリン》!!」
現れたのは、ゴブリンだった。
ただし、腐乱死体と化した、という注釈は付くのだが。 - 23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:14:09.76 ID:LhNa5nEM0
- Festering Goblin / ただれたゴブリン (黒)
クリーチャー / ゾンビ(Zombie) ゴブリン(Goblin)
ただれたゴブリンが場から墓地に置かれたとき、クリーチャー1体を対象とする。それはターン終了時まで-1/-1の修整を受ける。
1/1
(なるほど……これでは下手に攻めるわけにはいかないのだわ)
全身の皮膚から汚物をボロボロとこぼす、《ただれたゴブリン》。
それを見る真紅の心中は穏やかではない。
プレインズウォーカーはその魔術を用いれば、生半可な病に屈することはまずないが、
それでも全身が汚物の塊のようなあの被造物(クリーチャー)を見れば、その生理的嫌悪感は抑え切れない。
何より、この《ただれたゴブリン》には、厄介な力が備わっている。
腐乱死体と化したその身を下手に引き裂けば、その体内に淀む病魔が他の被造物(クリーチャー)を蝕むのだ。
「さあ――次はあなたの番よぉ、真紅」
「…………」
真紅は、その右手を静かに掲げた。
《ただれたゴブリン》の、おぞましい身震いを睨みつけながら。 - 24 :2ターン目終了時盤面:2008/08/03(日) 21:15:06.47 ID:LhNa5nEM0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:19
手札枚数:6
沼×1
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │墓│
│ │ │地│
└─┘ └─┘×0
ただれたゴブリン
┌─┐
│ │
│ │
└─┘
┌─┐
│Τ│
│ │
└─┘
怒り狂うゴブリン
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │墓│
│ │ │地│
└─┘ └─┘×0
山×1
手札枚数:5
現在のライフ:20
プレイヤー名:真紅 - 25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:16:44.48 ID:LhNa5nEM0
- Turn 3
Active player : Reiner Rubin
真紅の背後で、山へと通じるゲートがのたうつ。
先ほど《怒り狂うゴブリン》を召喚した時は、一度すぼまっていたこのゲートは、もう一度大きく開かれた。
プレインズウォーカーは強大な魔術を行使するために、土地そのものから大量の魔力を引き出す。
だが一度マナを土地から引き出せば、その土地のマナが自然回復し、再度マナで満たされるまで、
一時的にマナを引き出すことは出来なくなることは、プレインズウォーカーなら誰でも心得ねばならない。
魔術を行使するための手札(ハンド)が十分にあったとしても、
マナを引き出すための土地が無ければ全てが無駄と化してしまうためである。
その時に引き出しうるマナの多寡と、自らの手にする手札(ハンド)。
これらのバランスを常に計算しながら、動かねばならないのだ。
「ドロー!」
背後の虚空に大きく開かれた、異界へ続くゲート。
それが再び大きく開かれたのとほぼ同じくして、真紅のかけ声と共に新たな札が彼女の右手に。
これで、真紅の手札(ハンド)は六枚となる。 - 26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:18:15.25 ID:LhNa5nEM0
- 「私は再度『山』をセット!」
真紅はその内の一枚を純粋な霊気(エーテル)体に変換。
宙に砕け散った無数の星は、新たなるゲートを開く。
真紅の背後に、山岳地帯に通じるゲートがもう一つ生成された。
(これから……どう攻めるべきかしら?)
山へと通じるゲートが二つ開かれたことで、自身の手札(ハンド)から放ちうる術の幅は一気に増える。
すなわち、真紅にはここで複数の選択肢がもたらされることとなる。
真紅は自身の持つ五枚の手札(ハンド)に、素早く視線を走らせた。
彼女の脳裏で、戦術が音も無く組み立てられていく。
(私の使うこの知識の書(ライブラリー)は、赤の攻撃魔術を大量に搭載している。
これらの攻撃魔術はもちろん、水銀燈の被造物(クリーチャー)を撃ち滅ぼすにも使えるけれども、
それに拘泥し過ぎて水銀燈自身への攻撃が緩んだなら、本末転倒――!) - 27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:20:05.93 ID:LhNa5nEM0
- 被造物(クリーチャー)を更に召喚することも一瞬限り考えたが、却下。
真紅の手札(ハンド)には、《放蕩紅蓮術師》という被造物(クリーチャー)の札はあるが、
現在真紅が引き出しうるマナでは、これを召喚するには至らない。
(ならば――!)
真紅に残された選択は二つ。
選び取ったのは、この手法。
真紅は短い思考の末、たった今引き当てた一枚の札を、山のゲートの前に差し出す。
燃えるような赤のマナが、その札に秘められた術を一気に解きほぐし、力を引き出す。
「母なる大地の悲嘆の声よ、汝の愛でし天へと届け――。
大いなる天空の怒りよ、汝の愛でし地に仇なす不敬の輩に下りたまえ!
――《ショック》!!」
真紅の手元から消滅したその札は、たちまちにシャドウムーアの薄暮の空へと登り行く。
雲間に千切れ飛んだ輝く星は、臙脂色の雲の間に姿を消す。 - 28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:21:56.24 ID:LhNa5nEM0
- 刹那。
雷電が、水銀燈の体を突き抜ける。
雲間より迸った蒼白の閃光が、彼女の全身を駆け巡る。
「ぐぅぅぅぅぅぅっ!!」
雷電の巻き起こした砂煙の中で、水銀燈は苦痛の呻き声を必死で噛み殺した。
Shock / ショック (赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。ショックはそれに2点のダメージを与える。
「更に……!
《怒り狂うゴブリン》! 攻撃なのだわ!!」
《怒り狂うゴブリン》が、再度奇声を上げながら、水銀燈の懐へと潜り込もうとする。
水銀燈は全身を駆け抜ける雷撃がもたらした、鈍い痺れに耐えながら計算。 - 29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:25:02.96 ID:LhNa5nEM0
- (まだ、私は十分耐えられる――ならば!)
水銀燈は、あえてその《怒り狂うゴブリン》の振りかざした斧で、自らが唐竹割りにされるがままになる。
《怒り狂うゴブリン》の強烈な斬撃が、水銀燈を打ち据え若干服の裾を千切り取った。
彼は一撃を与えると、すかさず真紅の元へと再度駆け寄り、その体を休めることになる。
(今のところは私が優勢――けれども、まだ油断は出来ないのだわ)
ゴブリンの斧で二度切り裂かれ、更には雷で全身を焼かれた水銀燈。
ただの人間であれば、おそらく死を余裕で通り越して、
間違いなく惨殺死体になっているほどのダメージを受けても、水銀燈は未だ屈する様子はない。
プレインズウォーカーは魔術で自らの生命力を強化し、更に防護の結界を何重にも張っているのだから、
当然と言えば当然のことではあるのだが。
しかし神に次ぐ力を持つとされるプレインズウォーカーでも、所詮は限られた命を持つ存在。
耐えられるダメージには、必ず限界が来る。
その限界は、残念ながらまだ遠いことを、真紅は憎々しげな視線をぶつける水銀燈の様子から、静かに悟っていた。
Mercury Lampe's life: 19→16 - 30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:26:58.74 ID:LhNa5nEM0
- Turn 4
Active player : Mercury Lampe
水銀燈の支配する沼へのゲートが、大きく開く。
マナをそこから、再度引き出せるようになった証。
「ドロー!」
水銀燈は右手を上げる。
虚空に浮かんだ一枚の札が、彼女の手の中に矢のように飛来。
それを掴んだ水銀燈は、素早く手札(ハンド)に新たな札を加える。
「私は2つ目の『沼』をセット! そして――!」
水銀燈は先ほどと同じく、沼地の絵が描き込まれた一枚の札を掲げ、それを新たなゲートを開く鍵とする。
光が水銀燈の背後に集い、虚空を裂いて不浄の沼が宙に現出する。
水銀燈はその光景にいちいち目をくれることなく、もう一枚の札を抜き出す。
邪悪な意志を湛えた、無数の目玉が哀れな犠牲者を睨みつける、不気味な意匠の絵が描かれた、黒い札を。
「今のうちにこれを使わせてもらうわぁ。
――嘆き悶えよ、悔恨をその胸に秘めし罪科の子よ。
汝が咎、我が眼光の前に隠すあたわず!
《困窮》!!」 - 32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:28:36.76 ID:LhNa5nEM0
- Distress / 困窮 (黒)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは、自分の手札を公開する。あなたは、その中から土地でないカードを1枚選ぶ。そのプレイヤーは、そのカードを捨てる。
水銀燈が詠唱を終えた刹那、彼女の周囲から吹き上がる、漆黒の闇。
それはさながら生ける黒い舌のような、不気味な蠕動を見せながら、真紅の四方から一気に降り注ぐ。
「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
その闇の触手は、ぞぼりという湿った音を立てて、見事に突き立つ。
真紅の輝く、両の碧眼へと。
(……これで本当に目を抉り取れれば、最高に面白かったのにねぇ) - 33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:30:37.60 ID:LhNa5nEM0
- 考える水銀燈は、しかし苦しむ真紅の悲鳴に、いつまでも気を取られているわけにはいかないと思い直し、
真紅の眼球に突き立った非実体の触手から伝わる、その情報に意識を集中させる。
真紅が今持つ、四枚の手札(ハンド)の内容を知り尽くすために。
闇の触手がまさぐるのは、真紅の心。
触手は真紅の心の外殻を破り、真紅の考えを探査しているのだ。
これを超える上級の魔術であれば、真紅の心の深部までを探査し、深層思考までを完全に読み尽くすことも出来るが、
残念ながら《困窮》程度ではそれには及ばない。
結果として見ることが出来るのは真紅の表層思考……すなわち、今の手札(ハンド)の情報のみ。
それでも、この魔術は恐るべき力を持っていることに、変わりはないのだが。
(《放蕩紅蓮術師》、《火葬》、《山》……それから《猛火》、ね。
この場合ならどうにかしたいのは――)
水銀燈は、ちらと自らの手札(ハンド)を眺め、確認。それが終われば、にやりと微笑。
この手札(ハンド)ならば、より厄介なのはあちらの方だろう。
判断した水銀燈は、ばっと右手を突き出し、開いた手の平を空へと見せる。
「あなたの《火葬》、破壊させてもらうわぁ」 - 34 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:30:58.04 ID:7Ll0yAFS0
- つーかすごい本格的で素直に尊敬する
- 35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:32:04.64 ID:LhNa5nEM0
- Incinerate / 火葬 (1)(赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。火葬はそれに3点のダメージを与える。これによりダメージを与えられたクリーチャーは、このターン再生できない。
水銀燈は、手の平を一気に握り締めた。
闇の触手が、真紅の瞳から抜け去った。
代わって、真紅の左手へと、それらは襲いかかる。
真紅の悲鳴と共に、彼女の手札(ハンド)の一枚が砕けた。
「この序盤なら、まだ《猛火》はそこまで恐ろしくない――。
《放蕩紅蓮術師》は、たとえ召喚されたとしても、黒の魔導師である私なら、いくらでも対策は出来るわぁ」
真紅は荒い息を突きながら、たった今水銀燈の手により破壊されてしまった《火葬》を惜しむように、
その手札(ハンド)を眺めることになる。
真紅の手札(ハンド)は、今や三枚にまでその枚数を削られることとなった。 - 36 :4ターン目終了時盤面:2008/08/03(日) 21:33:24.16 ID:LhNa5nEM0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:16
手札枚数:5
沼×2
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │墓│
│ │ │地│
└─┘ └─┘×1
ただれたゴブリン
┌─┐
│ │
│ │
└─┘
┌─┐
│Τ│
│ │
└─┘
怒り狂うゴブリン
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│ │ │Τ│ │墓│
│ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘×2
山×1 山×1
手札枚数:3(《放蕩紅蓮術師》、《山》、《猛火》)
現在のライフ:20
プレイヤー名:真紅 - 38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:35:08.06 ID:LhNa5nEM0
- Turn 5
Active player : Reiner Rubin
真紅の所有する山のゲートが、大きく開かれる。
これで、赤のマナは遥かなドミナリアから、このシャドウムーアまで再度届くようになる。
それでも真紅は、安心を得ることは出来ずにいられたのだが。
「ドロー!」
新たな札を手札(ハンド)に加えつつ、真紅はこの状況の分析にかかる。
「三つ目……『山』をセットなのだわ!」
三つ目のゲートを開き、己の操りうるマナの量を増やした真紅は、思考することを止めはしない。
(水銀燈の手札破壊(ハンド・デストラクション)が、火を噴き始めたようなのだわ――!)
プレインズウォーカーにとって、手札(ハンド)はマナに勝るとも劣らぬ貴重な資源であることは、先述の通りである。
では、もしその手札(ハンド)を破壊されれば、プレインズウォーカーに待ち受けている運命は何か? - 39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:37:15.95 ID:LhNa5nEM0
- 言うまでもない。
羽をもぎ取られた羽虫のように、地面を這いつくばりながら一切の抵抗を許されず、
相手に嬲り殺しにされるという悲惨な結末である。
それを可能とするのが、水銀燈の得意とする黒の魔術。
黒の魔術は、真紅の操る赤の魔術と同じく、破壊を得意とする。
しかしその破壊は物理的なものではなく、精神と魂に及ぶ陰湿なものである、という注釈は付くのだが。
その精神と魂を破壊する魔術を、プレインズウォーカーに適用すれば、こうなる。
生来の強靭な精神を、自身の術で更に守ることの出来るプレインズウォーカーならば、
黒の魔術を一撃受けただけで、廃人と化すようなことはまずない。
しかしその代わり、彼ら彼女らの精神が攻撃を受ければ、その魔術を奪われる。
大魔術の基盤となる精神の力……時には自ら覚えた術の記憶を、一時的とは言え失えば、
プレインズウォーカーの知識の集大成とでも言うべき手札(ハンド)は、次々と破壊される。
こうして相手から一切の抵抗の余地を奪い去り、一方的に相手を攻め続けることを可能にする、
黒の魔導師のこの戦法は『手札破壊(ハンド・デストラクション)』と呼ばれ、
同族であるプレインズウォーカー達からも恐れ忌み嫌われている。
(けれども……落ち着いて対処すれば、どうということはないのだわ!)
真紅は、たった今引き当てたそのカードを、直ちにこの場で使うことを決意した。
即効性を求めるのならば、この場は《放蕩紅蓮術師》よりもこちらの方がよほどいいと、判断を下す。 - 41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:39:07.23 ID:LhNa5nEM0
- 手札破壊(ハンド・デストラクション)には、確かに相手の手札(ハンド)を破壊できるという強みはある。
だが、逆を言えば、そこが弱点になりうるとも言えるのだ。
もし、手札破壊(ハンド・デストラクション)という戦法を用いたとして、
相手の手札(ハンド)が空だったならどうなるか。
もちろん、破壊する手札(ハンド)がないなら、結局それは無意味に過ぎない。
ならば、引き当てた札を即座に用いて、破壊される前に役立ててしまえばいいのだ。
そして真紅の用いるこの知識の書(ライブラリー)は、焼滅(バーン)と呼ばれる戦法にのっとり設計されている。
引き当てた札を次々使うことを前提に設計された、この知識の書(ライブラリー)なら、
手札破壊(ハンド・デストラクション)が来ると分かれば、対処は容易。
「水銀燈……私がこのシャドウムーアの理法を学び、そして編み出したこの魔術、受けてみなさい!」
真紅の右手で、突き出された札がたちまち分解され、物理的存在から霊的存在へと変わり行く。
精神を集中する真紅は、その両腕を共に高々と天へと突き上げた。
「我が元に集え、霊なる熱よ――。
研ぎ澄まされし鋭利の紅炎、心の臓を食らわば待つは死!
毀れざる灼熱の魔槍、心の臓を食らわずとも構えるは滅!
焼き穿て! 《炎の投げ槍》!!」 - 44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:40:43.83 ID:LhNa5nEM0
- 真紅の周囲で、大気が震える。
その中から生み出されゆく、夜空にちりばめられた星のような、赤の光球。
真紅の掲げた両腕の中へ、それらは集結を始める。
数十数百の星々が、たった一つの渦巻く獄炎を形成したのは、それからわずか一瞬の未来のことだった。
Flame Javelin / 炎の投げ槍 (2/赤)(2/赤)(2/赤)
インスタント
((2/赤)は任意の2マナか(赤)で支払うことができる。このカードの点数で見たマナ・コストは6である。)
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。炎の投げ槍はそれに4点のダメージを与える。
「燃え尽きなさい! 水銀燈!!」
渦巻く獄炎を、水銀燈を睨みつけながら全身を用いて投擲する真紅。
投げ出された炎の大渦は、風を突き破りながらその形を徐々に成してゆく。
すなわち、燃え盛る投げ槍の形へと。
純粋な熱と炎から成るその槍は、狙いを誤ることなく水銀燈を強襲!
「ッ!!!」 - 46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:42:03.20 ID:LhNa5nEM0
- 水銀燈は、とっさに自らの前面に全ての結界を集中させるが、その頃には水銀燈の全身から、
恐怖と灼熱感で、どっと汗が噴出。
水銀燈の視界が真っ赤に染まり、その次の瞬間全身を凄まじい熱と爆風が舐め上げる。
「ぐぅぅぅあああっ!!」
大気ごと、水銀燈の全身は爆砕された。
《炎の投げ槍》が着弾した、水銀燈の周囲の地面は、余りの高熱で土が飴のように熔け硝子のようになっている。
そこに生えていた草木は言わずもがな――黒焦げを軽く通り越して、灰一粒残さず焼滅。
さすがのプレインズウォーカーでも、これほどの猛烈な爆炎に晒されれば、その体も無傷ではない。
水銀燈の服の裾は、その一部がすでに炭化し、ボロボロになっている箇所も珍しくはない。
水銀燈は思わずよろめき、地にその膝を着けそうになったが、それを辛うじてのところで堪えた。
どさくさに紛れ、爆風の残滓を切り裂いて躍りかかった《怒り狂うゴブリン》の攻撃は、
何とかダメージの軽い左手に再度結界を集中させて防ぐ。
それでも、ダメージの完全な減殺は望むべくもないのだが。 - 47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:43:18.53 ID:LhNa5nEM0
- 一方の真紅は、この強大な魔術の使用で、若干上がり気味になった息を整えながら、水銀燈に次を促す。
「さあ……次はあなたの番よ……水銀燈」
「いちいち小うるさいわね――お父様の下で学んでいたあの頃から変わらず!」
水銀燈は、並び方の整った白い歯を獣のように剥き、真紅に向かって吼えた。
Mercury Lampe's life: 16→11 - 49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:45:07.57 ID:LhNa5nEM0
- Turn 6
Active player : Mercury Lampe
「ドロー!」
水銀燈のかけ声と共に、ゲートが開き六枚目の札が水銀燈の右手へと収まった。
(こちらのダメージも決して軽くはないわね……けれども、そろそろ真紅もかなり息が上がっているわ!)
水銀燈は半ば無意識の内に沼の描かれた札を使用。真紅と同じく三つ目のゲートを開く。
彼女の口元が、濃厚な悪意を湛えていびつに歪む。
(真紅の手札(ハンド)はちょうど二枚! この術を使わない手はないわぁ!)
水銀燈は、全身の孔という孔から霊気を吹き出し、
今まさに廃人になろうとしている哀れな犠牲者を描いた、一枚の札を抜き出した。
その札は水銀燈の手を離れ、くるくると回りながら虚空をたゆたう。 - 50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:46:07.09 ID:LhNa5nEM0
- 「恐れよ、おののけ――愚昧なる者。
我は腐らしめる者なり――汝の魂を腐らしめる者なり!
《精神腐敗》!!」
Mind Rot / 精神腐敗 (2)(黒)
ソーサリー
プレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーはカードを2枚捨てる。
水銀燈がその右手を、たゆたう札に叩き付けた刹那、そこから闇が生まれた。
黒く不潔に濁った闇は、一条の闇の槍と化して真紅を襲う。
さならがそれは、真紅が先ほど放った《炎の投げ槍》の、意趣返しだと言わんばかりに。
「ああああぁぁぁぁっ!!!」
真紅の全身が、闇色の槍に犯し貫かれる。
真紅はその目から、まるで涙のように己の精気を吹き流し、肉体ではなく魂が訴える痛みに悶絶。
いかに彼女がプレインズウォーカーであるとは言え、これほどの揺さぶりを魂に受ければ、
その術式を支えることは出来ない。
真紅の体から粘りつく闇が払われたのと同時に、彼女の手札(ハンド)は失われる。
砕け散り、虚空に雲散霧消した《放蕩紅蓮術師》と《猛火》の術は、
彼女が休息を取り再度精神を回復させるまで、しばらく戻ってくることはあるまい。 - 51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:47:16.30 ID:LhNa5nEM0
- Prodigal Pyromancer / 放蕩紅蓮術士 (2)(赤)
クリーチャー / 人間(Human) ウィザード(Wizard)
(T):クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。放蕩紅蓮術士はそれに1点のダメージを与える。
1/1
Blaze / 猛火 (X)(赤)
ソーサリー
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。猛火はそれにX点のダメージを与える。
「フフ――無様ねぇ、真紅」
水銀燈は、真紅を嘲りながら言った。
「黒焦げになった……あなたほどでは!!」
真紅は、全ての手札(ハンド)を失いながら、その気迫は挫けてはいなかった。 - 52 :6ターン目終了時盤面:2008/08/03(日) 21:48:43.60 ID:LhNa5nEM0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:11
手札枚数:4
沼×3
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │墓│
│ │ │地│
└─┘ └─┘×2
ただれたゴブリン
┌─┐
│ │
│ │
└─┘
┌─┐
│Τ│
│ │
└─┘
怒り狂うゴブリン
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │墓│
│ │ │地│
└─┘ └─┘×5
山×3
手札枚数:0
現在のライフ:20
プレイヤー名:真紅 - 53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:50:12.29 ID:LhNa5nEM0
- Turn 7
Active player : Reiner Rubin
今開かれた三つのゲートを前にしても、真紅は自らに機が巡ってきたとは考えにくくなっていた。
(次に何が来るか――それが問題なのだわ)
「ドロー!」
真紅は、汗が滲み始めた手の平で、虚空を切り裂き飛ぶその新たな札を掴み取る。
その肝心の内容が問題となってくるのだが――。
(ありがたい! いいタイミングなのだわ!!)
シャドウムーアの神が彼女に味方したのか、それとも別の理由があるのか。
それは、真紅が待ち望んでいた布石の一つ。
この札は、真紅のような焼滅(バーン)戦法を得意とするプレインズウォーカーなら、
おそらくは大抵の者が用いているであろう。
真紅はその札に――今やたった一枚にまで減ったその札に、臆することなく魔力を注ぎ込む。
彼女の口から、朗々たる詠唱の言葉が流れ落ち、札には赤のマナが次々流れ込む。 - 54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:51:06.55 ID:LhNa5nEM0
- 「大地に刻まれし始原の時より、汝の雄叫び止むことなし――。
我は求めん、汝の咆哮に秘められし秘儀を!
《吠えたける鉱山》!!」
Howling Mine / 吠えたける鉱山 (2)
アーティファクト
各プレイヤーのドロー・ステップの開始時に、吠えたける鉱山がアンタップ状態である場合、そのプレイヤーはカードを1枚引く。
《吠えたける鉱山》の札は、シャドウムーアの夜空に散った。
今度散った星々は、わざわざ天にまで昇ることなく、地面すれすれを舞いながら、その一点に降りゆく。
水銀燈の立つ位置が北、真紅の立つ位置が南ならば、これらの星が舞い降りたのは東の方。
地面に光が消え去り、一瞬の間をもってして、大地が鳴動を始める。
地面に生えた枯葉色の草々を突き破り、乾き切った土の層を割り裂き、それはこのシャドウムーアに顕現する。
苦悶しているようにも、歓喜に震えているようにも見える、鬼面の洞窟。
その名に違わぬ雷のような吠え声を轟かせ、今にも動き出しそうなその洞窟は、
地面の鳴動の終息と共に、一旦は沈黙する。
この地に降り立った2人の戦いの行く末を、何があろうとも見届けようとせんとでも、考えているかのように。
「――これで、私の手番は終了よ」
水銀燈は、突如として生まれ出でたこの鉱山を見て、その表情は変化してゆく。
最初は驚愕、そして次はほくそ笑み。
「あらまあ、随分と素敵な贈り物ねぇ。感謝するわぁ」
水銀燈のその言葉には、皮肉な響きはまるで聞き取ることなど出来なかった。 - 55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:52:04.93 ID:LhNa5nEM0
- Turn 8
Active player : Mercury Lampe
水銀燈の操る、三つのゲートが開かれる。
真紅が現在開いた、マナ供給のための三つのゲートは一つを残し、すぼまっている。
現在のところ、互いに使えるゲートの数は同数。
だが、彼我のゲートの持ち数の差は、この手番で一つ開く。
水銀燈は自身の手札(ハンド)を見ながら、それを確信した。
「さあ、お待ちかねのドローの時間よぉ」
水銀燈は、右手を天高く差し出した。
真紅の展開した《吠えたける鉱山》が、それに呼応して雄叫びを上げる。
この雄叫びは、何の知識も持たない人間にしてみればただの恐ろしい吠え声にしか聞こえまい。
だが、プレインズウォーカーにとっては違う。
この雄叫びがもたらすものは、新たなる知識。知識に至るための、その道筋。
水銀燈の周囲を取り囲む、彼女自身の知識の書(ライブラリー)の断片が、その細い指先に飛び込む。
それも、二枚。
「真紅ぅ、本当にあなた、《吠えたける鉱山》なんて使っても良かったのかしらねぇ?」 - 56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:53:05.98 ID:LhNa5nEM0
- 今や六枚にまで再度膨れ上がる、水銀燈の手札(ハンド)。
《吠えたける鉱山》とは、その独特な構造により、プレインズウォーカーの操るマナの律動に反応し、
先ほどのように奇怪な咆哮を上げる、不可思議な鉱山である。
この咆哮を聞いたプレインズウォーカーは、知識の書(ライブラリー)から一度に二つの札を引けるようになるのだ。
(けれども、その雄叫びの対称は敵味方無差別――。こちらも一度に、二枚の札を引けるのはありがたいわぁ)
水銀燈が《吠えたける鉱山》の現出を見て、ほくそ笑みを浮かべた理由はそれ。
この《吠えたける鉱山》の唯一の欠点は、
その吠え声を、その場で戦う全てのプレインズウォーカーにもたらしてしまう点である。
すなわち、真紅の《吠えたける鉱山》は、自身もむろんのことだが、水銀燈にも一度に二枚の札の入手を許してしまう。
この工芸品(アーティファクト)は、使い方を誤れば敵を利する事にもなりかねない、諸刃の剣なのだ。
(さて、真紅が態勢を整え終える前に――こちらも行くわよぉ!)
水銀燈は、手札(ハンド)に控えていた一枚の札を後方に送る。
これで、開かれた沼のゲートは四つ。絶対数で言えば、真紅に一歩先んじた。
「そして――私はこの子を召喚させてもらうわぁ!」
水銀燈が抜き出した札に、三つのゲートから黒のマナが一気に流れ込み、その内に秘められた魔物を喚起する。
地面から這いずり出んとしている、得体の知れない存在が、この札によってシャドウムーアに召喚されるのだ。 - 59 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:54:32.45 ID:LhNa5nEM0
- 「汝が目覚めの時は今なり――。
長き眠りより目覚める悪夢よ――汝を苛むその餓え、癒すは我と我が英知!
《隠された恐怖》!!」
Hidden Horror / 隠された恐怖 (1)(黒)(黒)
クリーチャー / ホラー(Horror)
隠された恐怖が場に出たとき、あなたがクリーチャー・カードを1枚捨てない限り、隠された恐怖を生け贄に捧げる。
4/4
暗黒の光が、地面へと突き立った。
突き立った暗黒の光は、大地の下へと消えたかと思いきや、次の瞬間一気に吹き上がる。
この荒野の表面が、まるで切り取られたパイのようにあっけなく引き裂かれ、持ち上がった。
その下に巣食っていたのは、黒い体表を持つおぞましい存在だった。
そのおぞましい存在は、猛烈な飢えにその身を悶えさせながら、両の眼光で辺りを照らす。
水銀燈は、空を切り裂きながら一枚の札を手札(ハンド)より抜き出し、召喚された彼に語りかける。 - 60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:56:16.19 ID:LhNa5nEM0
- 「さあ、私のこの術をお食べ。美味しい事は保証するわぁ」
水銀燈はその一枚の札を、《隠された恐怖》の口元に向けて投げつけた。
その背に岩盤を負う《隠された恐怖》の、怪物じみた巨躯に見合った巨大な口が、水銀燈の札にぞろりと牙を剥く。
《隠された恐怖》の牙が、水銀燈の札を噛み砕いたのは次の瞬間だった。
噛み砕かれた水銀燈の札は、やがて純粋な術式に還元され、《隠された恐怖》の全身に行き渡る。
《隠された恐怖》は、自らの飢えがそれである程度癒せたことに、歓喜を覚えて総身を震わせる。
その背中から、崩れ落ちた岩盤の破片がいくつも地面へと落ち、突き刺さる。
「……自らの札を、あの被造物(クリーチャー)に!?」
真紅は、とても自分なら選びはしないであろう手を選び取った水銀燈を前に、愕然と叫ぶ。
対する水銀燈は、そんな真紅に淡々と応答するばかり。
「そうよぉ。この子はね、いつもお腹を空かせているから、私がマナを用いて召喚した後に、
被造物(クリーチャー)の札を一枚食べさせてあげないと、働いてくれない子なのよぉ。
――けれども、私があえてこの子に札を食べさせた意味、あなたもすぐに分かるはずだわぁ。
何せ、私がこうして墓所(グレイヴヤード)に送った札は――」 - 61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 21:57:36.74 ID:LhNa5nEM0
- Demigod of Revenge / 復讐の亜神 (黒/赤)(黒/赤)(黒/赤)(黒/赤)(黒/赤)
クリーチャー / スピリット(Spirit) アバター(Avatar)
飛行、速攻
あなたが復讐の亜神をプレイしたとき、あなたの墓地にある名前が《復讐の亜神》であるすべてのカードを場に戻す。
5/4
「!!」
どぐん。
心臓が、辺りを走り抜けた戦慄ゆえに、跳ね上がる。
真紅は、《隠された恐怖》の背後に、一瞬限り虚像を見た。
幻覚ではない。
プレインズウォーカーほどの魔術の使い手ならば、生半可な幻術で五感をだまされる事など、まずありえない。
何か、巨大な存在。
このシャドウムーアという世界に存在する被造物(クリーチャー)達の中でも、
他の有象無象どもと一線を画す、超越者。
真紅の頬に、不快な汗が一滴伝う。
(水銀燈は、すでにこれほどまでに強大な存在との契約すら終えたというの――!?)
「真紅。私は予言するわ。――あなたの命は、あと三手で尽きる、と」
水銀燈の遣わした《ただれたゴブリン》が、その身から腐肉をこぼしながら嗤う。
《隠された恐怖》が、残虐な吠え声を上げながら真紅を睨みつける。
「それまで、恐怖におののきながら、あなたの手番を進めるといいわぁ」 - 62 :8ターン目終了時盤面:2008/08/03(日) 21:59:08.85 ID:LhNa5nEM0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:11
手札枚数:3
沼×1 沼×3
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│ │ │Τ│ │墓│
│ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘×3
ただれたゴブリン 隠された恐怖
┌─┐ ┌─┐
│ │ │ │
│ │ │ │
└─┘ └─┘
┌─┐
│ │
│ │
└─┘
怒り狂うゴブリン
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│ │ │Τ│ │ │ │墓│
│ │ │ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘ └─┘×5
山×1 山×2 吠えたける鉱山
手札枚数:0
現在のライフ:20
プレイヤー名:真紅 - 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:00:30.38 ID:LhNa5nEM0
- Turn 9
Active player : Reiner Rubin
マナを注ぎ込むのに使った二つのゲートが力を取り戻す。
その横から、《吠えたける鉱山》の雄叫びが轟く。
今度こそ、《吠えたける鉱山》は己の本来の使い手に対し利をもたらした。
「ドロー!」
真紅が一度に二枚の札を手にしたのを見れば、それが誰にでも分かろう。
真紅は半ば祈るような気持ちで、二枚にまで持ち直した己の手札(ハンド)を眺める。
こうして今、引き当てたものは――。
(!!)
真紅は、その内の一枚を見た瞬間に、己の脳裏で一筋の稲妻が走ったような錯覚に捕らわれる。
今自身には《吠えたける鉱山》という追い風が吹いている。
だがその追い風は水銀燈にも同じく吹いていることを考えれば、
時間が経てば水銀燈の手札破壊(ハンド・デストラクション)も再度襲い掛かってこよう。
ならば、今用いるのはこちらをおいて、ありえない。
真紅はその背に開いた三つのゲート、全てからマナを引き出しその札を天に掲げる。
大気が震え、熱を帯びながら、真紅の英知を刻み込んだその札は純粋な魔術に還元され、力を放つ。 - 64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:02:04.30 ID:LhNa5nEM0
- 「不動にして泰然たる大地よ――。
汝の臓腑に流るる炎、激震の波動を成して我が敵を圧砕せよ!
轟け! 《突撃の地鳴り》!!」
Seismic Assault / 突撃の地鳴り (赤)(赤)(赤)
エンチャント
土地カードを1枚捨てる:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。突撃の地鳴りはそれに2点のダメージを与える。
真紅と水銀燈が立ち、こうして魔術を交えるこの平原に、赤い星々が突き立つ。
大地が、揺れる。
この枯れ草に覆われた荒野では一見しただけでは分からないが、
その下には今や幾筋ものひび割れが縦横無尽に走り抜けていよう。
そこかしこを走り抜ける、地面の粉砕音がそれを証明している。
真紅の立つ地面を中心にして走り出した粉砕音はやがて四方八方に散り――。
そして、止んだ。 - 65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:03:10.25 ID:LhNa5nEM0
- 「――これで、私の手番は終了なのだわ」
真紅の発した、その声。
水銀燈は、ただ哄笑を返した。
「何をするかと思えば、そんなちゃちなこけおどし? 随分と苦しい真似をしてくれるわねぇ」
この一帯を走り抜けた大地のひび割れは、水銀燈どころかその配下の被造物(クリーチャー)にすら、
僅かの傷も着けていない。
水銀燈は、相変わらずその哄笑を抑えぬまま、真紅に宣告。
「さあ、これであなたに残されたのは、あと二手よぉ」 - 66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:04:10.46 ID:LhNa5nEM0
- Turn 10
Active player : Mercury Lampe
水銀燈の所有する沼へと通じるゲートが、大きく開かれる。
それはさながら、己の獲物を見つけた歓喜を露に見開かれる、邪神の瞳に見えなくもない。
「ドロー! ――もちろん、二枚ねぇ」
《吠えたける鉱山》の雄叫びを聞きながら、水銀燈は右手に飛び込んで来た二枚の札の手応えを確かめる。
真紅の手にした、《吠えたける鉱山》という名の諸刃の剣は、こうして再び彼女を利する事になったのだ。
水銀燈はその中から一枚の札を――言うまでもなく沼の描かれた札を、後方に向けて投げかける。
その札は空中で黒の光に変化し、やがてはそれが彼女の支配する五つ目のゲートを編み上げる。
「さあ、真紅……あなたに絶望を教えてあげるわ――この札でねぇ」
水銀燈の手の中で、一枚の札が鳴る。
薄暮の空を背後に佇む偉大なる存在に、導きを求めんとして天を仰ぐ、一人のか弱き存在。
その札に書き込まれた絵は、水銀燈の背後のゲートから流れ込む、三筋の黒い光に包まれ、ほぐれ、消え去る。 - 67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:05:13.85 ID:LhNa5nEM0
- 「真紅ぅ、このシャドウムーアで私が手に入れた黒の魔術……ご覧に入れるわぁ。
――日の光なき無明の大地を統べる、偉大なる妖精の王妃よ――。
汝の慧眼と英知もて、真闇の迷宮をさすらう我を導きたまえ!
《女王への懇願》!!」
Beseech the Queen / 女王への懇願 (2/黒)(2/黒)(2/黒)
ソーサリー
((2/黒)は任意の2マナか(黒)で支払うことができる。このカードの点数で見たマナ・コストは6である。)
あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがあなたがコントロールする土地の数以下であるカードを1枚探し、それを公開しあなたの手札に加える。その後、あなたのライブラリーを切り直す。
闇色に溶け消えた、水銀燈の札。
札が消え去ってもなお、そこに漂うはひと塊の暗黒。
ひと塊の暗黒は、その身から幾筋もの闇色の煙を噴き上げ、徐々に縮こまる。
水銀燈の生み出したこの闇は、やがてこの薄暮の世界の虚空に溶けゆき――。
最後に残ったのは、もう一枚の札。 - 68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:06:05.02 ID:LhNa5nEM0
- Demigod of Revenge / 復讐の亜神 (黒/赤)(黒/赤)(黒/赤)(黒/赤)(黒/赤)
クリーチャー / スピリット(Spirit) アバター(Avatar)
飛行、速攻
あなたが復讐の亜神をプレイしたとき、あなたの墓地にある名前が《復讐の亜神》であるすべてのカードを場に戻す。
5/4
「!!」
真紅は、その札を見た瞬間、驚愕の余りに目を剥く。
水銀燈は、高々とこの平原に笑い声を響かせる。
「私の言った言葉の意味、これで分かったかしらぁ、真紅ぅ?」
「そんな……!? それは、さっき《隠された恐怖》の背後に見えた、あの幻影と同じ――!」
真紅の臓腑が、ぞっと冷える。
更に粘度の高まった、不愉快極まりない汗がその背から染み出る。
水銀燈の笑い声は、止むことを知らない。
彼女は虚空から生み出された――正しくは、先ほどの術で自らの知識の書(ライブラリー)から引き寄せた、
その札を自らの手札(ハンド)に差した。
代わって、もう一枚の札が彼女の手札(ハンド)から引き上げられる。
水銀燈の朗々たる、そして禍々しい詠唱の声が、この荒野に伝播する。 - 69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:07:46.56 ID:LhNa5nEM0
- 「私の攻め手はこれで終わりじゃないわぁ、真紅ぅ」
水銀燈は、残る二つの沼のゲートから、マナを引き出し注ぎ込む。
「汚濁せし闇の魔手をして、そを切り断たん――。
漆黒の痛苦よ、不壊の絆を損壊せしめよ――!
《汚染された結合》!!」
Contaminated Bond / 汚染された結合 (1)(黒)
エンチャント / オーラ(Aura)
エンチャント(クリーチャー)
エンチャントされているクリーチャーが攻撃かブロックに参加するたび、それのコントローラーは3点のライフを失う。
水銀燈の抜き出した札が、どろりとした闇を吐き出した。
数十数百の矢と化した黒色が、雨あられと突き立つ。
真紅の操る、《怒り狂うゴブリン》に。 - 70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:09:15.20 ID:LhNa5nEM0
- 「!!」
そして、《怒り狂うゴブリン》を貫いた闇の雨は、その勢いを保ったまま真紅自身にも降り注ぐ。
肉体ではなく魂の訴える痛覚に、真紅はその整った眉を歪めた。
真紅が次に意識を確かにしてから、初めて見たもの――それは。
「――これは一体!?」
自身の衣服を傷付けることなく、隆起に乏しい胸の間に突き立った、一本の闇の触手。
それは同じく苦痛に顔を歪める《怒り狂うゴブリン》の胸から、伸びている。
「《汚染された結合》――。
あなたのその自慢の被造物(クリーチャー)が、あなたを守ったり私を攻めたりすれば、
ちょっとしたお楽しみが待ってるわぁ」
「く……!」
真紅は水銀燈の放ったこの魔術の意味を、嫌でも悟らされる羽目になる。
この状態で《怒り狂うゴブリン》を動かせば、それに反応してこの触手が魂を直接握り潰しに来る。
すなわち、水銀燈は真紅に二者択一を迫ったのだ。 - 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:10:07.14 ID:LhNa5nEM0
- 「さあ、そろそろこちらも攻めさせてもらうわぁ」
水銀燈は、自らの操る被造物(クリーチャー)に、高らかに指令を下す。
「《ただれたゴブリン》! 《隠された恐怖》! 真紅を攻撃なさぁい!!」
真紅に迫る二者択一。
それは《怒り狂うゴブリン》を動かし、《汚染された結合》で自らの魂をすり潰されるか。
はたまた自身のの被造物(クリーチャー)を盾とせず、
水銀燈の被造物(クリーチャー)の凶手に自らかかりに行くか。
真紅は一瞬間のみ逡巡。
そして選び取る。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!!」 - 72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:11:08.40 ID:LhNa5nEM0
- 闇の触手が、真紅の魂を直接まさぐる。握り潰す。
《怒り狂うゴブリン》が、その小さな体で《隠された恐怖》の巨躯を止めたことで。
《怒り狂うゴブリン》はその斧で必死に切りかかる。
だが、人間の頭程度なら軽々かち割れるであろう斧も、《隠された恐怖》の巨大な体にはかすり傷を付けるのが限界。
《怒り狂うゴブリン》が、《隠された恐怖》の振り下ろした手の平の下敷きになったのは、その次の瞬間だった。
《汚染された結合》の与えた苦痛ゆえに吐血する真紅に、更に追い討ちをかけるは《ただれたゴブリン》。
《怒り狂うゴブリン》一体では、水銀燈の被造物(クリーチャー)二体を止め切る事はできない。
《ただれたゴブリン》の不浄な爪が、真紅の左腕をかき切った。
もし真紅が並みの人間であれば、この瞬間、全身に致命的な疫病を貰い受ける羽目になっていただろう。
「もし降伏(サレンダー)するつもりがあるなら、今のうちがチャンスよぉ、真紅ぅ?」
真紅への攻撃を果たした、被造物(クリーチャー)の仕事ぶりに満足しながら、水銀燈は嗜虐的に言い放つ。
肩で息をする真紅の胸に、闇の触手はもう残されてはいなかった。
Reiner Rubin's life: 20→16 - 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:17:29.81 ID:Dgr8ihIV0
- 重度のローゼンファンにして、MTGプレイヤーの俺でもこの発想はなかった
- 75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:20:40.29 ID:7Ll0yAFS0
- MTGはメルカディアンくらいの世代だから新しいカードがわからんけど
懐かしいのも多くてすごい楽しい
何よりカードの解説が随所にあるから読み易すぎる - 87 :10ターン目終了時盤面:2008/08/03(日) 22:36:39.04 ID:LhNa5nEM0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:11
手札枚数:4
沼×5
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │墓│
│ │ │地│
└─┘ └─┘×4
ただれたゴブリン 隠された恐怖
┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │Τ│
│ │ │ │
└─┘ └─┘
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │ │ │ │ │墓│
│ │ │ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘ └─┘×6
山×3 突撃の地鳴り 吠えたける鉱山
手札枚数:1
現在のライフ:16
プレイヤー名:真紅 - 89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:39:06.56 ID:LhNa5nEM0
- Turn 11
Active player : Reiner Rubin
真紅は口元から吹き出した血を拭いながら、再度立ち上がった。
真紅の背後で三つのゲートが開くも、数では二つ水銀燈に負ける。
すなわち、一度に扱いうる魔力の総量では、未だ水銀燈に分が残る。
(そろそろこちらも――色々な意味で『山』を引き当てたいのだわ!)
真紅は祈り、《吠えたける鉱山》の雄叫びを聞きながら、空中より飛来した二枚の札を受け止める。
真紅は、意を決してその二枚を見た。
一枚は、《火葬》。
そしてもう一枚は――。
「――――」
真紅は、そのまま口を噤む。
この三枚の手札(ハンド)から、勝負の行く末を占う。
沈黙が、この平原を支配した。
「あらあら、随分とお困りのようねぇ、真紅ぅ?」 - 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:41:37.60 ID:LhNa5nEM0
- その愛らしい唇を真一文字に結ぶ真紅に、水銀燈は嘲りの声をぶつけた。
水銀燈の嘲弄に唱和するかのように、彼女の操る《ただれたゴブリン》と《隠された恐怖》は唸り声を上げる。
固まり切った真紅のその表情から、水銀燈はその感情を見出した。
恐怖。
この窮地を前に、万策尽きようとしているという事実が、真紅ににじり寄っている。
それが、真紅から表情を奪い去っているように、水銀燈には感じられた。
「早く次の手を決めてくれないかしらぁ? 私はノロマが嫌いなの、あなたも知って――」
水銀燈の言葉は、そこで強引に断ち切られた。
真紅の見せた、その動きにより。
真紅は手札(ハンド)から抜き出した山の札を――すなわちこの手番で引き当てたもう一枚のカードを後方に送る。
「――四つ目の『山』をセットするのだわ」
真紅の背後で、四つ目の山のゲートが開放される。
これで、真紅の持つ土地へのゲートは、水銀燈の一つ下にまで、追いつくことになる。
水銀燈は、真紅の選び取ったその手法に、笑いを堪える事は出来なかった。
「せっかく引き当てた『山』を、そのままセットするわけぇ……?
せっかくあなたが付帯(エンチャント)した、《突撃の地鳴り》が泣いているわよぉ?」 - 92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:44:25.84 ID:LhNa5nEM0
- そう、それは明らかな下策。
真紅が先ほどこの場に付帯(エンチャント)した魔術、《突撃の地鳴り》は、
《ショック》や《炎の投げ槍》などと違い、一度限りの使い捨てではない。
何らかの特殊な術で解除されない限り、決闘(デュエル)の間、永遠に残り続ける。
そして《突撃の地鳴り》が付帯(エンチャント)されている限り、真紅にはある特殊な戦法が許される。
すなわち、土地の描かれた札に刻み込まれた、ゲートを作り出す術式を改変し、
直接的な破壊の力を持つ攻撃魔術に変換する、という戦法を。
その破壊力は、真紅が水銀燈に見舞った《ショック》の威力に匹敵しよう。
しかし真紅はそれを放棄して、あえて引き当てた山の札で、マナを得るためのゲートを開いたのだ。
この一手を選択した真紅は、顔の右半分にもう一枚の札をかざしながら、反駁。
「問題ないわ――水銀燈。あなたに今撃ち込むのは、こちらの方がふさわしいのだわ」
真紅は親指・人差し指・中指を弾きながら、器用にその札をひっくり返す。
真紅が握り締めていたのは、《火葬》。
先ほど水銀燈が破壊したものとは別の、もう一枚の札。 - 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:46:04.63 ID:LhNa5nEM0
- 「万物に潜める熱素をして、その身を灰燼に帰さしめん――。
内なる炎より開きし灼熱の華よ――臓を舐め、腑を食らい尽くせ!
《火葬》!!」
Incinerate / 火葬 (1)(赤)
インスタント
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。火葬はそれに3点のダメージを与える。これによりダメージを与えられたクリーチャーは、このターン再生できない。
《火葬》の札が、純粋な赤の中に溶けゆく。
水銀燈は、次の瞬間に自らの身を襲った異常に気付く羽目になる。
体内から、一気に熱がせり上がり――! - 95 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:48:05.35 ID:LhNa5nEM0
- 「ああああああっ!!!」
水銀燈は火の息を吐いた。
だがそれは、かの強壮無比の生物、ドラゴンの吐くブレスなどとは明らかに一線を画した別物。
口からだけではない。
水銀燈は鼻からも耳からも目からも、全身の孔という孔から炎を吹き出した。
真紅が放った炎は、標的である水銀燈の体内から吹き上がったのだ。
もしこれと同じものを常人が受けていれば、彼または彼女は自らが死んだと気付くことなく、
久遠の闇に帰する羽目になるだろう。
水銀燈がこれを受けた次の瞬間、うず高く積もった灰の山にならなかったのは、
ひとえにプレインズウォーカーとしての能力の賜物である。
自らの内臓を直接焼かれる苦痛に悲鳴を上げながら、水銀燈は真紅を睨み付けた。
「このくたばりぞこない――! 往生際の悪いッ!!」
吐き捨てた水銀燈の赤い瞳に映るのは、ただ真紅の固い表情のみだった。
Mercury Lampe's life: 11→8 - 97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:50:26.19 ID:LhNa5nEM0
- Turn 12
Active player : Mercury Lampe
水銀燈の背後で、五つの沼が妖しげにぎらついた。
真紅の《火葬》でその臓腑を焼かれた苦痛をこらえながら、水銀燈は朗々と宣言する。
「ドロー!」
その声を、《吠えたける鉱山》の雄叫びも応援しているかのように、彼女は感じた。
この手の内に、真紅を打ち破る手段はすべて揃っている。
ここにあと二枚の札も合わされれば、なおのこと真紅に負けねばならない理由は、どこにもない。
水銀燈は、その内の一枚を後方に送り、これで六つの沼のゲートを開いたことになる。
「さあ――とうとうお待ちかねの時間よぉ」
水銀燈がその次に手札(ハンド)から抜き放った札は、すでに何であるかは言うまでもあるまい。
水銀燈が二本の指でつまむその札のために、背後のゲートから禍々しい黒のマナが零れ落ちる。
一筋、二筋、三筋、四筋、そして五筋。
五つもの土地から同時にマナを引き出さねば、この恐るべき召喚の術は果たしえない。
薄暮の空が、そこに残っていた僅かの光すらも残さぬとばかりに、たちまち明度を落としゆく。
まるで生き血のように生温く粘ついた風が、この平原に渦巻き、震える。
暗黒の稲妻が水銀燈の持つ札の周囲で弾け散り、物質的存在から形而上的存在へと変化する。
辺りはすでに、完全な闇夜も同然の、濃密過ぎる無明の帳に閉ざされていた。 - 99 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:52:37.31 ID:LhNa5nEM0
- 「陽光の監獄は、今まさに砕けり――。
光を失いし大地は、今まさに汝の暴政を求めり――」
天が割れているのか。
地が裂けているのか。
真紅は、そのどちらが正しいのかも、すでにあやふやとなりつつある。
「冥界より暗き汝の憎悪を――!
大地の胎より熱き汝の憤怒を――!
その背徳の翼と炎熱の血潮もて、無明の世に刻み付けよ!
始原にして終焉――悲嘆の輪廻を編み上げ、万象に滅びをもたらす恐慌の神よ! 顕現の時は訪れん!」
水銀燈が解き放った札は、すでに溢れ返らんばかりの魔力の奔流に耐え切れず、よじれ、黒煙を吹き、ひしゃげる。
最後に訪れたのは、四方八方に広がる暗赤色の稲妻。
それが蜘蛛の巣のように辺りに拡散し、札はその形を失った。
「来たれ! 影差す荒れ野に潜みし、怨讐の化身よ!! 汝が名は――《復讐の亜神》!!!」
大地の奥底で、闇が沸騰した。
水銀燈の立つ目前の地面に、一気にひび割れが走り抜ける。
草々はそのひび割れより吹き上がった瘴気で、たちまちのうちに枯れ果て、腐敗し、
あるものはその形質を支えきれずに霊的な炎に呑まれ消え去る。
岩盤そのものが間欠泉と化した。
真紅がそんな錯覚を覚えるほどに、岩盤は空高くにまで吹き上がる。
その下から這いずり出てきた、二対四本の暗黒の拳が、岩盤を突き上げながら地面の縁にかかる。
そう、一対二本ではなく「二対四本」の、拳が。
真紅は、その意味をたちどころに知ることとなる。 - 102 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:54:46.80 ID:LhNa5nEM0
- 「――まさか!? 一度の召喚で一気に二体の被造物(クリーチャー)を!?」
一瞬、四本の手を持つ被造物(クリーチャー)がこの場に召喚されたのだと、真紅は信じたかった。
だが、真紅の内なる『灯』は、一瞬にして彼女自身の期待が余りに浅はかであることを告げる。
強大な黒のマナの塊は、地面に下に二つ。
それが意味するものは、二体の被造物(クリーチャー)の同時召喚。
「厳密に言えば若干違うわねぇ」
巻き起こった土煙のベールの向こう側から、水銀燈は語りかける。
宙から降り注ぐ無数の岩石が、やかましく地面を叩き続けているのに、その声だけは何故か鮮烈に響く。
「この子はねぇ――たとえ一度肉体を失ったとしても、自らと同じ眷属の者が召喚を受ければ、
それに応じて復讐心をたぎらせ、何度でも蘇ってくるのよぉ。
だから、一度の召喚で、二体以上この子達を呼び出すことは、そうそう難しいことではないわぁ」
「だからあなたはさっき、わざと《隠された恐怖》にあの札を食べさせたのね――!」
「そうよぉ、ご明察。
あの一枚の札をわざと墓所(グレイヴヤード)に落としたのは、この子を一気に二体召喚するための布石ってわけ」
《隠された恐怖》の巨体すら、その下に収めてしまうのではないかと思えるほどの巨翼。
二対の黒い翼が大気を強打し、大地より吹き上がった土煙のベールを剥ぎ取る。
殺意という概念がそのまま声になったかのような、凄絶な咆哮が周囲に響き渡った。
「…………!」
真紅は、全身が氷漬けにでもなったかのように、その身を硬直させる。
いかにこの多元世界において、神に次ぐ実力者とすら言われるプレインズウォーカーでも、
人間として覚える、本能的な恐怖を完全に喪失したわけではない。 - 103 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 22:58:07.29 ID:LhNa5nEM0
- 「これが――《復讐の亜神》!?」
《隠された恐怖》をも超えるほどの、巨大な体。
闇そのものが形を成し、魔神の姿をとったかのような全身のところどころからは、
赫々たる赤光が血管のように網状をなし、燃える。
大地を割り裂いて、天を覆いつくさんばかりに広がった背の翼は、一打ちで暴風を呼びうるだろう。
口以外の器官が存在しない、のっぺりとした頭部――その側面からは悪魔じみた一対の角が生え、
頭頂部から突き出た八本の突起は、さながら黒曜石で作り上げた暴君の冠。
その冠から垂れ下がる鎖は、彼が身動きするたびに互いにこすれあい、耳障りな金属音を撒き散らす。
巨人のそれを凌駕することはあろうとも、劣ることはまずないであろう巨大な肉体は、
それ自体が一つの凶器と捉えても差し支えはない。
「水銀燈……あなたはこんな恐ろしい存在を解き放ったと言うの!?」
非難の声を上げる真紅に対し、水銀燈は何を今更、と言わんばかりの辛辣な言葉を返す。
二体の《復讐の亜神》が仁王立ちする、その背後から。
「別に解き放ったのは私ではないわぁ。
私がこのシャドウムーアにやってきた時、この子達はすでに目覚めていた――。
そこで私はこの子達と戦い、そして契約を交わしたのよぉ」
「何故、あなたは再度の封印を施さなかったの!?
私達プレインズウォーカーの魔力をもってすれば、再封印を施すのは難しくはないはずだわ!
こんな恐ろしい存在を蘇らせたままにしておくなんて、それこそシャドウムーアの――!!」
「あら? この子達はシャドウムーアの摂理にのっとって、勝手に復活しただけじゃないのぉ?
可能な限りこの次元の摂理には干渉すべきではない、だとか言っていたおばかさんは、どこの誰かしらぁ?」
「それは……!!」 - 105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:00:18.78 ID:LhNa5nEM0
- 真紅は一つ、奥歯を鳴らす。
「私はそこに現れた、善意の第三者よぉ。むしろシャドウムーアの秩序をどうこう言う気なら、
この子達に首輪を着けて大人しくさせた私は、感謝されても非難される覚えはないわねぇ」
水銀燈は魔力を編み、背に鴉のそれを思わせる黒翼を生み出し、羽ばたいた。
彼女が向かった先は、《復讐の亜神》の片割れの、その右肩。
水銀燈は、爪先から《復讐の亜神》の右肩に着地。
一応《復讐の亜神》の体は肉で出来てはいるらしく、彼女のブーツがくぐもって鳴る。
「そもそも私達プレインズウォーカーは、独立独歩、自主自立を旨として生きている。
……いえ、むしろこれほどの強大な力を持っているのなら、
その力を使って好き勝手に生きて、何が悪いのかしら?
私はこの子達を従えて、より強大な力を手に入れ、より自由に生きる――」
「そんな考えをプレインズウォーカーが持てば、何が起こるかはあなたも教わったはずでしょう?」
真紅は、《復讐の亜神》の片割れに飛び乗った水銀燈を見上げ、語る。
「かの伝説のプレインズウォーカー、ウルザとミシュラの兄弟戦争。
それに続く、ドミナリアを襲った氷河期。
それ以降もプレインズウォーカーが思慮なく魔術を操り続けたせいで、この多元世界の存在そのものが、
危うくなったときすらもあった――。
あなたはそんな危機を、もう一度このシャドウムーアならず、
ドミニアに属する全ての次元にもたらしたいと言うの?
それが、私達の内なる『灯』を見出し、プレインズウォーカーとしての導きを与えて下さったお父様……
熟練のプレインズウォーカーである、ローゼンの望みだと言うの?」 - 107 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:02:28.19 ID:LhNa5nEM0
- 「けれども、お父様は同時に、私達がより優れたプレインズウォーカーとなることを望んでもいるわぁ。
私はそのために、この子達を手中に収めたのよぉ」
「お父様が私達にそれを望むのは、このドミニアを守る十分な力を得て欲しいがためよ!
私達プレインズウォーカーがドミニアを守らねば、誰がドミニアを守るというの!?」
真紅は水銀燈に届けとばかりに、声を張り上げる。
水銀燈は真紅の言葉を受け取り、嘲笑。
そして、最後には怒声を返す。
「下らないのよ! ドミニアを守るだの何だのと!!
お父様の第一の望みは、私達が優れたプレインズウォーカーになること!
お父様がそれを望むなら、ドミニアの存続なんて二の次でいいのよぉ!!」
水銀燈は、右手を天にかざした。
辺りには黒雲が立ち込め、魔力のもたらす光で周囲を照らさねば、すでにまともな視界の確保すら困難。
その暗天の下、水銀燈は己の下僕達に指令を下す。
水銀燈の右手が勢い良く振り下ろされた。
「《ただれたゴブリン》! 《隠された恐怖》!! そして《復讐の亜神》達!!!
全員がかりで真紅を叩きのめしなさい!!!」
闇の世界の住人達が、一斉に咆哮を轟かせた。 - 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:04:26.52 ID:LhNa5nEM0
- 「!!!」
真紅はとっさに、自らの胸の前で両腕を交差させ、そこに自身の維持する結界の全てを集中させる。
四体の闇の怪物が、雪崩を打って真紅の元に駆け寄った。
《ただれたゴブリン》の持つ、腐敗した爪が真紅を引き裂く。
真紅は自らのまとう赤のドレスが、その下の皮膚ごと切り裂かれるのを感じた。
《ただれたゴブリン》の背後から、次いで《隠された恐怖》の巨大な体躯が躍りかかる。
《ただれたゴブリン》のそれなど比べるまでもない、巨爪が真紅を横薙ぎに払う。
真紅は辛うじて結界の再集中が間に合ったものの、鉄板に自身の体を思い切り叩きつけられるような衝撃に、
思わず肺の中に溜めた息を漏らした。
真紅はそのまま、弓から放たれた矢のように弾き飛ばされる。
空中でその態勢を立て直さんと、手か足どちらかで地面を着こうと、真紅は四肢を伸ばした。
真紅の背後で巨大な質量が炸裂したのは、それからほんの一瞬未来のこと。
背に着いた翼を打ち震わせ、いつの間にやら弾き飛ばされた真紅の背後に回り込んだ《復讐の亜神》が、
その拳で真紅の背を強打したのだ。 - 112 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:06:46.89 ID:LhNa5nEM0
- 「…………っ!!」
《復讐の亜神》の一撃で作り出されたクレーターの中心部にめり込んだ真紅は、見るも無残に汚れにまみれていた。
それだけではない。
《復讐の亜神》の繰り出した猛撃は、魂にすら及ぶ強烈な打撃を、彼女に残していた。
真紅にプレインズウォーカーとしての力がなければ、肉体を消滅させられるどころか、
その魂すらも破壊され、このシャドウムーアから存在そのものを抹消されていたであろう。
「……あら、まだ生きていたのかしらぁ?」
めり込んだ体を無理やり地面から引き剥がし、立ち上がろうとする真紅。
彼女が作り出したクレーターの縁に、《復讐の亜神》らは舞い降りた。
真紅が大地に叩きつけられたその時に、地上から飛び散った石の破片を受けたのか、
水銀燈の頬には赤い筋が一つ刻まれている。
《復讐の亜神》の肩に乗る水銀燈は、その頬の傷を鋭く親指でなぞる。
「まあどの道、次でおしまいねぇ」
水銀燈の親指が、その頬を通り過ぎたとき。
その下に、すでに切り傷は存在していなかった。
あるのはただ、白磁のような柔肌。
そして、嗜虐心と勝利の美酒に酔った、満面の笑み。 - 113 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:08:15.14 ID:LhNa5nEM0
- 「安心しなさぁい――魂だけは残るよう、手加減してあげるから」
真紅は、無言のまま立ち上がる。
それと同時に、彼女が全身にかぶった石の破片が、埃の尾を引いて砕け落ちる。
真紅は、右手を静かに虚空に伸ばす。
傷だらけになり泥だらけになった彼女の右手に、光が集まる。
次の瞬間に生み出されたのは、たった一枚の札。
真紅が先ほどの猛撃の拍子に取り落とした、彼女に残されていた最後の手札(ハンド)。
今にも再度取り落としてしまいそうなほどに、彼女の手の力は弱く、はかなく。
けれども真紅は、その最後の札を手放すことは、決してなかった。
Reiner Rubin's life: 16→1 - 115 :12ターン目終了時盤面:2008/08/03(日) 23:09:52.38 ID:LhNa5nEM0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:8
手札枚数:4
沼×5 沼×1
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │ │ │墓│
│ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘×3
隠された恐怖 復讐の亜神 復讐の亜神 ただれたゴブリン
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │Τ│ │Τ│ │Τ│
│ │ │ │ │ │ │ │
└─┘ └─┘ └─┘ └─┘
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │ │ │ │ │ │ │墓│
│ │ │ │ │ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘×7
山×2 山×2 突撃の地鳴り 吠えたける鉱山
手札枚数:1
現在のライフ:1
プレイヤー名:真紅 - 117 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:11:43.87 ID:LhNa5nEM0
- Turn 13
Active player : Reiner Rubin
真紅は、クレーターの爆心地で、ゆらりと立ち上がった。
《復讐の亜神》の手で地面に叩きつけられたお陰で、
付帯(エンチャント)された《突撃の地鳴り》が作り出したひび割れが、よく見える。
真紅は、右手の札を左手に送り、最後の力を振り絞って右手を宙に伸ばす。
いつの間にやら弾き飛ばされた真紅に寄り添うようにして、場所を移してくれた《吠えたける鉱山》が、
真紅に声援を送るかのように咆哮を放つ。
傷だらけになった手。
その背後で先ほどマナを引き出した二つのゲートが開く。
彼女自身の名に違わぬ緋色のドレスは、すでに泥に塗れあちこちがズタズタに引き裂かれている。
真紅は奥歯を食い縛り、残された力を振り絞り、大きく息を吸い込みながら、叫ぶ。
「――ドロー!!」
真紅の周りに追随する無数の札の中から、二枚の札が彼女の元に飛んでゆく。
二枚の札は、しかし己の持ち主の体を気遣うようにして、真紅の目前で静止。
真紅は虚空に浮かぶ二枚の札を掴み取り――。
意を決して、それを表にする。
「――――」 - 118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:13:46.95 ID:LhNa5nEM0
- 沈黙する真紅は、おもむろにその首を持ち上げた。
傷だらけとなったその体を、大きく振り上げた。
今にも崩れそうになる膝を叱咤して、その胸を強く堂々と張る。
真紅は、《復讐の亜神》の巨体の上から彼女を睥睨する水銀燈を見上げ、言う。
「水銀燈――この決闘(デュエル)、制したのは私よ」
水銀燈は真紅を見下ろしながら、その言葉を耳にする。
水銀燈は最初、真紅が何を言っているのか理解できなかった。
その意を、一拍の後に理解。
水銀燈は、笑い声を上げた。
くぐもった笑い声が、彼女の喉元からせり上げる。
それが、一気に炸裂を起こしたのは次の瞬間。
「言うに事欠いて、今更そんなお寒い強がりぃ?
それとも、私に対して虚勢(ブラフ)でも張ってみたつもりかしらぁ?
苦しいわねぇ。ついでに言うなら、醜いわねぇ」
水銀燈は、この薄暮の世界でもかすむことのない、赤い瞳孔を真紅に向けた。
そして真紅に告げる。
その手札(ハンド)からは、勝利の道へ至る筋書きは成り立たないという事実を。 - 120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/03(日) 23:16:40.11 ID:LhNa5nEM0
- 「あなたの今の手札(ハンド)の枚数じゃあ、私を倒しきるには手数が足りないわぁ。
例えその中身が《ショック》三枚、もしくは《山》三枚だったとしても、私を倒すには至らない。
その中身が《火葬》二枚に《ショック》一枚なら私を倒すことは出来るかもしれないけれど、
それにはマナが足りないわぁ。
そんなちっぽけな量の術に、ちっぽけな量のマナ……それで私をどう倒すというのぉ?」
水銀燈は、鈴の鳴るような美しい声で笑う。
真紅は、再びその顔を伏せた。
未だ成年に達しないがゆえのあどけなさを、生まれ持った気丈さが交じり合い、複雑な表情を作る。
だが少なくともその表情に、絶望感や諦観は、僅かほどもにじみ出てはいない。
真紅は、一枚の札を手札(ハンド)から抜き出す。
それを手の中で力強く弾き、秘められた力の解放を試みる。
「残念ね、水銀燈――。あなたの挙げた回答は、どれも不正解よ」
真紅の背後から、マナの大河が渦を巻く。
真紅の持つ四つのゲートの全てが全て、純粋無垢なる赤の魔力をその札に流し込む。
炎の緋色を吹き上げながら、真紅のかざした札は燃え上がる。
「今見せてあげるわ、その正解を!」
空中で烈々と燃えるその札を、火傷することなく掴み取った真紅は、頭上にそれを高々とかざす。
真紅の燃え尽きることない闘争心が、たちまちに強大な魔術を編み上げ、繰り出す。 - 141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:01:24.08 ID:y9057pVJ0
- 「何人も軛を打つあたわざる煉獄の洞穴――。
我今まさに求めん、そに秘められし終末の炎――!
塵灰に帰れ、形ある者達よ! 《ラースの灼熱洞》!!」
Furnace of Rath / ラースの灼熱洞 (1)(赤)(赤)(赤)
エンチャント
発生源がクリーチャーかプレイヤーにダメージを与える場合、代わりにそれはそのクリーチャーかプレイヤーにその2倍のダメージを与える。
「!!」
水銀燈の目が、その真紅のかざした札に、釘付けとなる。
真紅の頭上で燃え滾る濃密な熱の塊が、空気を焼き払いながら四散。
一拍の間を置いて、大地の隅々にまで白熱の流星が突き立つ。
大地が、激震。
《突撃の地鳴り》で引き裂かれた大地の間から、光が漏れる。
最初は、かすかな赤。
次に、鮮烈な赤。
そして最後には、激烈なまでの熱波を伴った、真の赤。
《突撃の地鳴り》が刻み付けたひび割れに添い、猛火の網は辺り一帯に広がる。
もしも大地が心臓を持つのならば、この光は紛うことなく、大地の心臓の鼓動。
うら淋しいこの荒野に生える草々は、その鼓動に耐え切れず、次々と茎や葉を黒変させながら、ねじれ、縮む。
次の瞬間には、漏れ出でる熱のあまり発火し、灰に帰する準備を整える。
この荒野を俯瞰できる位置にいる水銀燈は、その光景を文字通り目に「焼き」付ける形となる。
真紅を中心として、炎を吹き上げる裂け目があたりに蜘蛛の巣のように広がりゆく、その光景を。
今度は、水銀燈の奥歯が軋む音を上げる番となる。 - 142 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:03:25.10 ID:y9057pVJ0
- 「なるほど……そういえば《ラースの灼熱洞》っていう手があったわね……けれども!」
《復讐の亜神》の肩の上にすら届くほどの熱波を前に、水銀燈はその頬から汗の雫が流れ落ちるのを感じる。
水銀燈は、その不快な汗を拭いながら、真紅に腹の底からの声を叩き付けた。
「あなたはこれでもう魔術は使えない!
あなたのマナは《ラースの灼熱洞》を付帯(エンチャント)するために使い切られた!!
もうマナが枯渇しているあなたに、これ以上出来ることはないわぁ!!」
水銀燈は強くその手を振るいながら、真紅に宣告する。
真紅はその水銀燈の宣告を耳に入れ――。
それでも、その膝や腰が砕けることはなかった。
「水銀燈……ならば聞くわ。
私がさっき、《突撃の地鳴り》を付帯(エンチャント)したのは、何故かしら?」
真紅は、左手に残された全ての手札(ハンド)、すなわち二枚の札を宙に弾き上げた。
二枚の札は、くるりくるりと宙を回転しながら、真紅の掲げる右手の前で、止まる。
その二枚の札はすでにめくられ、表となっていた。
水銀燈は、雷に打たれたような衝撃をその身に感じた。
「馬鹿な……『山』の札が――二枚!?」
水銀燈がそれを確認した瞬間、二枚の札は深い赤の光へと帰り行く。
この二枚の札は、真紅が所持する土地からマナをもたらすゲートに、変わることはなかった。
それが生み出すものは、豊穣なマナではない。
けれども、それが代わってもたらすものは、今の真紅にはマナ以上に不可欠な力。 - 143 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:05:23.21 ID:y9057pVJ0
- 「これが、私の勝利の証となるのだわ! 轟け――大地の力よ!!」
真紅の手元から、二枚の札は飛び去った。
灼熱し、すでに荒原というよりは火山地帯とでも言った方が適切な、灼熱する地面に突き立つ。
札が突き刺さった箇所を起点に、二つの爆炎の奔流が生まれる。
触れたもの全てを加熱し、焼却し、熔解し、蒸発させる溶岩の津波。
人間の身長の数十倍もの波高を持つ高熱の波涛は、おそらく呑まれれば《復讐の亜神》すらひとたまりもあるまい。
だが、真紅の操るこの爆炎の向かう先は、《復讐の亜神》のもとではありえない。
「《突撃の地鳴り》で生み出された地震波は、
《ラースの灼熱洞》の力で溶岩の津波と化し、その破壊力を倍化させる――。
水銀燈! これで終わりよ!!」
真紅は二つの溶岩波に、己が魔力をもて命じる。
水銀燈の身を焼き払えと。
この決闘(デュエル)の勝利を、炎で飾れと。
真紅の左右に迸る溶岩の津波は、一気に驀進を始める。
《復讐の亜神》の肩に佇む、水銀燈の元へと。
「これくらいの……ことでぇっ!!」 - 144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:08:06.02 ID:y9057pVJ0
- 水銀燈は、とっさに背の翼で空を飛び、自らを狙い襲い掛かる炎熱の波動から逃れようと試みる。
だが、それも空しい試みに過ぎない。
真紅はその右手を、おもむろにくいと上空に向けた。
まるで馬が跳ね上がり、地面の障害物を避けるかの様にして、マグマの塊も空へと跳ね上がる。
槍のように鋭く、そして正確無比に吹き上がったマグマは、寒気がするほどの熱を撒き散らし、その顎を開く。
その顎は、過つことなく水銀燈の体を狙い済ましていた。
「真空うううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」
その顎が空中で噛み合わされた時。
水銀燈の体は消え去っていた。
真紅の解き放った、溶岩の奔流の中へと。
二つの溶岩の奔流が、水銀燈の直下の大地で交差。
岩盤が爆砕され、天すらも焼き焦がさんばかりの勢いで、燃え盛る岩漿が吹き上がる。
水銀燈の体を焼き尽くすだけでは済まさない――その灰の一粒すらこの世界に残してはおかない。
それだけの猛烈な破壊の意志を伴って、大地はマグマを吹き上げた。
水銀燈のシルエットが、次から次へと天に昇る赤い流れの中に没したのは、それからわずか数瞬後の未来のことだった。
水銀燈のしもべたちは、その体を維持することはかなわず、各々のあるべき場所へと帰りゆく。
その光景は、まさに地獄だった。
この世に存在する炎全てを集めて作り出したかのごとき、地獄だった。
Mercury Lampe's life: 8→0
Winner:Reiner Rubin - 145 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:09:52.25 ID:9ybKMxpg0
- 誤字に萌えた
- 146 :デュエル決着時盤面:2008/08/04(月) 00:10:33.31 ID:y9057pVJ0
- プレイヤー名:水銀燈
現在のライフ:0
手札枚数:4
沼×5 沼×1
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │ │ │墓│
│ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘×3
隠された恐怖 復讐の亜神 復讐の亜神 ただれたゴブリン
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │Τ│ │Τ│ │Τ│
│ │ │ │ │ │ │ │
└─┘ └─┘ └─┘ └─┘
┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐ ┌─┐
│Τ│ │ │ │ │ │ │ │墓│
│ │ │ │ │ │ │ │ │地│
└─┘ └─┘ └─┘ └─┘ └─┘×9
山×4 突撃の地鳴り 吠えたける鉱山 ラースの灼熱洞
手札枚数:0
現在のライフ:1
プレイヤー名:真紅 - 147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:13:11.33 ID:y9057pVJ0
- Epilogue
真紅は、この光景は自ら作り出したものだと分かってはいても、未だにそれを信じられずにいた。
決闘(デュエル)の前には、枯れかけた草がたなびく淋しい荒原だった一面は、すでに原型を留めてはいない。
辺り一面は地面が勢いよく掘り返され、その下の養分に乏しそうな土が見事に露出している。
《突撃の地鳴り》で砕け割れた岩盤の下からは、《ラースの灼熱洞》で生み出された熱気が未だに漏れている。
真紅が《復讐の亜神》に叩きつけられ、作る羽目になった巨大なクレーターも、実にひどく地盤を痛めつけた。
そして何より。
真紅の目前に出来上がった、猛烈な熱気を蓄えた巨岩は、最も生々しい傷跡としてこの荒原に残された。
それはまさに、この場にいきなり生まれた小規模な火山と表現するにふさわしい。
上空から見れば十字型に刻まれたであろう山脈の、そのあちこちから赤い流れが染み出し、
そしてその中心の交点からは、未だかなりの量の溶岩が吹き出ている。
言うまでもなく、真紅が水銀燈に放った止めの一撃……厳密に言えば二撃だが……で生み出した、
あのマグマの間欠泉の傷跡である。
赤の魔術を使いこなすプレインズウォーカーの宿命とは言え、
真紅は辺りのものが岩も草も関係なく焼け爛れる異臭に、鼻を押さえた。
(これでは、決闘(デュエル)の後始末も大変なのだわ……)
内心愚痴をこぼす真紅は、しかしそれ以上に自らの持つ力の意味を、再び考えることとなる。
これが、プレインズウォーカーの力。
決闘(デュエル)という形式を取ったがゆえに、制御されてはいたものの、
これが神のそれに次ぐとすら言われる、プレインズウォーカーの力なのだ。
真紅も水銀燈も、未だ若い。
ゆえにプレインズウォーカーの中では、そこまで高い実力を持たないとは言え、
それでも並みの魔術師ではおいそれと行えないほどの、恐るべき大破壊をこうして行った。
真紅はこの大地の傷跡を修復するため、魔術を再度編む。
水銀燈のしもべ達に刻み付けられた傷が痛まないことはないが、
真紅はそれでもこの大破壊の修復を優先することを決めていた。 - 149 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:15:02.27 ID:y9057pVJ0
- 真紅はその場で呪を紡ぎ、印を刻む。
繰り出した魔術をそのまま、自らが生み出した小さな火山にかぶせてゆく。
大地がその形を崩れさせ、徐々に隆起した火山は縮こまってゆく。
その様子を見ながら、真紅は一つ嘆息。
(……これでは雛苺か翠星石あたりに頼んで、治癒の魔術を受ける必要がありそうね)
普段より効きの悪い、自身の魔術を見ながら判断する真紅。
魔法学府の同門の仲間の名を心のうちで呼びながら、空を見上げた。
(金糸雀……翠星石……蒼星石……雛苺……。
みんな、このシャドウムーアの調査を進めてくれているかしら?)
真紅達の生まれた次元であるドミナリア――その某所に設立された、プレインズウォーカーの魔法学府。
真紅が名を呼んだ者達は、その魔法学府の同門の仲間である。
もっとも、魔法学府の同門と言えば大層ながら、
その実体はローゼンの屋敷での住み込み奉公している仲間、と表現した方が正確なのだが。
無論、その同門の仲間の中には、先ほど撃破した水銀燈も含まれる。
そしてもう二人の「問題児」や、他数名の特待生も。 - 151 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:16:39.96 ID:y9057pVJ0
- ドミナリアの仲間達に思いを馳せる真紅は、その場で地面に仰向けに倒れる。
シャドウムーアの明ける事ない薄暮の帳が、変わらずに広がっていた。
背中から未だににじみ出てくる、《ラースの灼熱洞》の余熱を感じつつ、真紅は思いを巡らせる。
(水銀燈は私の放った魔術で焼き尽くされる直前に、この次元のどこかに転移したようね。
この次元のどこか、までは分からないけれども)
少なくとも、水銀燈はあれしきのことでは倒れることはないだろう、と真紅は推測する――もとい、断じる。
水銀燈とてプレインズウォーカー……特に、死をもてあそぶ事にかけては一流の、黒の魔術の使い手なのだ。
そうそう簡単に死んでくれるほど、殊勝な手合いでもあるまい。
真紅は両手の下の、みずぼらしい枯れかけの草をその手に掴み、額にかかった金髪を振り払う。
このシャドウムーアの謎は、未だに解けない。
何故、かつて「ローウィン」と呼ばれていたこの世界が、「シャドウムーア」に変化したのか。
その大変化をもたらした「大オーロラ」の意味とは何なのか。
(まったく、水銀燈の非協力的な態度も、どうにかして欲しいものね)
そう思考する真紅の目には、シャドウムーアの月が映る。
ドミナリアの月とは違い、不気味な緑色を帯びた不可思議な月が。
天にかかる月は、シャドウムーアの謎に四苦八苦する真紅をあざ笑うように、静かに輝いていた。
真紅は静かにその瞳を閉じ、しばしの休息とする。
この明けることなき夜の世界に、静かに佇む彼女の姿は、年相応のあどけなさに満ちていた。
Fin - 152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:17:07.68 ID:qhbDHWg+0
- 面白かったです
ありがとう - 153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:17:51.80 ID:y9057pVJ0
- 以上で、本編は終了です。お粗末さまでした。
質問意見その他もろもろありましたら、どうぞ。 - 157 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:28:18.54 ID:xWsTOo710
- 楽しませてもらったよ
乙 - 158 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:30:54.32 ID:UoyNpSCr0
- 1乙
次は青対青の磨り減るような戦いが見たいです。 - 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:32:51.43 ID:9ybKMxpg0
- 青対青・・・
片方は蒼い子としてもう片方は、ドール1の頭脳派金糸雀か?ww
・・・・みたいなw - 160 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 00:35:47.83 ID:Pu87Xgz/0
- カナが活躍するところは是非とも見たい
- 161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/08/04(月) 01:10:09.69 ID:7YjL9jVk0
- まあ少なくとも、腕のひらひらとか、呪文のぶつくさとかは印象的だったのだわ。
――金糸雀
もしもローゼンメイデンがMTGの世界にいたらMagic:the Gathering / EVENTIDE
Klein Beere VS Rozenkristall
ttp://esuyuki.blog61.fc2.com/blog-entry-842.htmlコンビニ常連客の奇妙なあだ名苺ママの香水はエスカーダの「セクシーグラフィティ」かな・・
ワイルドストロベリーの香り。ジョジョの奇妙な小学校シルバーチャリクソワロタww涼宮パルシェンの憂鬱くそわろたw涼宮パルシェンの憂鬱開いた瞬間即死だった 涼宮パルシェンの憂鬱※42343
しずちゃんのことかwww有吉がポケモンにあだ名をつけたらミカルゲ→情緒不安定依存症さん@_@